2011/09/30

Inaccurate Defences

チェスというのは不思議なもので、駒をなるべく取られないように取られないようにと考える一方で、チェックメイトにするためならば、どれだけ駒を捨てても構いません。しかし、有効ではないアタックに駒を投入しすぎたり、駒を捨てすぎたりすれば、ディフェンスされた際に大きな不利に陥ります。重要なのはアタックが有効であるか、相手のディフェンスの手段は十分にあるか、それを見極めることです。

ところが実戦でいざ攻め合いが始まると、その見極めを狂わす要素が出現します。それがディフェンス側の焦りです。特に自分のキングに魔の手が迫ると、落ち着いて考えれば簡単に見つけられるようなディフェンスを見落としてしまいがちです。今回は私の試合の中から、いくつかの"不正確な"ディフェンスの例をご紹介します。(※対戦相手が全て同じであることは偶然で、特に意図はありません。)

Black to Move
Kojima, S - Tanaka, M
Master League Class B 2002

次にQxg7#がスレットになっているため、黒はそれを防がなければいけません。
しかし、黒が自分のキング周辺ばかりを見ていると、正しい手を指すことができません。

32... Qf8??


これは大失敗です。白にはアタックを続ける手段があるため、これではディフェンスになりません。
正しくは32...Rxb3! と指すべきで、これで攻守が逆転し黒のアタックが先に決まります。
Analysis Diagram

33. Rxb3 (33. cxb3 Qc1+ 34. Ka2 Qxa1#) 33... Bxa1 -+

33. Rhg1 f6 34. Rxg7+ Qxg7 35. Rxg7+ Kxg7 36. Qxa6 +-


決定的なアタックがありながら、それを見落としてディフェンスに回ったしまったミスの例でした。それでは次へ。

Black to Move
Tanaka, M (1737) - Kojima, S (1902)
Team Championship 2003

黒は大きく駒得していますが、キング付近に迫っている2コネクテッドパスポーンが不気味です。
それでも正しくディフェンスできれば、問題なく勝てたはずでしたが・・・

23... Qh8??


A passive defence! このような消極的なディフェンスでは白にチャンスを与えてしまいます。

23... d4!
白マスビショップのダイアゴナルを開き、白キングに反撃するのが正しいディフェンスです。以下
24. fxe8=Q+ (24. g7 Qe2 -+) 24... Rxe8 25. Rf7+ Kc8 26. g7 Qe2 -+ ならば黒が勝てそうです。

24. fxe8=Q+ Rxe8 25. Rf7+ Re7 26. Raf1 Bc6 27. Rxe7+ Kxe7 28. Rf7+ Kd6 29. Bf8+ 1-0

(29. Bf8+ Ke5 30. Bg7+ Qxg7 31. Rxg7 +-)
攻撃は最大の防御、とも言うようにアクティブな反撃は一般的にとても有効です。この試合はチーム戦での一戦でもあり、絶対に勝たなくてはいけないことが焦りにつながったとも言えます。

Black to move
Tanaka, M - Kojima, S
ACC Rapid 2005 Spring

黒はエクスチェンジを捨てているため、白キングへのダイレクトアタックに期待します。

28... Ng3+ 29. Bxg3?


King's Indian では典型的なアタックにどう対応するか難しいところですが、
29. Kg1 Nxf1 30. Bxf1 とエクスチェンジ返すのが正しく、これならば形成互角でした。

29... fxg3 30. h3 Bc8?!

ここで黒は決定的なアタックを見落としています。
30 ...Nxb4!! 31. Qxa8+ (31. Qxb4 Bc8 32. Kg1 Bxh3 33. gxh3 Qxh3 34. Rf2 gxf2+ 35. Kxf2 g4 -+ 次のBh6 が決定的です。) 31... Bxa8 -/+

31. Qe8+ Bf8 32. Qxc8?

次の32...Bxh3 を防ぐためのクイーンサクリファイスですが、この駒数ならば黒は順当に勝つことができます。
正しいディフェンスは32. f4! exf4! (32... Bxh3? 33. Qh5! +/-) 33. Qh5 Qxh5 34. Bxh5 Nxb4 35. Nb5 で、まだ勝負は分かりません。

32... Rxc8 33. Bxa6 Ra8 34. Ra1 Be7 35. Nb5 Bd8 36. Bb7 Rxa1 37. Rxa1 g4 38. fxg4 Qd2 -+


このように自分のキングに危険が迫った際は、なかなか正確な判断ができないものです。これを鍛えるためには、正確な読みの力を伸ばすよりも、たくさんの種類のアタックとディフェンスのアイディアを覚えることが大切だと私は考えます。不正確なディフェンスにより試合を落としてしまったこと、皆さんも心当たりがあるでしょうか?

2011/09/29

Play Like Sveshnikov - SS part9 -

Game5

- White plays 13.Nce3 -


Sakai, H (JPN,UR) - Kojima, S (JPN,2225)
Japan Chess Championship 2008

1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 e5 6. Ndb5 d6 7. Bg5 a6 8. Na3 b5 9. Nd5 Be7 10. Bxf6 Bxf6 11. c3 Bg5 12. Nc2 Ne7 13. Nce3?!

d5 のナイトをサポートできるので、一見するとこの手は自然に思えます。
しかしe3 のナイトは、g5 のビショップでいつでも消すことができてしまいます。
Part8 でもあった通り、13.Ncb4 が正しいナイトの位置です。

13...O-O 14. Bd3 Bxe3 15. Nxe3 Bb7 16. O-O d5!

黒はダブルビショップを消しましたが、その代わりに弱点であったd6 のポーンとd5 のマスを解消することに成功します。

17. exd5 Nxd5 18. Qh5 g6!?

一時的にポーンを取らせますが、簡単に取り返すことができます。

19. Qxe5 Re8 20. Qd4 Nxe3 21. fxe3 Qe7


21... Bxg2 22. Kxg2 Qg5+ 23. Kf2 Rad8 24. Qf4 Qxf4+ 25. exf4 Rxd3 26. Rad1 も考えられる変化です。

22. Bc2 Rad8 23. Qf4 Qxe3+ 24. Qxe3 Rxe3 25. Bb3 Rd7

ポーンを取り返し、形成互角のポジションです。しかしもちろん、勝負はどちらに転ぶか分からないものです。

26. Rf2 Kg7 27. Raf1 f5 28. g4?


自分のキングを危険にさらす手です。b7 のビショップが睨んでいることを忘れてはいけません。

28...Re4! 29. h3 Rd3


黒はすかさずルークを侵入させ、全てのピースで白キングを攻めます。スレットである...Rxh3-Rh1# をどう防ぐか難しいところです。

30. Rf3?

30. Rd1! がうまいディフェンスで、31.Rd7+ がビショップ取りのスレットになっているため、黒はルークを交換せざるをえません。
大抵の場合、ピースを交換することはディフェンス側にとって有利です。

30... Rxf3 31. Rxf3 Rxg4+! 32. hxg4 Bxf3


これで黒のポーンアップです。あとはキングとキングサイドのパスポーンを前進させます。

33. gxf5 g5!

2コネクテッドパスポーンを残すのが正しい判断です。f5 のポーンは数手後に、簡単に取ることができます。

34. Kf2 Be4 35. Be6 Kf6 36. Bc8 a5 37. Ba6 b4 38. cxb4 axb4 39. a3 bxa3 40. bxa3 h5 41. Be2 h4 42. a4 Kxf5 43. a5 g4 44. Bf1 Ke5?!

ここまでは順当に進めてきましたが、どうしても白のパスポーンが気になってしまいました。
44... g3+ 45. Kg1 Kg4 で問題なく黒の勝ちです。

45. a6 Kd6?


一つポーンを進める手を抜かしてしまいました。45... g3+ 46. Kg1 Kd6 -+ で再び黒勝ちです。
白キングはポーンに近づくことができないため、a6 のポーンを取りに行く余裕があります。

46. a7 Kc7 47. Bd3??


47. Ke3! Bc6 48. Kf4 h3 49.Bxh3 ならばドローです。

47... g3+ -+

ようやくgポーンが3段目まで進みました。これでようやく黒勝ちです。

48. Kg1 Bb7 49. Ba6 h3 50. Kf1 Bxa6+ 0-1


お互い甘いところが目立ちますが、今年のジュニアチャンピオンである酒井くんとの思い出のゲームでした。

2011/09/28

Tim Krabbé's CHESS CURIOSITIES

今夜はオーストラリアの池田くんから教えてもらった、ちょっと変わったチェスサイトのご紹介です。

Tim Krabbé's CHESS CURIOSITIES

こちらは真面目な棋譜の紹介もありますが、大部分が詰めチェスやパズル、奇妙なポジションの紹介です。そのため、チェスが強くなりたい人にとっては、やや縁の薄いサイトだと言えるでしょう。私も以前は、実戦的にはありえないポジションのプロブレムに取り組むことはほとんどありませんでしたが、最近は少し考えが変わってきました。

このようなレクリエーションの要素が強いチェスも、トレーニングの合間に大勢で楽しんだり、チェスを始めたばかりの子供に見せたりと、有効に活用する方法はいくつもあります。また競技としてではなく、パズルや芸術としてチェスを楽しんでいる人もたくさんいるため、そういった人たちとの交流のためにも、こういったパズルは知っておいて損はないと思います。皆さんもトレーニングに疲れた際は、このようなチェスを楽しんでみては如何でしょうか。

1. g3 f5 2. Bg2 Nc6 3. Bxc6 g5 4. d3 a5 5. Qd2 Kf7 6. Qxg5 h6 7. Qxe7+ Kg6 8. Bxd7 Kh5 9. Kd2 Kg4 10. Nf3 Kh3 11. Ng1+ Kg2 12. Bxf5 Kf1 13. Ke3 Ke1 14. Kf3 Nf6 15. Qxc7 Nd5 16. Kg2 Nc3 17. Bxh6 Qg5 18. Na3+ Kd2 19. Re1 Nd1 20. Kf1 b5 21. Nxb5 Kc1 22. Qxa5 Kb1 23. Rxd1+ Qc1 24. Bxc1 Bh6 25. Qe1 Bd2 26. Rxd2 Bb7 27. Qd1 Bg2+ 28. Ke1 Rh3 29. Bxh3 Bf1 30. Bxf1 Ra3 31. Nxa3+ Ka1 32. Nb1

What's the best tournament at the end of year?

現在、年末に開催される海外大会を探しています。FIDEのトーナメントスケジュールで、いくつかヨーロッパの大会情報をチェックしましたが、先日のチーム選手権で阿部さんから別の選択肢を提案されました。それが North American Open at Las Vegas です。

スケジュールは12月26日-29日の7Rで、レイティング別にOpen からUnder 1250まで、7つのセクションが設けられています。まだ確定ではありませんが、この大会が今のところ最有力候補であり、参加希望者は私と吉村さん、佐野さんの3名となっています。

最終的にどの大会にするかは半月以内に決めようと思いますので、他にこんな大会がある、自分も参加してみたいという方は私まで連絡を下さい。よろしくお願い致します。

2011/09/26

Play Like Sveshnikov - SS part8 -

- Black plays 12...Ne7 -

1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 e5 6. Ndb5 d6 7. Bg5 a6 8. Na3 b5 9. Nd5 Be7 10. Bxf6 Bxf6 11. c3 Bg5 12. Nc2 Ne7!?

これが私が愛用していたSveshnikov の一変化です。アイディアは単純で、黒は早々にd5 のナイトを消しにいきます。白はダブルビショップを放棄してまで手に入れたアウトポストのナイトを、簡単に手放すわけにはいきません。次の白の手は、試合の流れを大きく左右します。

13. h4

白としては勝負に行く一手です。このポーンは将来的にターゲットになる可能性がありますが、一方で黒がビショップをBg5-Bd8 と使い直すチャンスを消す狙いがあります。次回から扱うラインとゲームは、以下の通りです。

a) 13. Nxe7?! Qxe7 14. Bd3 O-O 15. O-O Bb7= Hasan, M - Kojima, S / DATMO 2007 / 0-1
b) 13. Nce3?! O-O 14. Bd3 Bxe3 15. Nxe3 Bb7 16. O-O d5!= Sakai, H - Kojima, S / Japan Chess Championship 2008 / 0-1 (Game5)
c) 13. Ncb4 O-O 14. a4 bxa4 15. Qxa4 Nxd5 16. Nxd5 Bd7 17. Qa5!? / Teerapabpaisit, W - Kojima, S / BCCO 2008 / 1/2-1/2 (Game6)
d) 13. Ncb4 O-O 14. a4 bxa4 15. Rxa4 a5 16. Nxe7+ Qxe7 17. Nd5 Qb7 18. b3 Bd7!? / Lengyel, B - Kojima, S / FSIM March 2010 / 0-1 (Game7)

13...Bh6 14. a4 bxa4 15. Ncb4

e3 のマスはビショップで抑えられているため、b4 を利用してセンターのナイトをサポートするのが正しいアイディアです。

15... O-O 16. Qxa4 a5 17. Bb5 Nxd5 18. Nxd5 Be6 19. Bc6 Rb8 20. b4 axb4 21. cxb4 Bxd5 22. Bxd5

13.h4 のラインでは代表的なポジションです。ナイトと入れ替わりでd5 を抑えたビショップは強力ですが、h4 とb4 が弱点になっています。

22...Kh8!?


クイーンをd8 にキープしたままにすることで、白のキャスリングを妨害します。b4 をすぐ狙いに行く手もありえます。

22... Qb6 23. O-O Qxb4 24. Qd7 Kh8 25. Ra6 / Sano, T - Kojima, S / Nagoya Open 2008 / 0-1

23. b5 Qb6 24. Bc6 Be3! 25. Ra2


このビショップを取れば、パペチュアルチェックでのドローに落ち着きます。
25.fxe3 Qxe3+ 26.Kd1 Qd3+ 27.Ke1 Qe3+ 28.Kd1=
Analysis Diagram

25...Bd4 26. Qc2 Qd8!= Ganguly, S - Zhou W / Asian Continental 2009 / 1/2-1/2


古いデータベースを見ていたところ、このラインを研究した記録が出ていたのでご紹介しました。次回からは再びゲームの解説に戻ります。

2011/09/25

CHESS LESSONS - solution -

2日前の記事の解答を発表します。こちらのブログで4名、facebook で1名、メールで1名、計6名からコメントをいただきました。皆さん、ありがとうございます。当初はコメント欄で正解発表を済ますつもりでしたが、局面図をも入れたほうが分かりやすいので、一つの記事にして公開します。まずはこちらから。

Polugaevsky, L - Biyiasas, P, Petropolis 1973

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. Nc3 c6 5. e3 Nbd7 6. Bd3 dxc4 7. Bxc4 b5 8. Bd3 a6 9. e4 c5 10. d5 e5 11. b3 Bd6 12. O-O O-O 13. Re1 Rb8

14. Bf1! (1 point)


a2-a4の準備をします。いきなりの14.a4? には、14...c4! 15.bxc4 b4 16.Ne2 Nc5 で黒の反撃があります。

14...Re8 15. a4 b4 16. Nb1 Nb6 17. Nbd2+/- (2 points) Re7 18. Bb2 Ne8 19. Rc1 f6 20. a5 Na8 21. Nc4


このようにナイトをc4 に切り替えれば、間違いなくPositional Advantage が白にあると判断できます。この問題で難しいのは、最初から14.a4 で大丈夫だと勘違いしてしまいがちな点だと思います。かくいう私も、この間違いにより不正解しでした。そしてもう一つの解答は、以下の通りです。


RounVan Baarle, C - Rodriguez, R, Amsterdam 1975

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. Bb5+ Bd7 4. Bxd7+ Qxd7 5. c4 e5 6. d3 Nc6 7. Nc3 g6 8. Nd5 Bg7 9. O-O Nge7 10. Bg5 O-O

11. Nxe7+ (1 point) Nxe7 12. Bxe7 Qxe7 13. Nd2! f5 14. Nb1(2 points)


この問題は意見の分かれるところだと思いますが、ピースを2枚交換し、f3 のナイトをd5 へ切り替える、というアイディアが正解でした。アウトポストのナイトは、ダイアゴナルを自分のポーンで止めてしまったビショップよりも強い、というのは私の好きなテーマの一つです。個人的には、12.Bxe7 に好手のマークを付けたいです。

そして皆さんもすでにお気づきの通り、Chess Lessons に出てくる問題の解答には、ポイントとなる最初のアイディアに1点、次のアイディアに2点が与えられています。パラパラとページをめくると、一つのアイディアに3点のところもありました。これは勘で初手だけを当てていてはダメで、きちんとPositional Play が理解できているかをチェックするためのものでしょう。皆さんは如何でしたか?

この本ははっきり言って、やや難易度が高いです。私でも6問解いて正解が1問、というセクションもあります。ですが、今回の記事を読んで、こういったPositional Play を鍛えたい!と思われた方には、是非購入をお勧めします。逆にTactics を好きな方には、本書は物足りなく感じられるでしょう。

2011/09/23

CHESS LESSONS


7月にアメリカで購入した本の一冊です。Positional Play のトレーニングに適した本はないかと、チェスショップを探している際に見つけました。本書はGM Vladimir Popov が、Kosintseva 姉妹をどのように鍛えたかという話が多く盛り込まれています。各章は15P程と短く、実戦の解説+問題という構成です。章立ては以下の通り。

Chapter 1 - Errors Due to Lack of Knowledge
Chapter 2 - Evaluating the Position
Chapter 3 - Planning
Chapter 4 - Piece Play
Chapter 5 - Pawn Play
Chapter 6 - Co-ordination of Piece and Pawn
Chapter 7 - Arranging and Altering the Pawn Structure
Chapter 8 - Exchanging
Chapter 9 - Transition to the Endgame
Chapter 10 - Asymmetrical Exchange
Chapter 11 - Prophylaxis
Chapter 12 - Monitoring Counter-Threats
Chapter 13 - Too Much Calculation
Chapter 14 - Calculation Neglected or Cut Short
Chapter 15 - Spotting Aggressive Sorties
Chapter 16 - Detecting Ideas
Chapter 17 - Blow and Counter-Blow
Chapter 18 - Obvious Moves and Reflex Answers
Chapter 19 - Deep Calculation
Chapter 20 - Enterprise
Chapter 21 - Hard Work Pays Off!
Appendix - Example from Classic Games

いくつか面白かった問題を載せておきますので、答えが分かった方はコメント欄にご自由にどうぞ。ちなみに私は、上のポジションは不正解、下のポジションは正解でした。
White to move

White to move

2011/09/22

Play Like Sveshnikov - SS part7 -

- 9.Nd5 Introduction -



それではいよいよ今回から、最も中心的なラインである7.Bg5 - 9.Nd5 のラインに入っていこうと思います。

1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 e5 6. Ndb5 d6 7. Bg5!


part1 のIntroduction でも書いたとおり、現在はこの手がベストだと考えられています。
白はf6 のナイトを消すことで、d5 のマスを長期的に支配します。

7...a6 8. Na3 b5 9. Nd5 Be7 10. Bxf6 Bxf6 11. c3

これがSveshnikov のメインラインの、基礎的なポジションになります。
ここからいくつが分岐があり、このポジションから黒がどんな2手を選択するかがポイントです。
まずは最も良く指されるメイン中のメインから、手のアイディアを見て行きましょう。

- Black plays 0-0 and Bg5 -

11... O-O 12. Nc2


白は端にいるナイトをセンターに戻すと同時に、aポーンを突いて黒が伸ばしたクイーンサイドのポーンを崩す準備をします。

12...Bg5

まずはキャスリングと...Bg5 の組み合わせからです。
黒の...Bg5 はSveshnikov では非常によく見られる手であり、黒マスビショップをアクティブにする狙いがあります。
黒はダブルビショップを保持しても良いですし、Nce3 とd5 をサポートしに来た白のナイトを取ってしまっても良いでしょう。

13. a4!

こちらは白にとって戦略的にとても大切な手です。
黒が早くに伸ばしたbポーンを崩すことにより、ビショップをc4 のマスで使えるようにします。
13.Be2?! も指されないことはないですが、13.a4 に比べれば働きが弱いことは明らかです。
また13.a4 としたことで、黒のaポーンが孤立し、弱点になる点にも注目です。

13...bxa4 14. Rxa4 a5 15. Bc4 Rb8!


基本通り、ルークは開いたオープンファイルへ回します。
このようなbポーンへのカウンターは、Sveshnikov ではよく見られる黒のアイディアです。

16. b3 Kh8!

e4 にポーンが残っている形でも、黒はf5 を突きにいきます。
e4 のポーンがなくなることでd5 のマスの支配を弱め、白マスビショップとf8 のルークをアクティブにする狙いです。

17. O-O f5 18. exf5 Bxf5


fファイルが開く典型的なSveshnikov ポジションになりました。
白黒互いに主張する点があり、バランスが取れていると言えるでしょう。

19. Nce3 Bg6 20. Re1= Anand, V - Kramnik, V / Corus A 2005 / 1/2-1/2


細かい解説は省きましたが、黒の12...Bg5 や、白の13.a4 という手のアイディアを、
ひとます理解していただければOKです。これらの手は、他のラインでもしばしば見られます。
それでは次に、黒が白の狙いを防ごうと少し捻ったアイディアのラインを見てみましょう。

- Black plays 0-0 and Rb8 -



11... O-O 12. Nc2 Rb8!?

次はキャスリングと...Rb8 の組み合わせです。bファイルが開く前にルークをbファイルに回す狙いは、白のa4 を牽制することです。
つまりは「a4と突くならば、...bxa4 から ...Rxb2 でポーンを取ってしまうぞ」ということです。
こうなると白はまた違ったアイディアを考える必要があります。13.Be2?! では面白くないのは、先述の通りです。

13. h4!

これがメインとされる白のアイディアです。
白はa4 を止められた代わりに13...Bg5 を防ぎ、黒がビショップをアクティブにすることを妨害します。

13...Be7


黒もまた、先程のラインとは違ったピースの組み方を考える必要があります。
このビショップはg5 で使えない代わりに、もう一つの理想的なマスを目指します。
ちなみに13...Bxh4?? 14.Qh5 は当然ダメです。

14. Nce3 Be6 15. Qf3 Qd7!

ビショップをf6 から退いたことと、ルークをb8 回したことが、この手を可能にします。
Nxf6+ - gxf6 はポーンストラクチャーが乱れ、a8 にルークがいたままでは、Nd5-Nb6 がナイトフォークになります。

16. Rd1 Bd8!


これがクイーンをd7 に上げた狙いです。黒マスビショップはチャンスを見てb6 に移動します。
b6 は黒のビショップにとって、白のキングに近いf2 をアタックする良いマスであり、g5 と同様にSveshnikov ではよく利用されます。
f8-e7-f6-e7-d8-b6 の大移動です。

17. Bd3 Ne7 18. Bc2 b4 ⇆ Karjakin, S - Eljanov, P / EU-ch 6th playoff 2005 /1-0


黒はd5 のナイトを消す準備をしつつ、今度はbファイルを自ら開きにいってカウンターを作ります。
ここでは白のh4 や、黒の...Bd8 といったアイディアを覚えておいてください。

- Black plays Rb8 and Bg5 -

11...Rb8 12. Nc2 Bg5!?

次はすでにご紹介したアイディアのミックスです。
a4 は牽制したいけど、ビショップはg5 で使いたいと考えたとき、このような手の組み合わせになります。
これはかなりうまくいきそうに見えますが、白は黒キングがまだセンターにいることを見て、複雑なポジションを作りにいきます。

13. a4!


11...Rb8 を指されていても、あえてaファイルをこじ開けます!

13...bxa4 14. Ncb4!

b2 を落とし、ルークが7段目に入ってくる展開は望ましくないため、ナイトでbファイルに蓋をします。

14...Nxb4 15. Nxb4


ここはあえてポーンストラクチャーを乱す、15.cxb4!? も考えられます。
ちょっと手順は違いますが、有名な以下のゲームを貼っておきます。

11... Bg5 12. Nc2 Rb8 13. a4 bxa4 14. Ncb4 Bd7 15. Bxa6 Nxb4 16. cxb4 O-O 17. O-O Bc6 18. Rxa4 Bxa4 19. Qxa4 Qe8 20. Qxe8 Rfxe8 21. b5 f5 22. b6 ∞ Anand, V - Van Wely, L / Corus A 2006 / 1-0

15...Bd7 16. Bxa6 Qa5!

d6 のポーンをわざと取らせてしまいます。狙いは...Rxb4 - Qxa6 です。

17. Qxd6 Rb6 18. Qd3 Be7 19. Nd5 Rxb2 20. O-O


20.Nxe7 Kxe7 は強力ないナイトを消し、h8 のルークを試合に参加させるチャンスを与えてしまうだけです。

20...Qc5 21. Rab1 Rxb1 22. Rxb1 O-O 23. Bb5 Be8!? 24. Bxe8 Rxe8=
Leko, P - Illescas Cordoba, M / Madrid Magistral 7th 1998 / 1/2-1/2


これら3つのSveshnikov のメインラインを抑えておけば、基本的な白黒のアイディアを理解することができるでしょう。
どの変化も黒で指して、満足に勝負ができると私は考えています。
しかし、ここまで書いておきながら、実は私は公式戦でこれらを指したことが全くありません。
私が使っていたのは、11...Bg5 12.Nc2 Ne7!? という一風変わった変化です。
2006年頃までは上記のラインに比べかなりマイナーでしたが、Shirov, Carlsen といった、
2700オーバーのトッププレーヤーが使い出したことを受け、徐々に人気が高まってきました。
このIntroduction が長くなりすぎてしまったため、12...Ne7 は次回の記事から解説を始めます。

2011/09/21

Play Like Sveshnikov - SS part6 -


- White plays 7.Be3 -

Game4


IM Szalanczy, E (HUN,2280) - FM Kojima, S (JPN,2312)
FSIM March 2010 (10)


この試合は吉祥寺チェスクラブでの、エンドゲームをテーマとしたレクチャーで扱いました。
試合全体の公開は、初めてだと思います。

1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 e5 6. Ndb5 d6 7. Be3!?

前回の7.a4!? に引き続き、これもまた珍しい手です。白の狙いはNc3-Nd5 からのBe3-Bb6 だと考えられます。

7...a6 8. Na3 Rb8!?


うろ覚えでしたが、The Easiest Sicilian で勧められている手です。b5を突く前に、白からのBb6を警戒しておきます。

9. Nab1!?


c3に出てd5をサポートするというアイディアは理解できますが、チェスのセオリーから考えれば驚くべき一手です。
このナイトは9手中5手動かされ、g1からb1へと移動しました。
この大会中、パソコンが盗まれる事件が発生したため、この試合のプリパレーションは十分にできませんでしたが、
後日調べてみると彼の得意なラインでした。

9...Be6 10. Nd5!? Bxd5 11. exd5 Qa5+ 12. Nc3 Ne7 13. Bc4 b5 14. Bb3 Nf5!?

10.Nd5 を指された直後は、14...b4 でd5のポーンを取ることができると考えました。
しかし、私はb3のビショップの利きが開き、f7がアタックされることを気にして、悩んだ挙句に本譜を選択しました。

15. O-O Be7 16. Bg5 O-O 17. Bxf6 Bxf6 18. Ne4 Be7 19. c3

かなりユニークな手順でしたが、Sveshnikov らしいポーンストラクチャーになってきました。
Game2,3 でも見てきた通り、黒はポーンをf5 に進めたい形です。

19...Nh4!


f5 を突く準備として、ナイトをf5から動かします。
ここでe5,f5 にポーンを並べることができれば、白の強いナイトを追い返せるうえ、
c2に退こうとしているビショップの働きを抑えることができます。

20. g3 Ng6 21. Qh5 f5 22. Ng5 Bxg5 23. Qxg5 e4=/+

試合中、この辺りで黒の優勢を確信しました。
センターに向かおうとするナイトは、白の抑え込まれたビショップに比べ、パワフルであることは明らかです。

24. f4 b4


e5 のマスを抑えるために白はf4 にポーンを進めましたが、黒はこれをアンパッサンで取るべきか悩むところです。
私はeポーンをパスポーンとして残すために取りませんでしたが、24...exf3 25.Rxf3 Ne5 でも確かに黒が良さそうです。

25. Rac1 Rbe8 26. Qh5 Kh8 27. Rfe1 Ne7 28. Qd1 Rc8

最初はeポーンをガンガン進めようとeファイルにルークを回しましたが、c3を狙うほうが有効であると気付き、ルークを使いなおします。

29. Qd4 bxc3 30. Rxc3 Rxc3 31. bxc3 Rc8 32. Re3 Qc5!

プロテクテッドパスポーンとグッドナイト、c3の弱点の3つを見て、クイーンを交換したエンドゲームで勝てると判断しました。

33. Qxc5 Rxc5 34. c4 Nc8?!


次の白の手を見落としており、この手は無駄になってしまいました。34...a5 を先に指しておくべきです。

35. g4 g6 36. gxf5 gxf5 37. Rg3 a5 38. Rg5 Ne7 39. a4

黒は次に39...a4 からaポーンとcポーンを交換すれば、うまくeポーンを進めつつ勝てるでしょう。
それを止めるための39.a4 でしたが、b3のビショップ自体が浮いてしまうため、結局ルークの侵入を許してしまいます。

39...Rc8! 40. Kf2 Rb8 41. Bd1 Rb2+ 42. Be2 Ra2

これでポーンアップとなり、さらには二つ目のパスポーンができます。後は丁寧に指していくだけです。

43. h4 h6 44. Rg1 Rxa4 45. h5 Rb4 46. Ra1 a4 47. Ra3 Nc8!


34手目で失敗した構想に再びチャレンジします。
このナイトはb6 に置いてc4 を狙うか、c5 に置いてe,aポーンのサポートをすれば、もはや怖いものなしです。

48. Rg3 Rb3 49. Rg6 a3!

白にhファイルのパスポーンを与えても危険はないため、ポーンを返す間にaポーンを進めます。

50. Rxh6+ Kg7 51. Rg6+ Kh7 52. Rg1 a2 53. Ra1 Rb2!


通常、ルークはパスポーンを後ろからサポートするのがベストとされますが、
ここでは横利きも使い、白のキングを牽制しておくほうがベターです。
あとはナイトがパスポーンのサポートに参加すれば、ゲーム終了です。

54. Ke3 Nb6 55. Bf1 Na4 56. Bh3 Rb3+ 0-1

最後はどうしようもありませんが、ビショップが落ちたため、白はリザインしました。
もちろんこのミスがなくとも、Na4-Nc5-Nb3 で終わりです。
ここまで長々とサイドラインをご紹介してきましたが、次回からメインの7.Bg5 に入ります。

2011/09/20

チーム選手権 Games and Comments

今日は昨日書いたとおり、チーム選手権の6試合を振り返ります。詳しく解説を書くのは最もうまく指せたR2のみとし、あとは棋譜と簡単なコメントのみにしておきます。

R1 小島慎也(慶應藤沢、2369)- 浜根謙一(吉祥寺、1799)1-0 Anti Dutch

1. d4 f5 2. Nc3 e6 3. e4 d5 4. exf5 exf5 5. Qe2+ Be7 6. Bg5 c6 7. O-O-O Kf7 8. Bf4 Nf6 9. Nf3 Re8 10. Ng5+ Kf8 11. Qe6 Bxe6 12. Nxe6+ Kf7 13. Nxd8+ Bxd8 14. f3 Na6 15. Bxa6 bxa6 16. Na4 Nd7 17. Rhe1 Bf6 18. c3 g5 19. Bd2 f4 20. Kc2 Kg6 21. Kd3 Kf5 22. Rxe8 Rxe8 23. Re1 Rxe1 24. Bxe1 h5 25. Nc5 Nxc5+ 26. dxc5 g4 27. Bf2 h4 28. h3 gxf3 29. gxf3 Ke6 30. Bd4 Be7 31. c4 Bf8 32. Kc3 Be7 33. b4 Bg5 34. Bg7 dxc4 35. Kxc4 Bf6 36. Bxf6 Kxf6 37. Kd4 Kf5 38. a3 a5 39. bxa5 a6 40. a4 Kf6 41. Ke4 Ke6 42. Kxf4 Kd5 43. Kf5 Kxc5 44. Ke5 1-0

浜根さんとはレイティング差がありますが、ここ数年は毎年負けがあるため、油断の出来ない相手です。ダッチの奇妙な形で始まった試合は、クイーン交換をした時点でやや白が良いかと思っていましたが、進めてみるとそうでもありませんでした。2つ目のルークを換えた辺りから黒がおかしくし始め、さらには勝ちのポーンエンディングに。最後はちょっと面白い形です。

R2 真鍋浩(松戸A、2034)- 小島慎也(慶應藤沢、2369)0-1 Classical Slav

棋譜と解説は後に回します。

R3 小島慎也(慶應藤沢、2369)- 國府大介(松戸B、1861)1-0 King's Indian Bayonet

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 Bg7 4. e4 d6 5. d4 O-O 6. Be2 Nc6 7. O-O e5 8. d5 Ne7 9. b4 Nh5 10. Re1 f5 11. Ng5 Nf6 12. f3 c6 13. Be3 Bh6 14. h4 f4 15. Bf2 Bxg5 16. hxg5 Nh5 17. c5 Ng3 18. Bc4 Kh8 19. dxc6 Nef5 20. exf5 Qxg5 21. Qxd6 Rxf5 22. Rxe5 Qh5 23. Bd4 1-0

國府さんとは初対戦です。今まで色々試してきましたが、最近はキングズインディアンにはバイオネットを用意しています。13...Bh6 は良いアイディアでしたが、...cxd5 を挟み忘れてしまったせいで、白からのブレイクが早く決まってしまいました。17.c5! 以降は黒が厳しい展開だと思います。

R4 塩見亮(東大OB、2157)- 小島慎也(慶應藤沢、2369)0-1 Caro-Kann Classical

1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Ng3 Bg6 6. h4 h6 7. Nh3 Nf6 8. Nf4 Bh7 9. Bc4 e6 10. O-O Bd6 11. Re1 O-O 12. Ngh5 Bxf4 13. Bxf4 Nxh5 14. Qxh5 Qxd4 15. Bxb8 Raxb8 16. Bb3 Qxb2 17. Rab1 Qf6 18. Re3 Rbd8 19. Rf3 Bg6 20. Qg4 Bf5 21. Qb4 b6 22. Qa4 Rd4 23. Qxa7 Rxh4 24. Rg3 Rh5 25. Rd1 Qh4 26. Kf1 Qh1+ 27. Ke2 Bg4+ 28. Rxg4 Re5+ 29. Kd2 Rd8+ 30. Kc3 Qxd1 0-1

逆転優勝を狙う東大OBチームにとって、悲劇的なゲームだったと言えるでしょう。f4のナイトを間違えて、ビショップで取り返してしまったミスで、すでに勝負ありです。

R5 小島慎也(慶應藤沢、2369)- 南條遼介(東大AA、2347)1/2-1/2 Ducth Classical

1. Nf3 f5 2. d4 e6 3. g3 Nf6 4. Bg2 Be7 5. O-O O-O 6. b3 d6 7. Bb2 Ne4 8. Nbd2 Bf6 9. Ne1 d5 10. f3 Nxd2 11. Qxd2 c5 12. e3 Nc6 13. f4 Bd7 14. Nf3 cxd4 15. exd4 Qb6 16. Rfe1 Rfe8 17. Kh1 Rac8 18. Rac1 a5 19. Red1 Red8 20. Ba3 Be8 21. Bc5 Qc7 22. Re1 b6 23. Ba3 Bf7 24. Bf1 Bh5 25. Ne5 Nxe5 26. fxe5 Bf3+ 27. Bg2 Bxg2+ 28. Kxg2 Be7 29. Bxe7 Qxe7 1/2-1/2

南條くんと久々にダッチのゲームです。少し良いかと思ってサクサク進めていましたが、24.Bf1?! からごっそりピースを交換せざるを得なくなり、そのままドロー。彼からのオファーは少し意外でした。

R6 竹本寛(慶應OB、2102)- 小島慎也(慶應藤沢、2369)1/2-1/2 Caro-Kann Exchange

1. e4 c6 2. d4 d5 3. exd5 cxd5 4. c3 Nc6 5. Bd3 Qc7 6. h3 Nf6 7. Nf3 g6 8. O-O Bf5 9. Re1 Bxd3 10. Qxd3 Bg7 11. Ne5 O-O 12. Bf4 Qb6 13. Nd2 e6 14. Ndf3 Nxe5 15. Bxe5 Rac8 16. Re2 Nd7 17. Bxg7 Kxg7 18. Ne5 Nxe5 19. dxe5 Rc4 20. Rd1 Rfc8 21. Qf3 Qd8 22. g3 Qg5 23. Kf1 h5 24. h4 Qe7 25. Qe3 b5 26. Rd4 b4 27. cxb4 Qxb4 28. Red2 Qb5 29. Kg2 a5 30. b3 Rc3 31. Qe2 Qc5 32. R2d3 Rc1 33. Rd1 Rc2 34. R4d2 Rc3 35. Rd4 Qb6 36. R4d3 R3c5 37. Qf3 Kg8 38. Qf6 Rc3 39. Qf3 Qb4 40. Qe3 Qg4 41. Rxc3 Rxc3 42. Qxc3 Qxd1 43. Qc8+ Kg7 44. Qd8 Qe1 45. Qf6+ Kg8 46. Qd8+ Kh7 47. Qf6 Kg8 1/2-1/2

竹本さんとは中学3年生以来、8年ぶりの対戦です。典型的なカロカンエクスチェンジのポーンストラクチャーで、クイーンサイドを食い破りチャンスを作ったはずでしたが、40...Qg3? で勝利は幻となりました。このエンドゲームを黒がどのように進めるべきか、今度大勢で集まったときに話し合ってみようと思います。

それではベストゲームである真鍋さんとの試合解説にいきましょう。


Manabe, H (2034) - Kojima, S (2369)
Team Championship 2011 (2)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 dxc4 5. a4 Bf5 6. Ne5 Nbd7 7. Nxc4 Qc7!?

アメリカでのGerzhoy 戦以降、Sokolov's Variation (7...Nb6) よりも、こちらがベターなのではないかと思い始めました。
チーム選手権の一週間ほど前から研究を始め、すぐに試す場に恵まれました。

8. g3 e5 9. dxe5 Nxe5 10. Bf4 Nfd7 11. Bg2 g5!?

2000年頃にMorozevich が指したことを機会に、注目が高まってきたラインです。黒は自らポーンストラクチャーを乱しますが、その分、ダイナミックな攻撃のチャンスを得ます。

12. Ne3


最も良く指される手です。
12.Bxe5 Nxe5 13.Qd4 f6 0-0-0 Rd8!? (Aronian,L)
12.Nxe5 gxf4 13.Nxd7 0-0-0!


12...gxf4 13. Nxf5 O-O-O 14. Qc2 Kb8!?


ここは14...Nc5(最も多く指されている)や 14...Ng6Chess Explained, Main line Slav のお勧め)ではなく、あえてマイナーな手を選択しました。将来的なcファイルからの攻撃に備え、キングを避けておきます。

15. a5!?


一長一短あり、判断の難しい手です。a4のマスが活用できるようになりましたが、その代わりにa5自体がターゲットになったり、Nb5 とナイトをサクリファイスる可能性が消えてしまいます。個人的には、ロングキャスリングされるのが最も嫌だったため、その可能性が消える15.a5 は、ありがたい手でした。

16. O-O-O Bb4 17. Na2 Bc5 18. e3 a5 19. Kb1 Bb6 20. Nc3 Nc5 21. Nd4 h6 22. Rh5 Na6 23. Na2 Nc5 24. Nc3 Na6 25. Na2 Nc5 26. Nc3 1/2-1/2 Giri, A - Aronian, L / 73rd Tata Steel GMA

15... a6 16. O-O fxg3 17. hxg3 h5 18. Rfc1 Nf6 19. Ne3?

あまり見たことのない手だったため、少し驚きました。d5にナイトが跳びこもうという狙いですが、h5-h4を警戒してf5にナイトを残しておくのが普通です。15.a5 を生かした19.Ra4 ぐらいが無難だと思います。ここまではほぼ準備どおりだったため、ノータイムで指してきましたが、ここでじっくり時間をかけて考えます。

19... Neg4!?


19... h4 20. Qf5 Ned7 でも黒が優勢だとコンピュータは示しますが、私はなるべくナイトを退きたくありませんでした。そこで先にナイトを跳びこんで交換を狙い、後からhポーンを突く構想を立てます。

20. Nxg4 Nxg4 21. Na4 Bh6!


いつ...Bc5 が指せるかばかり考えていましたが、ナイトがf5から退いたことにより、このマスでビショップが使えることに気がつきました。c1のルークが攻撃されたことよりも、e3のマスに跳びこまれることのほうが不気味です。

22. Rd1 Rdg8!?


h5-h4からhファイルを開いても、e3にナイトなりビショップなりを跳びこませても、黒には強力な攻撃のチャンスがあります。そこでルークは交換せず、盤上に残します。

23. Ra3 Be3!

白のキング周りを崩し、一気に攻め込む強力な一手です。白にはうまいディフェンスがありません。

24. Nc5


単純にf2を落としては勝負にならないようにも見えますが、他の手でもダメです。

24. fxe3 Qxg3 25. Nc5 Nxe3 -+
24. Rxe3 Nxe3 25. fxe3 Qxg3 26. Qe4 Rg4 -+


24... Bxf2+ 25. Kh1 h4 26. Nxa6+ bxa6 27. Rb3+ Ka7 28. Bxc6 hxg3+ 29. Kg2 Rh2+ 30. Kf3 Ne5+ 31. Ke4 Rh4+ 32. Kf5 Rg5+ 33. Kf6 Nxc6 0-1

真鍋さんとしては不本意な試合だったかもしれませんが、マレーシアでなかなか勝ちに恵まれなかった私にとっては、嬉しい快勝でした。

今年のチーム選手権は色々と不備もありましたが、例年通り盛り上がったと思います。いつか慶應日吉チームとも、エキシビジョンマッチを組んでみたいですね。

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