2016/12/05

North American Open 2016 Tournament Information


5年前のラスベガス

2016年も残すところあと1か月となり、年内最後のトーナメントが迫ってきました。私にとって今年最後のトーナメントは、アメリカのラスベガスで開催される、North American Open です。毎年年末に開催されるこの大会には、私は5年ぶり2回目の参加となります。以下、今年の大会情報です。

日程: 2016年12月26日-30日
会場: Hotel Bally's Las Vegas
セクション: Open, U2300, U2100, U1900, U1700, U1500, U1250 (Open のみ5日間で9R、他は4日間で7R)
レイティング計算: Open のみFIDE およびUSCF 公式戦、他はUSCF のみの公式戦
タイムコントロール: 40手2時間+30分+1手10秒 delay
賞金: 120000$(7セクションの合計)

North American Open は、7つのセクション全てで高額の賞金が用意されており、どのセクションでも最終戦での賞金争いは白熱します。トーナメント前のクリスマス、そしてトーナメント後のラスベガスでの年越しを楽しみに、多くのプレーヤーが集まるアメリカのビッグイベントです。私もマン島で2400に戻したレイティングをさらに伸ばし、ベストを更新できるように頑張りたいと思います。

現在、日本からは確認できているだけで4人が参加する予定ですが、この告知を見て急きょ参戦を決めたり、私が知らないだけですでに準備を進めているプレーヤーもいるかもしれません。今年最後のブログは、ラスベガスからお届けすることになりますので、皆さんよろしくお願い致します。

2016/12/02

World Chess Championship 2016 Vol.3

日本時間の昨日朝、長かったCarlsen - Karjakin のマッチに決着がつきました。8R を黒番でKarjakin が勝ち、一時はCarlsen の王座交代かとも思われましたが、10R の白番でCarlsen が勝ちをもぎ取り、タイのスコアでタイブレークのラピッドに持ち込みます。そして昨日行われたラピッド4局のうち、3ゲーム目と4ゲーム目をCarlsen が勝って、王座防衛を決めました。多くの人がすでに目にしていると思いますが、4ゲーム目のフィニッシュは実に見事でした。

Carlsen, M (GM, NOR, 2853) - Karjakin, S (GM, RUS, 2772)
Carlsen - Karjakin World Championship (16)

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. f3!?



最終戦、勝つしか道のないKarjakin は、このマッチで初めてのSicilian を投入します。おそらく選ぶラインはNajdorf のつもりだったと思いますが、Carlsen は5. f3!? のポジショナルな変化になる手を選び、Karjakin が望むシャープな展開を避けにいきます。

5... e5 6. Nb3 Be7 7. c4 a5 8. Be3 a4 9. Nc1 O-O 10. Nc3 Qa5 11. Qd2


このようなd5 に白がアウトポストを持つ展開は白が指しやすいでしょう。c1 に一時的に退いたナイトも、将来的にd5 に運べるようにCarlsen は工夫を凝らします。

11... Na6 12. Be2 Nc5 13. O-O Bd7 14. Rb1 Rfc8 15. b4 axb3 16. axb3 Qd8 17. Nd3 Ne6 18. Nb4



b6,d6,d5 を弱点にし、2つのナイトがd5 を抑えた形で、白には特に危ない点が見当たりません。さらにここから白は、キングサイドでも手をかけて盤全体でのプレーを行います。

18... Bc6 19. Rfd1 h5 20. Bf1 h4 21. Qf2 Nd7 22. g3 Ra3 23. Bh3


c4,e4 のMaroczy Bind 型では、白の白マスビショップはこのように使いなおされることが多く、私も何度も経験があります。白が懸念するとすれば、黒のナイトがc5 からb3 を狙ってきたり、d4 のアウトポストに跳びこんでくることだと思いますが、白はそれを抑え込み、黒に反撃を作らせません。

23... Rca8 24. Nc2 R3a6 25. Nb4 Ra5 26. Nc2 b6



勝ちにいかなければいけない黒は、リスクを冒しても手を変えるしかありません。しかし、b6 にポーンを進めることは、c5 のマスを抑えるメリットよりも、ポーン自体がターゲットになるというデメリットのほうが大きいように見えます。

27. Rd2 Qc7 28. Rbd1 Bf8 29. gxh4!?


このポーン取りは、キングやf4 のマスを弱めますが、白は1つポーンを得します。私であれば躊躇うポーン取りですが、Carlsen はここから見事にキングの弱さをカバーしつつ、自身の強みが生きるようなポジションを目指していきます。

29... Nf4 30. Bxf4 exf4 31. Bxd7!



ピースを交換してポジションをシンプルにすると同時に、d5 のアウトポストを抑えられる黒のピースを減らしておき、白のナイトがセンターで活躍しやすいようにします。

31... Qxd7 32. Nb4 Ra3 33. Nxc6 Qxc6 34. Nb5 Rxb3 35. Nd4 Qxc4 36. Nxb3 Qxb3


こうして局面は大きく動きました。黒はエクスチェンジを捨てて勝負に出ますが、f8 のビショップが十分にアクティブではなく、駒損を補うのは少し無理があるように見えます。

37. Qe2 Be7 38. Kg2 Qe6 39. h5 Ra3 40. Rd3 Ra2 41. R3d2 Ra3 42. Rd3 Ra7 43. Rd5!



ドローを回避するKarjakin に対し、Carlsen はルークを5段目でアクティブに使うことでチャンスを拡大します。

43... Rc7 44. Qd2 Qf6 45. Rf5 Qh4 46. Rc1 Ra7 47. Qxf4!


試合後、多くのプレーヤーが最後のCarlsen の1手が素晴らしいと称賛していますが、私は試合を見返していて、ここで白がポーンを取れると読み切っている点に最も驚きました。29. gxh4!? の影響で、薄くなった白キングの守りを、白は最後の最後まで気にしなければいけません。最後の1手が見えなければ、危ないのは白のキングですので、Carlsen はこのポーンを取った時点で、最後の芸術的な形まで予想できるということです!

47... Ra2+ 48. Kh1 Qf2 49. Rc8+ Kh7 50. Qh6+! 1-0



最後はクイーンをサクリファイスし、50... gxh6 51. Rxf7#、50... Kxh6 51. Rh8# のどちらもメイトです。まるで教科書に載っているようなサクリファイスでマッチを締めたCarlsen は、二度目の防衛線に成功し、世界チャンピオンの座を守り続けることになります。今回のマッチでは、クラシカルで互角の戦いを見せ、一時はCarlsen をロープ際まで追いつめたKarjakin のプレーも称賛されるべきでしょう。次のマッチの挑戦者が誰になるかはまだわかりませんが、またこうして白熱した世界最高峰の戦いが見られることを期待しています。

2016/11/28

Saturday Lecture on 10th December 2016


Carranza - Capablanca / Buenos Aires casual 1911
Black to move

【日時】 2016年12月10日(土) 13:00~15:00
【会場】 チェスセンター(最寄駅:池上駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答
【テーマ】 Strategic and Tactical Play from Capablanca
【テーマ詳細】

私が一人だけ、過去の世界チャンピオンのゲームを見て勉強をするとなれば、選ぶのは間違いなくCapablanca だと思います。キューバが生んだ偉大なチャンピオンが、多くの名局を残してから100年近く経ちましたが、彼のプレーには現代のプレーヤーが学ぶべきことが多く詰まっています。今回はそんなCapablanca のゲームにスポットを当て、勉強になるプレーの数々を見ていこうと思います。

【参加費】 レクチャー代1200円+飲み物代200円
【参加資格】なし
【対象】 レイティング2000未満

Hakodate Chess Tournament 2016 Day2


2日間に渡る函館チェス大会と、3日間の函館滞在が終わりました。大会2日目のこの日、私は前日からの連勝をさらに伸ばして、5戦全勝での優勝を果たしました。2位には3勝2ドローの杉本さん、3位には3勝1敗1ドローの弘平くんが続いています。高校生の渋谷くんは、地元枠での優勝でした。各クラスで入賞された皆さん、おめでとうございます!

1st Place Kojima Shinya 5/5
2nd Place Sugimoto Koichi 4/5
3rd Place Yamada Kohei 3.5/5


優勝を決める鍵になったゲームは、4R の弘平くんとの試合です。相手のミスに助けられながらも、最後まで丁寧にさせたと思っています。

Kojima, S - Yamada, K
Hakodate Chess Tournament 2016 (4)

1. Nf3 Nf6 2. c4 c6 3. d4 d5 4. cxd5!?



Slav Exchange を事前に指そうと思っていたわけではないのですが、少し前にKramnik の面白いゲームを見ており、これまでの黒番での研究と実戦の経験から、白でチャンスを作ってさせるのではないかと考えました。

4... cxd5 5. Nc3 Nc6 6. Bf4 a6 7. Rc1 Bf5 8. e3 e6 9. Be2!?


ドローにするつもりであれば、9. Bd3 とビショップをぶつけ、ピース交換を進めるのが最も手軽でしょう。ビショップを互いにぶつけ合って交換し、cファイルでは重ねたルークを交換して早めのドローで合意するゲームは、これまで数多く見たことがあります。黒で勝ちに行くためには、この流れを止めるために自らはBf8-Be7 として、ビショップ交換は1組にとどめておくというアイディアがあり、私はそれを今回、白番で使ってみようと思いました。

9... Bd6



試合後に、この手が小さなミスなのではないかと弘平くんに指摘しました。白がBf1-Bd3 とビショップをぶつけて交換しているのであれば、黒も黒マスビショップを交換して大丈夫でしょう。しかし、黒マスビショップだけが交換されたポジションでは、c5 のマスのコントロールを弱めてしまっているという負担が大きいように思います。

10. Bxd6 Qxd6 11. O-O O-O 12. Nd2!?


これは珍しい手で、多くの実戦では12. Na4 と白は指していました。いずれにせよ、狙いはc5 にナイトを運ぶことです。

12... Rac8 13. Nb3 Nd7 14. a3 Rc7



ルークを2つ、cファイルに並べる手は自然に見えますが、次第に黒が何をするべきかが難しくなってきます。思い切ってbポーンを伸ばす手は、14... b5 15. f3!? として、白はe3-e4 も視野に入れてゆっくりと試合を進めるでしょう。白に白マスビショップが残っている以上、a6, b5 の白マスにポーンを置く手は多少抵抗があります。

15. Na4 Rfc8 16. Qd2 h6 17. Rc3


c5 にナイトを運ぶ準備はできましたが、さらに焦らず、ルークを重ねてcファイルのプレッシャーを強めます。黒がNc6-Ne7 などでルーク交換を狙ってきたタイミングで、c5 にナイトを置くつもりでした。

17... e5



何もしなければ、Rf1-Rc1, Nb3-Nc5 とされ、b7 へのサクリファイスを気にしてじり貧になりそうな黒は、思い切ってセンターでアクションを起こします。

18. Rfc1 Qg6


18... exd4 19. Nxd4 Nxd4 20. Qxd4 Rxc3 21. Rxc3 Rxc3 22. Nxc3 Nf6 23. Bf3 Be6 24. g3+/= と進めば白が良いのは間違いないため、黒はセンターを開かず、白の出方を伺います。

19. Nbc5


私はここまで進めて準備が完了し、ナイトが飛び込むタイミングだと思いましたが、ここは19. Na5! b5 20. Nxc6 Rxc6 21. Rxc6 Rxc6 22. Nc3!+/= のほうが、良かったかもしれません。ピンを利用してa5 にナイトを跳ぶアイディアは、試合中完全に見落としていました。

19... Bh3?



この手は大した脅威にならず、後で退かなければならないためにあまり意味を成しません。弘平くんとしては、何かアクションを起こさなければいけないと考えたのでしょうが、正解は19... Nxc5! 20. Nxc5 exd4 21. exd4 Qf6! (d4 を孤立にして、すかさずそこを攻めます。) 22. Nxb7 Rxb7 23. Bxa6 Rb6 24. Bxc8 Bxc8 25. Rc5 Ba6 私はチャンスがあればb7 を取りたいと考えていましたが、f5 のビショップがc8 に利きを持ち(e6-e5 の効果です。)、こうしてa6 に切り替えができるのであれば、形勢は不明でしょう。

20. Bf1 Nxc5 21. Nxc5 e4 22. Kh1


この辺りで白はかなり楽になったと思いました。ビショップの働きも白のほうが良いので、ここからはどうやってクイーンサイドのプレッシャーを増していくか、じっくりと考えます。

22... Bd7 23. b4 Re8 24. a4



ここはシンプルなタクティクスを見落としています。24. Bxa6! bxa6 25. Nxd7 Rxd7 26. Rxc6+- ならば、すぐに白の駒得が確定します。

24... Ne7 25. Nxe4!


それでも、このディスカバードアタックでポーンアップを決め、白は勝勢になりました。d5 も弱く、反撃も作れない黒は、とても苦しい状況です。

25... Rxc3 26. Nxc3 Be6 27. Ne2 Nf5 28. Nf4 Qg5 29. Rc5 Nd6 30. Bd3 g6 31. a5 Qe7 32. Nxd5 Bxd5 33. Rxd5 Ne4 34. Bxe4 Qxe4 35. Rc5 1-0



2ポーンダウンで反撃もない以上、黒はここでリザインです。続く5R も問題なく勝ち、名古屋の中部快速に続いての全勝、そして今年2回目の国内大会優勝を決めました。

表彰式でもお話しさせていただきましたが、函館チェスサークルの運営は、日本でもトップクラスのしっかりしたものだと思っています。それを支えているのは、函館チェスサークルのメンバー保護者の皆さんの協力にほかなりません。会場設営、アービター、選手のサポート、送迎まで至れり尽くせりで、3日間の函館滞在を快適に過ごすことができました。あらためてこの場で、お礼を申し上げたいと思います。

そして函館チェスサークルには、小学生から高校生、そして社会人まで幅広い世代のプレーヤーが在籍していますが、今回は気持ちのこもった良いゲームをたくさん見せてもらうことができました。彼らの成長を見に、可能であればまた来年も函館に足を運びたいと思っています。東京のトーナメントにも、機会があれば是非参加してみてください!


今日のお昼は、初体験となるラッキーピエロのチャイニーズチキンバーガーでした。甘辛く味付けされた鶏のから揚げがゴロゴロ入った看板メニューは、函館の若者に大人気です。函館市民ならば誰もが知っているラッキーピエロ、東京にも進出してきてほしいですね。


表彰式後はマスター3人によるサイン会でした。金曜日の同時対局後の棋譜へのサイン、私の本へのサインを含めると、3日間で何回サインしたかわかりません(笑) こうした歓迎を受けるのも、地方遠征の楽しみの一つですね。

2016/11/26

Hakodate Chess Tournament 2016 Day1


同時対局を行った昨日から一夜明け、今日の午後から函館チェス大会はスタートします。試合のない午前中は、函館駅前の朝市へ。イカ、ウニ、イクラ、ホタテなど、新鮮な海の幸を振舞う店が軒を連ねています。刺身や海鮮丼を食べられる店だけでなく、干物やカニ、サケなどを売るお土産屋さん、野菜、果物といった青果を扱う店まで、多種多様なお店がそろった市場で、食事をせずとも楽しめる場所になっています。最近は温暖化や時化が影響し、函館名物の活きイカが入荷されていないことが唯一残念でしたが、試合前にゆったりと過ごすことができました。


午後からはいよいよ試合です。今年は20名の参加者が集まり、初日2試合、2日目3試合と、計5試合を戦います。初日は私を含め、上位5人が2連勝で、2日目から上位同士のぶつかり合いが始まります。私は昨日、同時対局でも良いゲームを見せてくれた、渋谷くんと2R で対戦しました。

Kojima, S - Shibuya, K
Hakodate Chess Tournament (2)

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bc4 Nf6 4. d3 Bc5 5. c3 Bb6 6. O-O h6 7. Nbd2 O-O 8. Re1 d6 9. Bb3 Bg4 10. h3 Bh5 11. Nf1 Bg6!?



たまには気分を変え、1. e4 でゲームを始めます。12手目、Nf1-Ng3 が白の狙いで、次のNf3-Nh4, Nh4-Nf5 の組み合わせで白が有利になると思っていましたが、11... Bg6 と早めにビショップを退く手を見て、どうするか迷いました。黒は明らかにNf6-Nh5 とナイトをぶつける気満々ですが、あえてその狙いに乗ってみることにします。

12. Ng3 Nh5 13. Nf5! Bxf5 14. exf5 Qd7


検討で指摘したのは、14... Ng3!? 15. d4 Nxf5 16. dxe5 dxe5 17. Qxd8 Raxd8 18. Nxe5 Nxe5 19. Rxe5 Nd6 20. Bf4 Rfe8 という変化です。ダブルビショップを好むコンピュータは白優勢評価を出しますが、ポーンが対称形でどこまでアドバンテージを保てるか、試合中は自信がありませんでした。

15. Nxe5! Qxf5



ここは15... Nxe5? 16. Qxh5 Nxd3 17. Bxh6! Bxf2+ 18. Kf1!+- が面白い変化で、d3 のポーンを返しても、黒キングをすぐに攻めて白の勝ちになります。

16. Ng4 Nf6 17. Nxf6+ Qxf6 18. d4+/-


ここまで進めて一安心。白はダブルビショップに加え、b6 のビショップを抑え込むことで優位に立ちます。黒はd6-d5, c7-c6. Bb6-Bc7 とすればビショップを使いなおすことができますが、それにはとても時間がかかります。

18... Rfe8 19. Be3 Na5 20. Bc2 Nc4 21. Qd3



これは白が都合良く、黒キングを攻撃できる形になりました。黒はピースが落ちないように指し続けますが、自分のキングを危うくしてしまいうため、とても苦しい状況が続きます。

21... Nxe3 22. Qh7+ Kf8 23. Rxe3 Rxe3 24. fxe3 Ke7 25. Qe4+?!


しかしこれが緩手で、25. Rf1! Qe6 26. Qxg7 Qxe3+ 27. Kh2 Qe6 28. Bf5!+- がより正確でした。どちらのポーンを取っても良いかと試合中は考えていましたが、g7 を取ってf7 をさらに狙うほうが、白の攻撃は強力です。

25... Qe6 26. Qxb7 Qxe3+ 27. Kh1 Re8 28. Ba4 Rd8 29. Bb3 Kf6??



29... Qe2 30. Qd5 Qe6 31. Qh5 d5 32. Qh4+ などで白の攻勢は続きますが、これをしのげれば黒にもドローチャンスが出てくるでしょう。本譜ではすぐに黒キングが追い詰められてしまいます。

30. Rf1+ Kg5 31. Qd5+ Kh4 32. Qxf7 g5 33. Bd1 Re8 34. Qh5+ Kg3 35. Qg4# 1-0


あぶりだしたキングをきっちり追い詰め、白の勝利です。チェスの大会としては珍しく、初日はアップセット1つもなしで、全対戦で格上が勝利を収めています。2日目も良いゲームができるように、頑張ってきます!


初日の打ち上げは、北海道名物のジンギスカンへ。最初の皿は豚肉も入っていましたが、2皿目以降はラムオンリーで食べ続けました。


ジンギスカンのジンくんは、2014年ゆるきゃらグランプリの北海道優勝者。試合会場にはついていったのに、煙のにおいがつくという理由で、ジンギスカンのお店では鞄から出してもらえず、少し不満そうです。

Hakodate Chess Tournament Arrival Day


羽田の夜明け

今日から3日間、函館チェス大会に参加するため、北海道の函館に来ています。到着日の今日は朝の8時過ぎに函館に降り立ち、夕方までは観光、夜は函館チェスサークルのメンバーとの同時対局を楽しんできました。試合前日のこの日を写真で振り返ろうと思います。


函館到着後、すぐに迎えに来てくれていた山田さんと交流します。山田さんは函館チェスサークルの代表で、10年以上お世話になっている人です。空港から向かった彼の自宅で少し休憩した後は、中心地から少し離れた湯の川温泉へ。本格的な温泉に入るわけではなく、市電の湯の川温泉駅前にある足湯を楽しんできました。函館は全日に降った雪が積もっており、空気も冷たい! 足は温まっても、上半身は寒く、全身跳び込みたくなります(笑)


足湯を後にし、少し早い昼食に向かいます。駅前の朝市は翌日に回し、温かいものをを求めて五稜郭近くへ。選んだのは函館の名物、塩ラーメンです。五稜郭近くに本店を構える函館麺厨房あじさいは、函館でも人気のラーメン店。羅臼に負けていないという函館の昆布でだしを取った塩ラーメンは、なかなか東京では食べられないレベルの逸品です。


続いて五稜郭の全貌を眺めるため、五稜郭タワーへと上ります。実際に上ってみると、五稜郭が本当に五角形であることが分かるのですが、どうしても一枚の写真に収めることは難しかったですね。この時期は雪ですが、春には桜を楽しむことができ、季節によって違った趣があるのが、五稜郭の見どころです。タワーから降りた後も、五稜郭公園の中を散策し、箱館奉行所の内部で箱館戦争の歴史や、箱館奉行所について学ばせてもらいました。


五稜郭観光の後は山田さんと一時別れてホテルにチェックインし、しばし休憩。16時過ぎからは、夜景を目当てに函館山へと向かいます。函館山は混雑を避けるために乗用車での登頂を禁止しており、観光客は主にロープウェイを利用します。函館の名物である函館山からの夜景は、噂以上の美しさでした。両側を海に挟まれた、函館独特の地形がはっきりわかるのも面白いですね。


下山後、早めの夕飯は寿司を選びました。山田さんがおススメだという回転寿司は、新鮮な北の海の幸を手頃な手段で楽しむことができます。定番のネタから、具が大量に入ったあら汁、高級魚のキンメダイまで、函館の海鮮を満喫させてもらいました。



そして今日のメインイベントでもある、函館チェスサークルのメンバーとの同時対局を迎えます。集まったとして10人ほどではないかという予想を裏切り、16名といっせいに対局をさせていただきました。結果は私の全勝ですが、面白いポジションがいくつもありました。


Kojima, S - S.K
Hakodate Simul

18. e5! Bxf3


素直にポーンを取る手には、少し気づきづらいタクティクスが隠されています。18... dxe5 19. fxe5 Nxe5 20. Nxe5 Rxe5 21. Rxf6!+- これで次にBd3-Bh7+ がディスカバードチェックのスレットとなり、白は駒得で勝勢です。

19. exf6 Qxh3+ 20. Kg1! Bxg2 21. Qxg2 Qxg2+ 22. Kxg2+-



20. Kg1 の時点で、黒はf3 とh3 のピースはダブルアタックされており、ピースダウンを受け入れなければいけません。21... Rxe3?? 22. Qxg7# となってしまい、黒のタクティクスは不発に終わるのがポイントです。

函館チェスサークルのメンバーとのゲームはタフなものが多く、2時間はあっというまに過ぎてしまいました。明日からの函館チェス大会でも、皆さんがどのようなプレーをするか、楽しみにしています。明日からの2日間も、よろしくお願い致します。

2016/11/24

Weekly Chess Puzzle Vol.31


Farkas, R (HUN, 2115) - Kojima, S (FM, JPN, 2349)
Bela Perenyi Memorial 2013
Black to move


Friedland, J (ENG, 2125) - Kojima, S (FM, JPN, 2340)
London Chess Classic Open 2012
Black to move

今夜は久々に、タクティクスとエンドゲームのセットで、どちらも黒番です。1つ目は白キングの守りを破り、メイティングアタックを仕掛けるにはどうしたら良いか、2つ目はルークにサポートされた白のaポーンにどのように対処すれば良いか、それがポイントです。いつも通り、答えが分かった方はコメント欄へどうぞ。

2016/11/23

World Chess Championship 2016 Vol.2

昨日は世界中のチェスファン驚いたことでしょう。Carlsen -Karjakin の世界チャンピオンマッチで、8戦目にしてようやく勝敗がついたためです。先に白星を挙げたのは、大半の予想を覆し、挑戦者のKarjakin でした!

Carlsen, M (GM, NOR, 2853) - Karjakin, S (GM, RUS, 2772)
Carlsen - Karjakin World Championship (8)

1. d4 Nf6 2. Nf3 d5 3. e3 e6 4. Bd3 c5 5. b3 Be7 6. O-O O-O 7. Bb2 b6 8. dxc5 Bxc5 9. Nbd2 Bb7 10. Qe2 Nbd7 11. c4 dxc4 12. Nxc4 Qe7 13. a3 a5 14. Nd4 Rfd8 15. Rfd1 Rac8 16. Rac1 Nf8 17. Qe1 Ng6 18. Bf1 Ng4 19. Nb5 Bc6 20. a4 Bd5 21. Bd4!



今回も非常におとなしい序盤でしたが、Carlsen は黒のb6 を狙うことでチャンスを作ります。c,d ファイルに密集している駒を黒がどう捌くかがポイントです。

21... Bxc4 22. Rxc4 Bxd4 23. Rdxd4 Rxc4 24. bxc4


私はこのゲームを見ていて、気になったのはこの局面です。a4 のポーンを孤立にしてしまうのは少し危険に見えるため、私であれば24. Rxc4 と指し、ゆっくりとビショップナイトの差を出すことを目指したいところです。

24... Nf6 25. Qd2 Rb8 26. g3 Ne5 27. Bg2 h6 28. f4 Ned7 29. Na7 Qa3 30. Nc6 Rf8 31. h3 Nc5 32. Kh2 Nxa4




これで黒はポーンアップとなり、aポーンをパスポーンにできます。

33. Rd8 g6 34. Qd4 Kg7 35. c5 Rxd8 36. Nxd8 Nxc5 37. Qd6 Qd3? 38. Nxe6+!


しかし、Carlsen も負けじと黒のミスを突き、タクティクスでポーン1つを取りかえします。これで黒はキングが危なくなり、白が盛り返してゲームを面白くします。

38... fxe6 39. Qe7+ Kg8 40. Qxf6 a4 41. e4! Qd7 42. Qxg6+ Qg7 43. Qe8+ Qf8 44. Qc6 Qd8 45. f5 a3 46. fxe6 Kg7 47. e7?



ところが、盛り返していたCarlsen に大きなミスが出て、再び黒が流れを引き寄せます。ここはポーンを交換するとしても、47. Qb5! Nxe6 48. Qb4 Qf8 49. Qxb6 と進めておくほうが安全だったでしょう。e6 のナイトが浮いているため、黒はすぐにaポーンを活かすことができません。

47... Qxe7 48. Qxb6 Nd3 49. Qa5 Qc5 50. Qa6 Ne5 51. Qe6 h5 52. h4??


Carlsen らしからぬミスで、ゲームは決まってしまいます。g4 を穴にしてしまうと、黒にはメイティんぐアタックが生まれます。

52... a2! 0-1



52... a2 53. Qxa2 Ng4+ 54. Kh3 Qg1 55. Qb2+ Kg6-+ このように進んで、白にはチェックがなく、メイトを防ぐためにクイーンを捨てなくてはいけません。この貴重な黒番での勝利で、Karjakin がこのマッチ、初めてリードを奪いました! 残りの4試合、ビハインドとなったCarlsen がどのようなプレーを見せるか、楽しみにしようと思います。

2016/11/22

Japan Open 2016 Day2 Tournament Report


Photo by Uesugi

週末に行われたジャパンオープンは、6戦を終えて4勝2ドローの馬場さんと東野さんがトップに並び、タイブレークで馬場さんの優勝が決まりました。最後まで誰が優勝するか分からない大混戦でしたが、お2人とも安定して強かったと思います。おめでとうございます!

1st Place Baba Msahiro 5/6
2nd Place Higashino Tetsuo 5/6
3rd Place Kojima Shinya 4.5/6
4th Place Aoshima Mirai 4.5/6


私は4,5R で青嶋くん、Alex とドローになり、逆転優勝をかけた最終戦も馬場さん相手に勝つことができず、2日目は3ドローで4.5P 止まりでした。4.5P は9人並ぶ団子状態でしたが、入賞の楯は上位ボードで試合を続けた私と青嶋くんが獲得しています。最終戦の馬場さんとの試合は、とてもエキサイティングでしたので、今夜はそちらをご紹介しようと思います。

Kojima, S - Baba, M
Japan Open 2016 (6)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. b3!?



先日ブログで紹介した、Positional Masterpieces of 2012-2015 の中に、この手順で始まるゲームがありました。普段は3. d43. g3 と指す私ですが、ここは少し相手の予想を外し、新しいポジションを模索してみることにします。

3... Bg7 4. Bb2 O-O 5. g3 c6 6. Bg2 d5 7. d3 Bf5 8. Nbd2


c7-c6, d7-d5 に対しては、ポーンを4段目まで伸ばさず、低く組むことで白は徐々に有利になると、Naidisch の解説に中に説明がありました。それを完全に理解していたわけではないのですが、ハンガリー留学時代に、IM Berczes がRa1-Rc1-Rc2, Qd1-Qa1, Rf1-Rc1 と組んでいたことを思い出し、そのイメージで試合を進めてみることにします。

8... dxc4 9. Nxc4 Qc8 10. O-O Bh3 11. Rc1 Bxg2 12. Kxg2 Nbd7 13. Qc2 Re8 14. e4 Nh5 15. d4



黒から8... dxc4 と開いてきたため、センターをポーンで抑える展開に持っていきます。d3-d4 のテンポロスはあれど、今年の全日本の権田さんとの試合と同じような形になり、白としては満足です。

15... Nb6 16. Ne3 Rf8!?


ルークが元の位置に戻る手は奇妙に見えますが、eポーンを進めるプランが有効ではない以上、白としてはf7-f5 のほうを警戒すべきです。黒にとってfポーンを伸ばしてe4 を崩すアイディアは、キングやe6 のマス、e7 のポーンを弱めますが、代わりにd5 のマスを得ることになります。トータルでは白のほうがメリットが大きいと思いますが、それでもf7-f5 に注意しながら白はゲームを進めます。

17. Qe2 Qe6 18. Ng5 Qd7 19. Rfd1 Rad8 20. Rc2!?



試合中に考えており、検討で馬場さんにも指摘されたのは、すぐにdポーンを伸ばす手です。20. d5! cxd5 21. Bxg7 Nxg7 22. Nxd5 Nxd5 23. Rxd5 Qe8 24. Rc7 Rxd5 25. exd5 Qd8 26. Qc4+/- 私としては、h5 のナイトの位置が悪いことをもっと利用したかったのですが、それをプレーに戻させても、cファイルを突破するほうが白は優位に立てたでしょう。

20... h6 21. Nh3 Qe6 22. f3 f5 23. d5!


f7-f5 を止められなかった以上、ここでセンターのブレイクを仕掛けて勝負します。

23... cxd5 24. exd5 Qd7 25. Bxg7 Kxg7 26. Rcd2 f4 27. Nc2!



ナイトはg4 に向かう手もありそうですが、私はd5 までポーンを進めた以上、e6 のマスを利用するのが自然だと考え、Ne3-Nc2-Nd4-Ne6 のマヌーバリングを目指すことにします。

27... fxg3 28. hxg3 Qd6 29. f4 Kh7 30. Nd4 Rf6 31. Nb5?!


しかし、ここまで進めておいて方針をぶらしてしまったのかミスでした。e6 にいざ入れるという段階になって、e6 のナイトはe7 へのプレッシャーを薄めるだけで、さほど白にメリットはナイト勘違いしてしまいます。実際には31. Ne6! Rc8 32. Nf2! (e6 のナイトがf4 のポーンを守っているため、Rf6-Rxf4 のスレットが消え、h3 のナイトを組み替えることができるのがポイントです。) 32... Nxd5 33. Ne4 Qxe6 34. Nxf6+ exf6 35. Qxe6 Nhxf4+ 36. gxf4 Nxf4+ 37. Kf3 Nxe6 38. Rd7+ Kg8 39. Rxb7 a5 40. Rd6+- f2 に退いたナイトがe4 を目指し、白が確実に駒得できるということを見落としていました。

31... Qd7 32. Kh2 a6 33. Nc3 Rd6 34. Nf2?!



ここもコンピュータは驚きのタクティクスを示します。34. f5!! Qxf5 35. g4 Qf6 36. gxh5 Qxc3 37. Qxe7+ Qg7 38. Qxg7+ Kxg7 39. Nf4+/- このようにナイトとクイーンを交換しても、黒キングを攻めて駒得のチャンスがある白に大きなアドバンテージがあるでしょう。

34... Nf6 35. Qe5


ここは互いに残り時間が少なかったのですが、もし長めに残っていたとしても読み切れる自信はありません。35. Nfe4 Nxe4 36. Qxe4 e6 (馬場さんはこれでd5 のポーンが落ち、黒が有利だと検討で指摘しましたが、局面は予想より複雑です。) 37. Qe5! (狙いは次にNc3-Ne4 からf6 でのフォークです。) 37... Rf8 38. Ne4 Rxd5 39. Rxd5 Nxd5 40. Nc5 Qc6 41. Nxe6 Qc2+ 42. Kh3 Qf5+ 43. Qxf5 Rxf5 44. Rd3+/= コンピュータの評価はやや白優勢ですが、黒も注意深く指せば大丈夫であるように見えます。

35... Nbxd5 36. Nce4 Nxe4 37. Nxe4 Ne3!



私はルークが避ける手で完全にイコールポジションになると思っていましたが、馬場さんは全く違う手を指してきました。37... Re6 38. Rxd5 Qc6! (38... Rxe5?? 39. Nf6+!! Kg7 40. Nxd7+-) 39. Qxe6 Qxe6 40. Rxd8 Qxe4 41. R1d2= ならば、ドローになるでしょう。

38. Nf6+


g4 でのナイトとフォークがある以上、この手しかないと読みました。しかし、38. Qxd6! Qxd6 (38... exd6 39. Nf6+ Kg7 40. Nxd7 Nxd1 41. Nc5!=) 39. Rxd6 exd6 40. Rd3 d5 41. Rxe3 dxe4 42. Rxe4 というような変化がありました。互いにg4 とf6 でクイーンキングのナイトフォークがあり、非常にポジションは複雑です!

38... exf6 39. Qxd6?


ここもクイーンで取る1手だと思いましたが、39. Rxd6! Ng4+ 40. Kg2 Nxe5 41. fxe5! Qf5 42. Rxd8 Qe4+= として、2ルークvs.クイーンでドローでした。次の黒の手を見るまで、d6 をクイーンで取った手で白がエクスチェンジアップだと勘違いしていました。

39... Nf1+!



これでルークを取りかえした黒は、単純に1ポーンアップのルークエンディングへと突入します。

40. Rxf1 Qxd6 41. Rxd6 Rxd6 42. Rc1?!


ポーンの足りていない白は、キングサイドだけが3対2 でポーンの残る形を目指すべきですが、そのためにルークが回るべきはcファイルではなく、eファイルです。42. Re1! Rd7 43. Re6 Kg7 44. Rb6! こうしてb7 のポーンを当てた状態にしておけば、クイーンサイドのポーンを捌いてキングサイドだけにポーンを残せるチャンスが増えるでしょう。

42... h5?



これは助かったと感じました。黒は勝つためにはクイーンサイドのポーンを残さなければいけないため、42... Rd7 とルークを下げてb7 を守る手が正解です。

43. Rc7+ Kh6 44. Rxb7 Rd2+ 45. Kh3 Rxa2 46. Rb6 f5 47. b4 a5 48. bxa5 Rxa5 49. Rb7 Ra2 50. Rc7 Rf2 51. Rc8!


Rc8-Rh8+ の狙いを作ってh5-h4 さえ許さなければ、白はさほど危険なく、ドローに持ち込めるでしょう。

51... Re2 52. Rh8+ Kg7 53. Ra8 Kf6 54. Rf8+ Kg7 55. Ra8 Rf2 56. Kh4 Rf3 57. Rb8 Re3 58. Ra8 Rf3 1/2-1/2



最終戦、ラッキーなことに4回目の白を引き、望むようなゲームの流れで優位に立てたにもかかわらず、勝ち切れなかったのは残念でした。また色々と勉強を続け、次の大会に生かしたいと思います。ジャパンオープンに参加された皆さん、お疲れ様でした。次の大会は今週末に函館で開催される大会ですので、そちらのレポートもお楽しみに!

Copyright © 2011 Shinya Kojima All rights reserved.