2014/10/31

Game Analysis Move by Move - Kojima - Shiomi Vol.3 -


Kojima S - Shiomi R / 10th IVL (5)
Position After 14... Be6

最終章の第3部は、このポジションからスタートです。白は満足な形でピースを組み、d5 にプレッシャーをかけています。ここからはまた、違ったアイディアでポジションを改善していきます。

15. Na4!


こうしたIQP ポジションでは、典型的な手です。白はBc8-Be6 によって弱くなったb7 を狙い、c5 のマスへナイトの侵入を試みます。ナイトは一般的には盤の端に跳ぶべきではありませんが、c5 のような確実に跳べるマスが確保できているのであれば、一時的に端に行くことも問題ではありません。ショートレンジのナイトは、基本的にアクティブに使うためには、なるべく敵陣深くに切り込んでいくべきピース。ナイトが3段目から5段目に向かう手は、一般的には良いアイディアとなります。

15... Ne4


黒も同じように、3段目から5段目にナイトを向かわせます。e4 のマスのナイトは、将来的なキングサイドへのアタックも作れる可能性があり、良いポジションであることは間違いありません。c3 のナイトがa4 へ跳び、d5 へのプレッシャーが弱まったことで、黒もこのナイトを動かせるようになっています。

16. Nc5!



白は初志貫徹、ナイトを5段目に到達させます。ここで白が知っておくべきなのは、ナイトを1組交換することが、白にとってプラスになるということです。それがなぜなのか、丁寧に説明します。

IQP ポジションにおいて、基本的にIQP を持たせている側は、マイナーピースの交換を進めるべきです。IQP を持つ側には「センターに弱点を抱える代わりに、開いたビショップのダイアゴナルとセンターのマスのコントロールによる、キングサイドへのアタックチャンス」というアドバンテージがあります。マイナーピースの交換は、そうしたキングサイドアタックのチャンスを減らし、IQP を持つ側のアドバンテージを少なくします。ピースの交換を進めていけば、IQP を持たせている側はディフェンスが楽になり、単にポーンストラクチャーの良いエンドゲームに突入することができます。

さらにこのポジションでは、もう1つ白に分かりやすいメリットがあります。c3 とf6 のナイトを交換すれば、d5 へのプレッシャーはプラスマイナス0ですが、白の黒マスビショップのダイアゴナルが開くことで、白は黒キングへのプレッシャーと、d4 のアウトポストのコントロールを得ることができます。このことからも、白は積極的なナイトを交換しにいくべきだと判断できるでしょう。これが分かれば、白が早々にNa4-Nc5 から、ナイトをぶつけて問題ないことも理解できます。

16... Bf5?



塩見さんは白番でも黒番でも、IQP を持つプレーを好むアタッカーです。もし黒を持つプレーヤーが塩見さんではなく、マイナーピースの交換はIQP を持たせる側にとって有利であるという、IQP ポジションについての知識がないプレーヤーであれば、本譜の手は指さずに、ナイトを素直に交換したでしょう。その場合、16... Nxc5 17. Rxc5 Qd6 18. Rdc1 と進んで、白は確実に優位なポジションを築くことができます。塩見さんは単純なナイト交換を避け、なんとか反撃を試みようと本譜を選択しましたが、b7、d5 を諦めるのは、やはりやりすぎでした。

17. Nxb7 Qc8 18. Qxd5 Qxb7 19. Qxf5


こうして2ポーンアップになった白は、後は丁寧にフィニッシュを探すだけです。

19... Ne7 20. Qd7 Rac8 21. Bxa6!? Qxa6 22. Rxc7 Qe2 23. Rxc8 Rxc8 24. Qd8+ 1-0



黒にわずかな反撃も許すことなく、勝負は決まりました。このVol.3 でのメインテーマは、マイナーピースの交換についてです。16手目の判断ミスが決定打となりましたが、そこまでの流れはIQP ポジションを学びたいプレーヤーにとって、ためになる内容だと思ったので、各ポイントで3回に分けて、この試合を解説しました。また何か面白い試合ができれば、こうした一風変わった解説の機会を設けたいと思います。

2014/10/30

盤上の冒険者たち Official Report Vol.2


対談中の若島さんと羽生さん, みすず書房、イベントフォトギャラリーより

みすず書房の公式HP 上で、9月に開催されたイベント、盤上の冒険者たちのレポート第2弾が公開されました。内容はイベントの第1部、若島さんと羽生さんの対談についてです。詰将棋作家の若島さんによる詰将棋とチェスプロブレムの貴重な話、そして羽生さんとの掛け合いは、実に興味深い内容でした。私もざっと内容をチェックしながら、1か月半前に目の前で聞いたことを、懐かしく思い出しています。本の出版イベントにもかかわらず、本の話に欠片も触れていないのはご愛嬌(笑) 皆さんも、是非内容をチェックしてみてください。


2014/10/29

Game Analysis Move by Move - Kojima - Shiomi Vol.2 -


Kojima S - Shiomi R / 10th IVL (5)
Position After 9... 0-0

さて、このポジションから再開します。白は自らcxd5dxc5 を仕掛け、黒にd5 のIQP を残す形を決めました。ここからはIQP ポジションの特徴をよく考えたうえで、ピースのセットアップを決めていきます。

10. b3


白は4手目て閉じ込めた黒マスビショップを展開するために、フィアンケットの準備をします。a2-a3 からb2-b4 というアイディアもありそうですが、黒はすでに、a7-a6 からa7 にビショップの逃げるマスを作っているため、ポーンでビショップを追いかけるのがうまい作戦だとは思いません。(Bc5-Bb6 と退くようであれば、a2-a3, b2-b4, Nc3-Na4 という形は、c5 をコントロールして効果的。これはQGA で黒が使うアイディアと同じです。) また、b2-b4 を実現するためには、b2-b3 よりも1手多くかかるうえ、c4 のマスを弱めるという欠点もあります。そこで私は、IQP を持たせている側としては、シンプルなフィアンケットを好みます。

10... Nc6


10... Nbd7 では、d5 のポーンが落ちてしまうので、黒がナイトを展開するのはこのマスしかありえませんが、c6 のナイトは単純に d5 を落とさないような位置であるというだけでなく、d4 のマスをコントロールするという重要な役割があります。ここでIQP ポジションにおける、センターの弱いポーンと、アウトポストについて説明をしておきます。


Reference Diagram 1

分かりやすく説明するため、余計なピースを消して考えましょう。このようなIQP では、白からの方針として、d5 のポーンにプレッシャーをかけるというのは、非常にシンプルです。c3 にナイト、dファイルにクイーンとルーク、さらに白マスビショップまで、Bf1-Be2-Bf3 と組んで、d5 を攻撃できれば、ポーンを取るチャンスは十分にありそうです。しかし、d5 への利きばかりに目がいってしまい、黒からd5-d4 とポーンを突かれてしまってはどうでしょうか。

もし、黒がd5-d4 とポーンを突き、弱点だった孤立ポーンを解消したうえで、Nc6-Nxd4 もしくは、Bc5-Bxd4 と、ナイトかビショップでポーンを取り返せたらどうでしょうか。2つのどちらのピースも、d4 のマスではよく働き、黒にとって満足なポジションになるでしょう。これはIQP ポジションにおいて、IQP を持つ側の典型的なブレイクです。持つ側はこのポーン突きの可能性を作るため、一方で持たせる側はそれを防ぎ、d5 の孤立ポーンとd4 のアウトポストを保持し続けるために、お互いにd4 のマスをコントロールし続けることが重要になるのです。

このように考えると、IQP を持つ側はなるべく早くにセンターポーンのブレイクを行うのが良いように思えてしまいますが、センターポーンは5段目の2マスを抑えるという基本的な役割がありますし、相手の3段目のeポーンと早く交換しすぎてしまえば、相手のビショップの働きの悪さを解消してしまうというデメリットもあります。センターポーンのブレイクは、やるとしてもピースの展開を完了し、ポーンを後ろからルークでサポートしたうえで実行するのがベストでしょう。

11. Bb2 Re8 12. Rc1



お互いにポーンのないオープンファイルにルークを回します。白のルークはc5 のビショップをアタックしつつ、将来的にc5 のマスへのピースの侵入をサポートします。

12... Bd6?!


私はこの手は不自然だと感じました。確かにh2 への利きを持つことは、白キングへプレッシャーをかけられるために良さそうに見えます。しかし、実際には展開の劣る黒は、有効な白キングへのアタックを作ることは難しく、それならばd4 のコントロールをキープするために、12... Ba7 と退くほうが良いでしょう。この形の場合、Bc5-Bd6-Bc7 と組み直しても、c7 のビショップはルークのターゲットにもなりますしね。

13. Qd3!?


このポジションでの戦い方はいくつかありそうですが、私にとって一番自然に思えるプランは、f1 のルークをd1 に回して、d5 へのプレッシャーを強めることです。これにより、展開の遅い黒は、d5 のポーンをBc8-Be6 と守らなければいけなくなります。(a8 のルークがd8 に回る暇はありません。) e6 のビショップは、e8 のルークの利きを邪魔しますし、ポーンを守らなけばいけないということが負担になります。そこで、d1 のマスを空けつつ、d5 へのプレッシャーをキープする位置として、このクイーンの3段目が考えられるわけです。13... Nb4 14. Qb1 と進んでも、b4 のナイトはc6 に戻るしかないため、白は特に問題ないでしょう。

ちなみにこのセットアップは、Sicilian Alapin や、Caro-Kann Panov Botvinnik でも現れるものです。1. e4 c5 2. c3 d5 3. exd5 Qxd5 4. d4 Nf6 5. Nf3 e6 6. Be3 cxd4 7. cxd4 Nc6 8. Nc3 Qd6 9. Bd3 Be7 10. O-O O-O 11. a3 b6


Reference Diagram 2

例えばこのポジションは、本譜の色を入れ替えた形に似ています。しかし、本譜の白は、このAlapin の黒よりもピースの展開が圧倒的に早く、指しやすいと考えられるでしょう。ピースの展開に差が出るのは、本譜で黒はBf8-Be7-Bxc5-Bd6 と3回もビショップを動かしており、一方で白はクイーンを一度しか動かしていないためです。

13... Bc7 14. Rfd1 Be6



白はひとまず満足な位置にピースを運び、d5 へのプレッシャーと、d4 のコントロールを十分に強めています。対する黒は、Qd8-Qd6 からh2 を狙い、Ra8-Rd8, Be6-Bg4 とつなげたいところです。このようなポジションから、さらに白がどのように手を作っていくかは、次のVol.3 で見ていくとしましょう。Vol.2 ではここまで、d5 の孤立ポーンへのプレッシャーと、d4 のアウトポストのコントロールに焦点を当てて、解説を行いました。

Vol.3 へ続く

2014/10/28

Meeting with IM Greg Shahade


IM Greg Shahade, Chess.com より

突然のお知らせですが、アメリカのIM Greg Shahade が、今週来日します。Greg は1978年生まれのマスターで、ここ数年は公式戦の記録はありませんが、FIDE レイティングは2476 と高い実力を持っています。私は3年前に、彼の父親であるMichael Shahade と対戦したことがあり、妹のJennifer Shahade とも知合いです。Shahade 家はタイトルホルダーを揃える、まさにチェス一家ですね!

今回、Greg はAlex の友人ということで来日し、日本のプレーヤーとの交流を望んでいます。そこで今週の土曜日、表参道で交流会を開催することにしました。メインは、Greg と羽生さんが短い持ち時間の対局で、その後、余った時間で自由にGreg と来場者の対局をしてもらう予定です。見学も自由ですが、対局中は静かにする、対局のチャンスは譲り合うなど、常識的なマナーは守っていただけるよう、ご協力をよろしくお願い致します。私は朝のわずかな時間と、16時以降に会場にいる予定です。

【日時】 2014年11月1日(土) 10:30~18:00 (*部屋は午前から空けていますが、Greg さんの到着は午後1時の予定です。)
【会場】 青学ハイコン(最寄駅:表参道駅)

11月1日は、こちらの交流会だけでなく、上智大学ソフィア祭での、SCC の初出展、日吉キャンパスでのトレーニングなど、各所でイベントがあるようですね。私は翌日2日から、中部快速オープンに参加するために名古屋に向かいます。皆さん、秋の良い3連休を迎えましょう!

2014/10/27

Game Analysis Move by Move - Kojima - Shiomi Vol.1 -


Photo by Hasegawa

先週土曜日の10th IVL は、私にとって久々の実戦でした。「小島くん、最近試合してないし、自分の棋譜解説がブログにないよね。」と友人から言われ、危機感を覚えていたところです(笑) そこで今日は、先日の羽生さんとの試合に引き続き、IVL から棋譜を紹介します。今までと少し違い、私が試合中にどういったことを考えながら指していたか、何回かに分けてゆっくりと解説を進めていこうと思います。

Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Shiomi, R (JPN, 2138)
10th IVL (5)

1. d4 d5 2. c4 e6 3. Nf3 c5 4. e3!?



黒番で、Queen's Gambit Tarrasch Variation にこだわる塩見さんに、白番で苦しめられている1. d4 プレーヤーは、国内でも少なくないかと思います。私もこれまで、塩見さんだけでなく様々なプレーヤーにTarrasch Variation を指されてきましたが、今回初めて、4. cxd5 exd5 5. g3 のメインラインではなく、黒マスビショップをあえてポーンストラクチャーの内側に閉じ込める、Semi-Tarrasch という変化を指してみることにします。白としては、ビショップを展開できるチャンスを自ら潰してしまうのは少し損にも思えますが、IQP ポジションへの理解がきちんとあれば、十分に指しこなせると信じています。

4... Nf6 5. Nc3 a6!?


お互いにc,d ポーンをぶつけあっている両者は、どちらからポーン交換を仕掛けて、IQP を持つ側と持たせる側を決めるか、まずは腹の探り合いです。黒の5手目は、5... Nc6 6. cxd5 exd5 7. Bb5 といった変化を避けると同時に、dxc4-Bxc4-b5 とテンポ良くクイーンサイドのポーンを伸ばすことを狙っています。この場合はオープニングは、Queen's Gambit Accepted に分類されますが、私はc3 にナイトを早めに出す形は、Accepted では好きではありません。(黒がb5-b4 とポーンを伸ばし、ナイトをアタックすチャンスがあるため。) そこで、白からこのタイミングでポーン交換を仕掛け、IQP を持たせる側に回ることを決めます。

ちなみに私が黒を持っていれば、5... cxd4 6. exd4 Bb4 と指して、Caro-Kann Panov Botvinnik Variation (1. e4 c6 2. d4 d5 3. exd5 cxd5 4. c4 Nf6 5. Nc3 e6 6. Nf3 Bb4) と指すかもしれません。そうなれば、逆に白がIQP を持つ側になります。このようにIQP を持つ側になるか、持たせる側になるかが作戦の分かれ目になるところは、Semi-Tarrasch の面白いところだと考えています。また、IQP を持っても持たせても、自分が満足に指せるという自信があるのは、Sicilian Alapin Variation, Caro-Kann Panov Botvinnik, Nimzo-Indiain などのオープニングを、白黒両方で指してきた経験があるからです。

6. cxd5 exd5


6... Nxd5 7. Bd3 という形で、白にIQP を持たせる作戦もありえそうですが、この場合、早い段階でのa7-a6 という手が働くのか、少し疑問となります。

7. Be2



白は将来的に、cxd4 とポーンを取られても、dxc5 とポーンを取っても、黒にd5 の孤立ポーンを持たせることとなります。これがIQP (Isolated Queen's Pawn) です。IQP は様々なオープニングから発生するものですので、どんなオープニングを指すとしても、持つ側、持たせる側の戦略を理解しておくと良いでしょう。

このポジションでは、白は消極的に見えても、ビショップをd3 ではなく、e2 に配置します。これは黒からのBc8-Bg4 というやっかいなピンに備えつつ、クイーンのdファイルの利きを邪魔しないようにするためです。後ほど説明しますが、IQP を持たせる側の白は、d4 のマスのコントロールが非常に重要になります。

また、c5-c4 とポーンを突き越せば、黒はIQP ポジションを避けることができます。しかし、後手でピースの展開が遅い黒が、さらにポーンを動かすでしょうか? もし、黒が7... c4 とポーンを動かすようであれば、8. 0-0 Nc6 9. Ne5! と白は仕掛けることができ、満足な流れになるでしょう。それが分かれば、白は7手目で慌ててc5 を取り、急いでIQP を確定させる必要はないことも理解できます。7. Be2 を指す前に、ここまで考えて7手目を決定します。

7... Be7 8. dxc5


黒がビショップを動かして、c5 のポーンを取り返すのに1テンポロスすることが決まってから、白はc5 のポーンを取り、IQP ポジションになることを確定させます。

8... Bxc5 9. O-O O-O



このようにIQP が確定し、ゲームが進んでくると、こうした形に見覚えが出てくる人も増えてくるかもしれません。白はc1 のビショップを4手目のポーン突きによって閉じ込めてしまいましたが、その代わりにd5 にターゲットとなる孤立ポーンを残すことに成功しています。一方で黒は、センターに弱点を抱えつつも、2つのビショップの利きがきれいに開いているというメリットで勝負します。

ここから、IQP ポジションで何より大切なのは、d5 のポーンへのプレッシャーと、d4 のアウトポストのコントロールにあります。それは次回の解説に回すとして、まずはIQP ポジションが確定するまでの導入部分を紹介しました。

Vol.2 に続く

2014/10/26

10th IVL Tournament Report


Photo by Hasegawa

昨年の6月から始まったIV League は昨日、記念すべき10回目の開催を迎えることができました。13名による5R ラピッドに加え、全員参加の7R のブリッツで、ラピッド上位者のタイブレークを決める新システムです。さらに今回は、6月に以来となる羽生さんをゲストに招いての開催でした。9時間に及ぶ熱戦を経て、上位3名は以下のように決まりました。

1st Place 小島慎也 4/5 (TB Blitz 5/7)
2nd Place 野口恒治 4/5 (TB Blitz 4.5/7)
3rd Place 塩見亮 4/5 (TB Blitz 2.5/7)


私は野口さんに負け、野口さんは塩見さんに負け、塩見さんは私に負けのみで、残り4戦4勝という完全に三つ巴状態でした。タイブレークのブリッツも、6R で私が野口さんに勝ち、7R で塩見さんにドローで、なんとか野口さんを0.5P 差で振り切りました。久々に参加する国内大会で、なんとか優勝することができ、一安心です。


Photo by Inoue

2R で野口さんに痛い負けを喫した私は、逆転優勝のためにトップを全力で追いかけるほかありません。そんな中、4R で羽生さんとのペアリングが巡ってきました。羽生さんも今大会は初戦で弘平くんに敗れており、2勝1敗同士の対戦となります。

Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Habu, Y (FM, JPN, 2415)
10th IVL (4)

1. d4 Nf6 2. c4 c5 3. Nf3 cxd4 4. Nxd4 e5 5. Nb5 d5 6. cxd5 Bc5 7. N5c3 O-O 8. g3!?



羽生さんが去年から、Benoni Defence の研究をしていたことは知っていましたが、私はBenoni をメインで受けません。黒がポーンをギャンビットするこのEnglish Opening Anti-Benoni ラインは、2007年の全日本選手権で一度だけ指したことがあり、今年の夏には生徒の1人と見直していました。

8... Ng4!? 9. e3 f5 10. Be2 Nf6


黒は一度、f2 を狙うことでe2-e3 を突かせてc1-h6 のダイアゴナルを閉じながら、d3, f3 の白マスを弱めます。そのうえでf7-f5 と積極的にポーンを突いて、将来的なキングサイドアタックを狙いますが、f5-f4 が実現できなければ、c8 のビショップの働きは悪いままなので、このプランは一長一短です。e2-e3 を突かせるだけのアイディアであれば、8... Qb6 という手は見たことがあります。

11. O-O Nbd7 12. a3 a6 13. Nd2 b5 14. b4 Ba7



ここは私が試合中に気になったところです。a5 のマスを抑えなければ、Nd2-Nb3-Na5 の可能性があり、Bc8-Bb7 からd5 のポーンを狙うことができません。こうなれば黒のb7-b5! 突きは、a5 とc5 のマスを弱めたというデメリットが大きいように思えます。しかし、14... Bb6 にも、15.a4! から崩しにいくアイディアがあり、白は満足なアドバンテージを得て戦えそうです。

15. Nb3 Nb6 16. Bb2 f4


黒は狙い通り、fファイルとc8-h3 のダイアゴナルを開きますが、白もクイーンサイドのピースの展開が完了しているので、十分に対処することができます。

17. exf4 exf4 18. Nc5 fxg3 19. hxg3 Bh3 20. d6!



白はf2 へのプレッシャーとキング近くの白マスの弱さが気になりますが、c5 のマスでのナイトのブロッケードと、エクスチェンジサクリファイスによって、それらをカバーします。d6 に突き刺さったポーンは、黒のピースの動きを制限しながら、白に広いスペースと十分なエクスチェンジの代償を与えると判断しました。

20... Bxf1 21. Bxf1 Nc4 22. Bxc4+ bxc4 23. Qd4!


白は早めに白マスビショップを返してしまいますが、アクティブなピースと黒キングへのアタックチャンスで優位に試合を進めます。

23... Kh8 24. Rd1 a5 25. N3e4 axb4 26. axb4 Qb6 27. Qxc4



2ポーンエクスチェンジのマテリアルにした後は、f6 のナイトをどかして黒キングを直接攻めて決着をつけます。

27... Nxe4 28. Qxe4 Rad8 29. Rd2!?


d6 が取れないことを読んだうえで、ひとまずf2 を守ってくのが安全だと判断しましたが、コンピュータはここで決定的なタクティクスを見つけます。29. Bxg7+! Kxg7 30. Ne6+ Kf6 31. Qh4+ Ke5 32. Nc5+-

29... Rxd6? 30. Qe7 Rdf6 31. Bxf6 Qxf6 32. Qxa7 Qc3 33. Qe7 1-0



最後は時間切迫からの判断ミスでピースが落ちましたが、d6 のパスポーンとg7 へのプレッシャーは強力ですので、いずれにせよ白が勝っていたでしょう。この試合の後、4連勝だった塩見さんとの対戦も制し、滑り込みでタイブレークに望みをつなげたのでした。


IVL 専属プレーヤーの野口さんは、これまで参加したほぼ全てのIVL で、入賞に絡む実績を上げています。今大会はラピッドで私に勝ち、ブリッツで負けで、最後の最後まで競った争いとなりました。ゲームの内容も非常に面白く、勉強させてもらっています。


IVL 発足時からのメンバーであり、現在は運営にも携わっている塩見さんは、初戦から4連勝でトーナメントをリードし、優勝まであと一歩と迫りました。また次回以降も、運営とプレーの両面でお世話になることと思います。引き続き、よろしくお願い致します!


初戦で羽生さんに勝ち、3連勝まで星を伸ばしながらも、最後の2戦で塩見さんと野口さんに敗れてしまった弘平くんは、少し悔いの残る結果だったでしょうか。今後、正規メンバーとして積極的にIVL に参加し、初優勝を狙ってほしいと思います。


2回目のIVL 参加となる羽生さんは、私と弘平くんに負けて5位でのフィニッシュです。前回に続き、羽生さんのポイントを削ったのは、私たち88年生まれのメンバーのみでした。今後も、南條くんを含めた私たちの世代と、羽生さんの戦いは白熱していくと思います。

そして、タイブレークのブリッツはあわや全勝の6.5/7 で、羽生さんが単独優勝となりました。こうした結果のみならず、ブリッツ後の検討に真剣な様子も、私たちが見習わなければいけない点だと思います。羽生さん、対局の合間でお忙しい中、IVL に参加してくださり、ありがとうございました!


この秋、チーム選手権と東京オープンの2大会連続で優勝を果たし、初の国内レイティング2200を突破した桑田くんは、同期の汐口くんと弘平くんに敗れ、上記の2人と並んで3P グループでした。国内でのさらなる活躍が期待されるプレーヤーですので、今年の残りの大会、そして来年以降も頑張ってもらいたいですね。

今回、参加予定だった松尾さんは残念ながらキャンセルとなってしまいましたが、また次回以降の参加をお待ちしています。代わりに初参加を決めてくれた要くんと、カメラウーマンを務めてくださった長谷川さん、二人ともありがとうございました。次回のIVL 開催の日程は未定ですが、年内にはもう一度開催できると良いですね。12月であれば、私はハンガリーにいて関わることはできませんが、メンバーの皆さんは運営と参加をよろしくお願い致します。

2014/10/24

My Schedule in December 2014


12月のケチケメート中央広場

トロムソから帰国直後にもお伝えしましたが、12月にヨーロッパに戻ることを決めました。12月2日の深夜便で羽田からウィーンに飛び、そこからバスでブダペストに向かう予定です。12月の第一土曜は6日ですので、日程的にウィーンで1泊するくらいの余裕はありそうです。

ちなみに日本への帰国日程ですが、いつも通り未定です(笑) IM ノームをすでに揃えている以上、あとは2400到達まで、レイティングを44上げるのが最大の目標ですね。1年ぶりのハンガリーは、今からとても楽しみです。

12/03 ウィーン着、ウィーン1泊?
12/04 ウィーンからブダペストへ。アンダンテ泊
12/05 Free Day
12/06-16 First Saturday GM or IM
12/16-25 Chess in Kecskemet GM
12/26 Free Day
12/27-01/05 Chess in Kecskemet GM

ひとまず参加を決めているのは、この馴染みの3大会です。First Saturday は、どちらのクラスに参加するか未定ですが、ケチケメートはGM クラスに確定。CAISSA からChess in Kecskemet へと名称を変えたこのトーナメント、12月と年末年始、2大会に連続で参加します。クリスマスも年明けもケチケメートとは、なかなか印象深い年になりそうですね。ちなみに公式発表の大会日程がかぶっていますが、この辺りはうまく調整するのでしょう(笑)

そして12月前半のChess in Kecskemet のRating Section(GM, IM より下の、ノームのかかっていないクラス) には、日本から酒井創くんが参加します。彼は私の一昨年と同じスケジュールで、London Classic からのハンガリー入りとなります。この3年間は私だけしか日本籍のプレーヤーがハンガリーで試合をしていなかったので、新しいメンバーの参入は、ハンガリーのオーガナイザーたちも大歓迎でしょう。創くん、ケチケメートでは、よろしくお願いします。

私のプランとしては、相性の良いGM トーナメントでプレーすること、そしてFIDE レイティングの係数が20に増加したことで、この3大会の試合結果をもって2400到達を決め、年明け早々に帰国したいところです。以前の遠征中とは違い、私が担当している生徒の数も大幅に増えているので、彼らをあまり待たせるわけにもいきませんしね。もし年末年始のケチケメートを終えても、2400に到達していない場合、1月9日から開催される、Prague Open への参加を検討します。昨年の遠征では、チェコのトーナメントはかなり好印象でした。

それでは、日本で過ごす残り1ヶ月半ほど、皆さんよろしくお願い致します。明日はIVL ですので、そちらも頑張ってきます!

2014/10/22

盤上の冒険者たち Official Report Vol.1


イベントの第二部、羽生さんと私の対局の様子 Photo by Hasegawa

昨晩、みすず書房のHP に、先月行われたボビーフィッシャーを探しての刊行イベント、「盤上の冒険者たち」のレポートが公開されました。第一部である羽生さんと若島さんの対談レポートは後ほどで、先に第二部である羽生さんと私のゲームの解説と、フォトギャラリーが公開されています。このブログでは、すでに私の解説を公開していますが、今回のレポートでは、会場での対局の様子や、ピノーさんと若島さんがどういった会話をしながら大盤の解説を進めていたのかが、よく分かる内容となっています。私にとっても、非常に新鮮なイベント形式でしたので、皆さんも是非、チェックしてみてください。


今回のレポート公開にあたり、内容のチェックをしてくださった、みすず書房の担当者さん、そしてピノーさんと尚広くん、本当にありがとうございました! また第一部のレポートと動画の公開も楽しみにしています。

2014/10/19

Chigorin Memorial 2014


Mikahil Chigorin, chessgames より

2600クラスのGM がこぞって参加する、ロシアのハイレベルなトーナメント、Chigorin Memorial が今年もスタートしました。Mikahil Chigorin は1800年代後半から1900年代前半にかけて活躍し、Chigorin Defence や、Ruy Lopez Chigorin Variation などに名前の残っている、有名なプレーヤーです。以下のゲームは、Chigorin の短いゲームですが、序盤ではマテリアルのリードよりも、ピースの展開とキングの安全性が重要だということが分かる、好例だと思います。

Shletzer - Chigorin, M
St.Petersburg, 1878

1. e4 e5 2. Nf3 f5 3. exf5 Nc6 4. Bb5 Bc5 5. Bxc6?! dxc6 6. Nxe5 Bxf5 7. Qh5+ g6 8. Nxg6 hxg6!



9. Qxh8 Qe7+ 10. Kd1 Bxf2! 11. Qxg8+ Kd7 12. Qc4 Re8! 0-1


そのChigorin の功績を称えて、毎年開催される大会がChigorin Memorial なのですが、今年は日本から南條くんが参加しています。参加者のうち実に46人がGM で、レイティング2384 の南條くんでも、リストは84のスタートです。トーナメント中盤では、厳しい当たりが予想されるでしょう。リガ以降、マレーシアと香港では調子を崩している南條くんですが、彼は各上が相手であるほどやる気を出すタイプですので、ここで調子を戻してほしいと思います。南條くん、ファイトです!

Chigorin Memorial 2014
Live Games at ChessBomb

2014/10/16

10th IVL Tournament Preview


白熱した6月の8th IVL photo by Hasegawa

先日告知した中部快速オープンの直前に、久々に試合をする機会があります。記念すべき第10回のIV League は、羽生さんをゲストに招いて、10/25(土)の開催です。南條くんがChigorin Memorial に参加するために、日本を離れている期間中であることは残念ですが、それでも豪華なメンバーが集まりそうです。現在予定されているリストは、以下のようになっています。

01. HABU, Yoshiharu 2415 (FM)
02. KOJIMA, Shinya 2356 (FM)
03. MATSUO, Tomohiko 2245 (CM)
04. NAKAMURA, Ryuji 2151
05. SHIOMI, Ryo 2138
06. KUWATA, Susumu 2130
07. NOGUCHI, Koji 2105
08. YAMADA, Kohei 2087 (CM)
09. NAKAMURA, Naohiro 2054
10. INOUE, Sho 2021
11. SHIOGUCHI, Tatsuya 1999
12. SHINODA, Taro 1931
13. YOSHIMURA, Kenji 1861


上記のリストは13人ですが、うまく調整をして12人、ないしは14人での開催を目指します。なお、今回は非公開イベントとさせていただきますので、6月と違って見学は無しです。また大会終了後の、棋譜公開とトーナメントレポートをお待ちください。それでは参加者の皆さん、来週末はよろしくお願い致します!

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