2015/03/01

Simul and Lecture Event in Kurume


事前にお伝えしていた通り、九州は福岡県へとやってきました。目的は明日、福岡市で開催される全日本選手権の予選、福岡県選手権に参加することです。加えて、福岡チェスクラブからの依頼を受け、福岡予選前日の今日、久留米市で同時対局とレクチャーを行います。この日の福岡市は雨予報でしたが、午後の早い時間にはこの通り青空が広がり、暖かな陽気でした。


昼前に福岡空港に着いた私は、まずは福岡市の中心街、天神でお昼ご飯。水鏡天満宮の隣にある細い通りにあり、昼には行列ができる人気店、真(まこと) は、昼のメニューがサバの一枚焼き定食だけという、一風変わったお店です。メニューが一種類なので、通されたお客さんにはすぐに焼きあがったサバが運ばれてきます。玄界灘の海産物は、美食の街、福岡の名物の一つです。大きなサバは脂の乗りも良く、食べ応えのある一品です。すでに100万枚のサバを焼き上げたという店の自慢も、理解できる満足な昼食でした。


昼食後は天神から久留米へ。地下鉄天神駅から西鉄天神駅まで移動し、そこで特急電車を捕まえす。久留米までは特急で30分ほどで、思ったよりも短い移動でした。


会場となった久留米市の高牟礼会館は、西鉄久留米駅から車で数分、大きな庭もあり、非常に趣のある施設でした。福岡チェスクラブの活動場所として、よく利用されているそうで、10年以上前に渡辺暁さんが福岡を訪れた際も、レクチャーの会場はここだったようです。


午後3時から、2時間の予定で同時対局がスタートします。参加者はUR から2000台までの8人で、私が全て白を持ち、1手ずつ指して全員の前を周ります。1. e4 と1. d4 を4局ずつ織り交ぜた今回の同時対局は、1つだけ危ないゲームもありましたが、終わってみれば私の8戦全勝でした。


同時対局後には、余った時間で簡単なレクチャーを行いました。この同時対局の中かから3局をピックアップし、ナイトとビショップの使い方、ピースの展開、ダブルアタックのような基礎タクティクス、相手キングへの攻撃の仕掛け方等について話をしました。参加してくださった皆さん、そして今回のイベントを企画してくださった山口さん、ありがとうございました!


レクチャー後は天神に戻り、お楽しみの晩御飯です。サバともう一つの昼食候補だった、同じ通りにある、とり天のお店に足を運んでみました。鶏肉専門店のこちらでは、名物のとり天以外に、貴重な鳥刺しが味わえます。ズリ、ハツ、レバー、ササミ、タタキの刺身盛り合わせはどれも絶品でしたが、全く臭みの無い新鮮なレバーは、私がこれまで食べた鶏レバーの中で、最も美味しかったです。


もちろん、名物のとり天もいただきます。鶏肉を、から揚げではなくてんぷらにしたこの料理は、福岡ではなく佐賀の名物料理だそうですが、美味しければ関係ありません!(笑) ポン酢か塩でいただくとり天も、文句なしの味でした。昼には、このとり天が6個付く定食が750円だそうなので、滞在中にまた足を運んでみたいですね。

今日の記事はチェスより食レポになってしまいましたが、明日はきちんと試合をこなして、その報告をする予定です! それでは、福岡県選手権に参加予定の皆さん、明日はよろしくお願い致します。

2015/02/27

The Highest Level Training in Japan on 27th February 2015 Vol.1


こちらのブログでは恒例の、羽生さんとのトレーニングを今月も行ってきました。今日も2試合のラピッドと、もちよりでのポジション研究です。ラピッドは実際には私の白番からのスタートでしたが、棋譜の長さの関係で、先に午後に行われた黒番のゲームからお届けします。

Habu, Y (FM, JPN, 2398) - Kojima, S (IM, JPN, 2403)
Training (2)

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 g6 6. Be3 Bg7 7. f3 Nc6 8. Qd2 Bd7 9. Bc4 O-O 10. O-O-O Ne5 11. Bb3 Qa5!?



Sicilian Dragon Qa5 Variation は、中高時代に愛用した私の青春そのものです(笑) 11... Rc8 のラインに比べれば、人気も勝率も落ちますが、好きなら何を指しても大丈夫です!

12. Kb1 Rfc8 13. h4 b5 14. h5!?


この手は初めて見ました。私が2回目の優勝を果たした2006年の全日本選手権では、佐野さんとのゲームで以下のように進みました。14. Ncxb5 Qxd2 15. Rxd2 Rab8 16. a4 a6 17. Na3 Be8! (狙いは、Nf6-Nd7-Nc5 or Nb6)

14... Nxh5 15. Nd5!



この手は私が最も警戒していた手で、一番嫌だと思う手をしっかり指してくるあたり、さすがだと感心します。15. g4 Nf6 16. Bh6? Bxh6! 17. Qxh6 Rxc3! 18. bxc3 Qxc3-/+ と進む展開は、Dragon プレーヤーの思う壺でしょう。

15... Qxd2 16. Rxd2 Kf8 17. g4 e6?!


この手は不自然だと思いつつも、4年前のトレーニングでの研究で、h7 を単純に取らせてポーンを返す変化は、あまり良くないと結論付けていました。しかし、ここでは少し状況が違います。17... Nf6 18. Nxf6 (18. Bg5! が検討では出なかった1手で、ベターかもしれません。) 18... Bxf6 19. Rxh7 Nc4! 20. Bxc4 bxc4! (これは私があまり考えていなかった形で、黒はbファイルからのカウンタープレーでバランスを取ります。) 21. c3 Rab8 22. Rdh2 Rb7=


Analysis Diagram

このように進んでみると、白のアタックチャンスはさほど大きくなく、むしろ黒もb2 をターゲットにすることで、十分に戦えているように見えます。本譜のように、d6 を弱めていないことも、黒が満足に戦えるポイントです。

18. gxh5 exd5 19. Bxd5 Rab8



19... Nc4 20. Bxc4 bxc4 21. Ne2!+/- こうなれば、白は単純にd6 を狙って優勢でしょう。これが、e7-e6 の大きな欠点です。

20. hxg6 hxg6 21. Bg5 Rc5?


残り時間が少なく、粘れるディフェンスの方針を見失いました。21... Nc4 22. Rdd1 Nb6 23. Ne2+/= のほうが良かったでしょう。

22. b3 Rc3 23. f4 Nc6 24. Nxc6 Bxc6 25. f5!



d6 だけでなく、黒キングへのダイレクトアタックもあり、これで完全に黒は厳しくなりました。

25... Bxd5 26. Rxd5 gxf5 27. exf5 Be5 28. Rxe5 1-0


普段のCaro-Kann とは気分を変えて臨んだ一戦でしたが、黒番では負けてしまいました。h7 を返すほうがベターという判断ができなかったのは、まだまだ力が足りていない証拠ですね。午前に指した私が白のゲームは、また後日お届けします。こちらも普段のSemi-Slav とは、全く違うオープニングとゲーム展開ですよ!

Vol.2 に続く

2015/02/26

Saturday Lecture on March 14th 2015


試合前、カメラマンに応えるCarlsen, Photo by Hasegawa

【日時】 2015年3月14日(土) 13:00~15:00
【会場】 チェスセンター(最寄駅:池上駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答
【テーマ】 Play Like Magnus Carlsen
【テーマ詳細】

2004年頃から名前を聞くようになった北欧の天才少年は、瞬く間に世界のトップに躍り出て、多くの功績を残しました。Kasparov の世界記録を塗り替え、現在もレイティング世界ランキング1位、現世界チャンピオンのMagnus Carlsen が、今月のレクチャーテーマです。数えきれないオープニングを使いこなし、他のプレーヤーが思いつかない独創的なプランを立て、そして勝てないと思われるエンドゲームを勝ち切る、そんなCarlsen のプレーを、世界チャンピオンシリーズの締めくくりとして追っていきましょう。

【参加費】 一律1200円
【参加資格】なし
【対象】 レイティング2000未満

昨年から長く続いた世界チャンピオンシリーズも、今回で最後となります。2月のAnand に引き続き、多くの方のご参加をお待ちしております。それでは、よろしくお願い致します。

2015/02/25

Simultaneous Event in Fukuoka


昨年行われた、GM Pablo Lafuente の同時対局

来月、28日に松戸チェスクラブ主催で行われる同時対局イベントについては、すでに告知の記事を書きましたが、それに先駆けてもう一つ、同時対局イベントを行います。こちらは福岡チェスクラブの主催で、松戸のちょうど一か月前、3日後の2月28日の午後3時頃から、福岡県久留米市の高牟礼会館にて開催されます。翌日の3月1日が、全日本予選の福岡県選手権ですので、その前日に福岡チェスクラブの皆さんと交流する良い機会になりそうですね。

すでに福岡のメンバーには、私が福岡県選手権に参加すること、そして前日に同時対局イベントを行うことは伝えられているでしょう。そのため、この記事はイベント参加者向けというよりも、読者の皆さんへのお知らせのつもりで書いています。土曜日の夜には、同時対局の報告記事を書けると思いますので、そちらもお楽しみに。もしも九州にお住まいの方で、同時対局のことを初めて知り、参加を希望される方は、福岡チェスクラブか、私までご連絡下さい。私にとって初めてとなる、九州でのチェスを楽しみにしています!

2015/02/24

Endgame Training from Practical Games


Malakhov, V - Hondozi, M / 2007
White to move

私のChessbase には、Endgame Training という自作のデータベースがあります。これには現在、数十のゲームが保存されていますが、それらは全て、私が自分で並べていて面白いと思ったエンドゲームです。それを私は時折見返しながら、自分のトレーニングやレクチャーに使っているのです。先日、都内で集まったカペルに向かえたトレーニングでは、上記のポジションを集まったメンバーに見せました。

35. Kf5!


e5 のポーンが落ちそうな白は、ルークではなくポーンで取らせることで、黒のポーンのさらにバラバラにし、有利なルークエンディングへと持ち込みます。

35... fxe5 36. Ke4!



e5 に黒のパスポーンを作ることを許しはしますが、一度上がったキングを戻すことで、白はパスポーンをブロックします。これにより白に特に危険な点はなく、2つのポーンの島を持つ白と、4つのポーンがすべて分かれている黒で、優劣がはっきりとします。

36... a5 37. Rc2 a4 38. bxa4!


白は自分のパスポーンをaファイルに作り、分かりやすいプランを探します。以前の記事でも書きましたが、余計なカウンタープレーを許さないことが白にとっては大切です。

38... Ra8 39. Kxe5 Rxa4 40. Kd6 Ra6 41. Kc7!



ここから白キングと黒ポーンの鬼ごっこが始まります。黒のカウンターの最大の要因となりうるcポーンを消してしまえば、白はaポーンを進めることに集中できます。ポーンストラクチャーの優劣だけでなく、キングのアクティビティーも、このエンドゲームで白が勝ちを掴む大きなポイントでしょう。

41... c5 42. Kb7 Ra3 43. Kb6 Ra8 44. Rf2!


この手はなるほど! と唸る1手です。黒キングはfファイルでカットオフしておきながら、cポーンをキングで取りにいきます。44. Kxc5?? Rc8+-+ は、もちろんダメですね。

43... c4 45. Kb5 c3 46. Kb4 Rb8+ 47. Kxc3



これで後は、ルークで支えたaポーンを進めれば、白は勝てそうです。

47... Ra8 48. Kb2 Kg7 49. a3 Kg6 50. Kb3 Rb8+ 51. Kc4 Ra8 52. Ra2


ルークはパスポーンを後ろからサポートするもの。これでゲームオーバーです。

52... Kf5 53. a4 Ke6 54. a5 Kd6 55. a6 Kc6 56. a7 1-0



最後は52... Kb7 53. Kb5! Rg8 54. a8=Q+! から、ルークを交換して勝ちのポーンエンディングに持ち込むのが、白としては最も確実な勝利でしょう。特に難しいテクニックは登場しませんでしたが、こうしたエンドゲームでの丁寧なプレーは、よくチェックしておくべきだと思います。

2015/02/21

White's Development Advantage


先月、ロンドンで指したラピッドの大会のゲームは、最終戦のFrench Tarrasch の棋譜だけを公開していましたが、もう1つ、白の優位が分かりやすい、面白いゲームがありました。帰国後に何名かにはすでに見せましたが、こちらでも公開しておきます。

Kojima, S (FM, JPN, 2384) - Joslin, T (ENG, 1879)
CCF NEW YEAR RAPID PLAY CONGRESSES (2)

1. e4 d5 2. exd5 Qxd5 3. Nc3 Qd6



Scandinavian 3... Qd6 Variation は、私も黒で研究したことのあるソリッドなオープニングです。黒はピースの展開の遅れという典型的な問題を抱えますが、e4 とd5 のポーンを交換する堅いCaro-Kann ストラクチャーで戦います。白が展開の早さを生かすようなプレーができなければ、黒には十分にイコアライズのチャンスがあるでしょう。

4. d4 Nf6 5. Nf3 Bg4 6. h3 Bxf3!?


黒のc6, e6 のポーンストラクチャーにおいては、ダブルビショップの優位はやや生きにくいとも言われます。(Caro-Kann Two Knights Variation は良い例でしょう。) それでも、黒はポジションをオープンにしないよう、注意が必要です。

7. Qxf3 c6 8. Be3 g6?!



ここは8... e6 と指して、典型的なポーンストラクチャにするほうがベターでした。理由はすぐにわかります。

9. O-O-O Nbd7 10. Bf4!


白はクイーンが素早くf3 に上がったことを生かし、ビショップをアクティブなダイアゴナルに切り替えます。この手はクイーンを追い払ってh2-b8 のラインを抑えるだけでなく、将来的にアタックの筋となる、eファイルを開くことも目的としています。

10... Qb4 11. a3 Qa5 12. d5!



白のアドバンテージとして典型的な、ピースの展開の早さを生かすのであれば、なるべくポーンを交換してポジションをオープンにすべきです! これにより、白はdファイルを開きつつ、c6 のポーンをターゲットとします。

12... Rc8 13. dxc6 bxc6 14. Bc4!


これで白マスのビショップも攻撃的な位置に展開できました。黒はe7-e6 を突かなかったことにより、白にd4-d5 からのブレイクを許してしまったうえ、a2-f7 のダイアゴナルから、キングにプレッシャーをかけられてしまっています。

14... Bg7 15. Rhe1!+/-



そしてもう一つ、e7 に残したポーンは、それ自体がターゲットとなります。2つのルークとダブルビショップのラインをすべて開き、黒キングへの攻撃態勢を素早く整えることで、すでに白は勝勢となっています。この後、黒はe7 を諦めてキャスリングをしますが、白は次にf7 をターゲットにできるので、即ゲームオーバーでしょう。

15... O-O 16. Rxe7 Nb6 17. Ba2 Nh5 18. Bd6 Qg5+ 19. Kb1 Rcd8 20. Rxf7 Rxf7 21. Qxf7+ Kh8 22. Be7 1-0


シンプルなゲームではありますが、白の優位の生かし方が分かりやすい好ゲームだったと思います。1. e4 プレーヤーには、是非並べていただきたい1局ですね。

2015/02/20

Preventing Counterplay

久々のブログ更新です。だいぶサボっていて、申し訳ないです。さて、最近のゲームを見ていて面白いと思ったチェスのテーマに、「反撃の防止」というものがあります。このテーマを考える際、私自身のゲームで振り返りたいのは、2年前のハンガリーでの一戦です。


Kojima, S (FM, JPN, 2357) - Bird, A (AUS, 2203)
CAISSA 2013 September IM (3)
Position After 41... Rxe7

42. Ra6?!


クイーンを交換し、持ち時間も増えて一安心した私に、不正確な1手が飛び出しました。このエンドゲームでは、白は確かにa5、もしくはc6 のポーンを狙ってチャンスを作るべきですが、まずは黒の反撃を防いでおくべきです! 実際の試合では、次の手で42... g5!? とポーンを突かれ、キングの前進とルークによる反撃を許してしまいました。それでも白は優勢でしたが、私の不正確なプレーが続き、ゲームはドローになってしまいます。試合後に対戦相手のBird が指摘したのは、最初に42. f4! と指して、黒のg6-g5 からの反撃を防いでおくというアイディアです。

42. f4! Ra7 43. Rb7 Rca8 44. Ke2 Kg7 45. Kd3 Kf8 46. Rxa7 Rxa7 47. Rb6 Rc7 48. Kc3+-


Analysis Diagram

こうして進めてみると、ここまで白は準備を進めてから、a5 を取っても十分なことが分かります。a5、c6 のポーンはどこにも逃げられないため、白はゆっくりとキングのポジションを改善する余裕があるわけですね。つい忘れがちですが、チェスにおいて大切なことは、優勢のポジションから確実に勝つことで、1手でも早く勝つことではないのです。そして最近のゲームでも、この反撃の防止のアイディアが登場したゲームがありました。


Anand, V (GM, IND, 2797) - Nakamura, H (GM, USA, 2776)
4th Zurich CC Classical (4)
Position After 32... g5

どことなく、私のポジションと似ていますね(笑) 白は完全にクイーンサイドを制圧していて、ゆっくりとポーンを狙えば、勝つのは時間の問題です。しかし、ここで黒は反撃として、g6-g5 と仕掛けます。これに対して、Anand はシンプルかつ、有効な1手を返し、黒の反撃を抑え込みます。

33. Qe2!


黒はh5 を取らせて、さらにf7 をアタックされてはたまりません。そのため、h5 を守るために本譜の手をチョイスします。代わりに33. hxg5?! Qxg5! (33... Bxg5 34. f4!) 34. Rxf7+ Kxf7 35. Qxc8 Qf5 ならば、黒はパペチュアルチェックを絡めた反撃を作ることができます。 以下はChess News で解説を書いた、GM Ramirez の言葉です。35. Qxc8 Qf5 is probably winning, but why allow so much counterplay? やはり優勢の際は、相手の反撃を封じることが、安全にゲームを進めるための、有効なアイディアとなるわけですね!

33... g4 34. Qa6


こうして黒のキングサイドの反撃を消しておき、再びクイーンサイドでの攻撃に戻れば、白の勝勢です。

34... Qg8 35. Nb6 Rf8 36. Nd7 Qh7 37. Nxf8 Qe4+ 38. Kh2 Kxf8 39. Rb8+ Kg7 40. Qc8 Kg6 41. Qh8 1-0



皆さんも、こうしてGM のゲームからアイディアを学んだ際は、それを実践できているか、いないか、自分のゲームをよく振り返ってみると良いでしょう。このゲーム、あと1週間早ければ、レクチャーでご紹介したかったですね。

2015/02/14

Saturday Lecture in February 2015 Lecture Report


Photo by Kawanaka

今日のレクチャーは、過去最多の22名の参加者でした。20名を超えると席も足りず、チェスセンターでは手狭に感じましたね。参加者の皆さんには感謝しつつも、やや見えづらい位置になってしまった方には、申し訳なく思います。うまく工夫しますので、来月以降も盛況だと嬉しいですね。

今月はアジア初のチャンピオン、インドの Anand のゲームでした。白番1つ、黒番2つのゲームを並べましたが、私がチェックした Anand のゲームの中には、他にも沢山ご紹介したい、勉強になるポジショナルプレーがいくつもありました。その一部を、ここで紹介しておきましょう。


Radjabov, T - Anand, V / FIDE GP 2002
Black to move

18...b5!


ダブルビショップを持つ白は、それをいかすためにc3-c4 と突きたいところですが、黒はここでbポーンを伸ばすことで、それを防ぎます。19. Bxb5 Qb8! と指せるのがさらなるポイントで、黒は両ビショップとh2 をターゲットにすることで、ポーンを取られないようにします。


Carlsen, M - Anand, V / Morelia/Linares 24th 2007
Black to move

ここは次にBxf6-Nxh7 のコンビネーションにどう対応するか迷うところですが...

17... Kh8!


この手は少し思いつきにくいかもしれません。私は最初、Rf8-Rd8 でなにがいけないのか分かりませんでしたが、17... Rfd8?! 18. Bxf6 gxf6 19. Bxh7+! Kg7 20. Be4! という手筋があり、白はポーンを掠め取ることができます。そこでh7 に先にキングを避けておくことで、h7 をビショップで取られた際に、チェックがかからないようにしておきます。これで黒が優勢になるわけではないですが、18. Bxf6 gxf6 19. Ne4 Bxe4! 20. Bxe4 Ra7= でも問題ないならば、黒は満足に指し続けることができるでしょう。

今日は派手なタクティクスのゲームもありましたが、こうした気づきにくく、細かいプレーができることも、Anand のチェスの魅力といえるでしょう。皆さんも、Anand のお気に入りのゲームがあれば、是非私にも教えてほしいと思います。

来月のレクチャースケジュールは未定ですが、必ず時間を作るつもりですので、また来月もよろしくお願い致します。世界チャンピオンシリーズも最後で、次はいよいよ Carlsen ですかね。


そして今日はバレンタインデーでしたね。チェス関係者からは、チェスピース型のチョコを貰ったという報告が多くありましたが、こちらも人気の惑星チョコを、チームメイトの長谷川さんから貰いました。ありがとうございます!

2015/02/13

The Highest Level Training in Japan on 29th January 2015 Vol.3


Habu, Y (FM, JPN, 2415) - Kojima, S (FM, JPN, 2397)
White to move

そろそろ、1月のこのゲームも後半の解説を始めましょう。2ピースルークながら、白にはfファイルに刺さりそうなパスポーンがあり、正確な形勢判断は、非常に難しいポジションです。ここからはお互い、悪手が続きます。

34. f7+?


もっとも自然に見えるこのチェックは、実は白が勝ちを逃がす悪手となります。34. Ng5!! (チェックの前にこの手を入れておくのが正解で、黒はg6 のポーンを取ることができません。) 34... Qxf6 (34... Qxe3 35. f7+ Kf8 (35... Kh8 36. Rf1! Rf8 37. Qxe3 Rxe3 38. Nh7+-) 36. Nh7+ Ke7 37. Qe1!+- この変化は本譜と同じなので、後ほど解説します。) 35. Nf7 Qxg6 (35... R8d7 36. Bd4!+- このバックランクメイトも見えづらい!) 36. Nxd8 Rxd8 37. Rg1+- このマテリアルであれば、白は問題なく勝てるでしょう。

34... Kf8 35. Ng5! Qxe3??



ここは私も時間がなく、ビショップを取って良いのか悩みました。結論としては、取れるのではないかと判断したのですが、これが大失敗。大人しく、g6 のポーンを取っておけばキングも安全になり、黒はやや優勢だったでしょう。35... Qxg6 36. Re1 R3d7=/+

36. Nh7+ Ke7 37. Qxe3+?


本譜の代わりに、37. Qe1! が正解です。クイーン交換を避けてバックランクは大丈夫なのかと疑問に思えますが、ぎりぎりで何とかなっています! e1 に下がった白のクイーンは取られる心配がなく、次にQe1-Qh4 の決定的なスレットを作っています。

37... Rxe3 38. a3



クイーンを交換して一息つきたいところですが、時間の無い状況では、まだ形勢がどうなっているのか判断できません。検討戦では、私が羽生さんに38. Rf1 を指摘し、これで黒に受けがないかと思われましたが38... Rf3! 39. Re1+ Kd7 40. Rd1+ Kc7 41. Re1 Re3 42. Rf1 Rf3 43. Re1= これでドローでした。白はf7 にパスポーンを刺し、プロモーションの準備も整っていますが、バックランクが弱いためにすぐに決定的なスレットを作れません。そこで本譜では、a2 にマスを作って、今度こそRh1-Rf1 を狙いにします。

38... Re6! 39. Rf1! Rf8 40. Rd1 Rxg6?


次の白のスレットが分からず、ポーンを取れると勘違いしてしまいました。ここは単純に私の力不足で、言い訳ができません。落ち着いて考えれば、正しくドローにする手順も見えるはずです。40... Rc8! 41. Rf1 Rf8 42. Rd1 Rc8= こうすれば、白にはポジションを改善する方法がありません。当然、g6 を落とすわけないもいかないので、ドローで満足するしかないでしょう。

41. Rd7+!



Oops! この美しい手によって、黒の2つのルークは盤上から姿を消します。

41... Kxd7 42. Nxf8+ Ke7 43. Nxg6+ Kxf7 44. Ne5+ Ke6 45. Nxc6 Kd5


ここまではお互いにオンリームーヴでしょう。ピースダウンの黒は、クイーンサイドでプロモーションを防ぎつつ、キングサイドの2コネクテッドパスポーンを押し進めるしか、負けを防ぐ方法はありません。

46. Nxa7!


検討戦で、46. Nd4 から、すぐにg7 のポーンを取ってはどうかという意見も出ました。早めに黒のパスポーンを消しておくのは安全そうですが、ナイトがキングサイドに行ってしまえば、黒もポーン交換からのディフェンスが容易になるでしょう。46... Kxc5 47. Ne6+ Kc4 48. Nxg7 Kb3 49. Kb1 b4 50. axb4 Kxb4= こうしてポーンを1つ交換してしまえば、白に勝つ方法はありません。

46... Kxc5 47. Kb1?



私も試合中、おやっ?と思いましたし、羽生さんも後で振り返って、なぜこの手を自分で指したのか、不思議そうでした。ここは難しいですが、唯一勝ちになる筋が以下の手順です。47. b4+! Kc4 48. Kb2 h5 49. Nc6 g5 50. Ne5+ Kd5 51. Nf3 g4 52. Nh4 Kc4 53. Kc2+-


Analysis Diagram

なるほど... 2コネクテッドパスポーンは、意外とナイトで止められるんですね。これはとても勉強になりました。しかし、試合中にこの形を正確にイメージするのは、簡単ではないでしょう。

47... h5 48. b4+!


今度は1手遅く、黒にポーンを進める余裕を与えてしまいましたが、それでもこの手がベストです。

48... Kc4 49. Kc2?



今度はキングを寄るのでは遅すぎます! ここは白は勝ちを諦め、ドローを目指すしかありません。49. Nc8! Kb3! (黒としても、白のポーンをすべて消して、シンプルにドローを目指すのが良いでしょう。) 50. Nd6 Kxa3 51. Nxb5+ Kxb4 52. Nd6 Kc3 53. Kc1 Kd3 54. Kd1= これは白も黒のパスポーンを容易に止めることができるので、ドローで終わることは疑いようがありません。

49... h4!-+


今度は黒のパスポーンが早く、黒のプロモーションが止まりません。しかし、ここまできておきながら、最後の最後で...

50. Nc6 h3??



完全にナイトの力を侮った緩手でした。黒のナイトはe5 を経由してパスポーンをブロックしなければいけないため、ポーンを進める前にそのマスを抑えてしまえば勝ちでした。50... Kd5! 51. Ne7+ Ke4-+

51. Ne5+ Kd4 52. Ng4


私はこのポジションで、Ng4-Nf2+ があるため、黒のキングはこれ以上、キングサイドに寄ることができないことに気づきました。それ自体は間違いではないのですが、少し後だと話は変わってきます。

52... Kc4 53. Kb2 g5 54. Kc2 Kd4 55. Kb3?



これで黒のパスポーンをブロックしつつ、白もパスポーンを作ることができ、白の勝勢になったと... そう2人とも考えました。ところがこれは、黒に最後のドローチャンスを与えてしまいます。55. a4! bxa4 56. Kb2 Kc4 57. Ka3 Kb5 58. Nh2!+- が正解で、ツークツワンクで白の勝ちとなります。

55... Kd5??


55... Ke4! 56. Nf2+ Ke3 57. Nxh3 g4 58. Ng1 Kf2 59. a4 bxa4+ 60. Kxa4 Kxg1 61. b5 g3 62. b6 g2 63. b7 Kh1= 今度はgポーンが伸びているので、hポーンを取らせてしまっても、ドローに持ち込めました。最後の最後まで、ミスが出ますね。

56. a4 bxa4+ 57. Kxa4 Kc6 58. Ka5 Kb7 59. b5 Ka7 60. b6+ Kb7 61. Kb5 Kb8 62. Kc6 1-0



私と羽生さんのこれまでのトレーニングの中でも、最もミスの多いシーソーゲームでした。ナイトでポーンを止めにいくエンドゲームは、理論で勉強していてもなかなか実戦では正確に指すのが難しいですね。そうしたことを学べたことも、良い経験です。

今回の解説は長かったです。この3回分の記事を無理に1つにまとめなくて、本当に良かったと思っています(笑) 羽生さんとの次のトレーニングスケジュールは未定ですが、次回もお互いに勉強になるようなゲームをしてきたいですね。

2015/02/10

Chess Lessons from Great Masters

最近、自分のチェスの勉強方法をどうしようかと思い直し、あらためて、ストラテジーやエンドゲームを学んでいます。手元にあるもので面白いなと思い、ここ数日見ているのは、アメリカのGM Seirawan の Winning Chess Strategies、そして元世界チャンピオン、Emanuel Lasker の Common Sense in Chess です。アメリカの元代表でもあるSeirawan の本は、ナイトビショップの差と働き方、ルークの活用などの基礎的な内容が多いですが、解説が丁寧で分かりやすく、非常に面白いです。私はチェスの上達において最も大切なことは、どれだけ基礎を理解できるか、だと思っていますので、それを振り返る意味でも、重宝する1冊です。

Seirawan, Y (GM, 2485) - Vukic, M (GM, 2485)
Nis 1979

1. c4 Nf6 2. Nc3 g6 3. g3 Bg7 4. Bg2 O-O 5. e4 c5 6. Nge2 Nc6 7. a3 a5 8. O-O d6 9. d3 Ne8 10. Be3 Nd4 11. Bxd4! cxd4 12. Nb5


12... Qb6 13. a4 Nc7 14. f4 Na6 15. h3 e5 16. f5 Bh6 17. h4 Bd7 18. Kh2 Nc5 19. Bh3! g5? 20. Nexd4!! exd4 21. Qh5 f6 22. Qxh6 Bxb5 23. axb5 g4 24. Rf4! gxh3 25. Rg4+ Kf7 26. Rg7+ Ke8 27. Qxh7 Kd8 28. b4 Kc8 29. bxc5 dxc5 30. h5 1-0


Lasker の扱う内容は古典だけですが、1900年近くに活躍したプレーヤーたちのゲームからも、私たちが学ばなければいけないことは山のようにあります。100年も前にこうしたチェスの研究がなされ、理論が体系化されていたことには、驚きを隠せません。


White to move and win

皆さんはこのポジションから、白が勝つ方法を見つけることができますか? Endgame Manual にも、逆サイドで載っているポーンエンディングの問題ですが、Corresponding Squares とTriangulation への理解が必要なので、そんなに簡単ではないはずです。答えの分かった方は、コメント欄にどうぞ。

Winning Chess Strategies はあと一息、Common Sense in Chess も今週中には読み終わるでしょう。次はReti のModern Ideas in Chess を読もうかと思います。(1920年のモダンなアイディアですがw) こうした勉強の成果は、すぐにゲームの中で結果に繋がらなくとも、必ずどこかで生きてくるはずです。

Copyright © 2011 Shinya Kojima All rights reserved.