2012/08/31

Istanbul Chess Olympiad 2nd round - Japan vs. Burundi -


イスタンブールオリンピアード二日目は、男子がアフリカのブルンジ、女子がマレーシアとの対戦です。前日同様、14時のバスに乗って会場に向かいます。ちなみに会場まではバスで20分ほど、試合開始は15時です。


会場は一般観戦者用の入り口と、選手用の入り口が分かれています。

余裕を持って会場に着くと、すでに席にはプレーヤーの姿が。対戦相手のブルンジは、初日に1番4番が不戦敗でしたが、遅れてたプレーヤーが到着したんだな、と安心して彼と握手。ところが直後に隣の南條君から衝撃的な言葉が...

「やっぱり2人いないらしいよ」


いや、プレーヤーいるでしょ!目の前に!と反論しようとしましたが、ブルンジの一番ボード席に座っていたのは、別の国のプレーヤーだったそうです。

まぎらわしいわ!!!


そんなわけで、1番4番ボードの私と岩崎さんは不戦勝でした。以下、残りの結果です。


Burundi - Japan 0 : 4


75.1 Ndikumana, Yves 2088 - FM Kojima, Shinya 2282 - - +
75.2 Ntagasigumwami, Deo 0 - CM Nanjo, Ryosuke 2316 0 - 1
75.3 Rwamavubi, Alexis 0 - FM Watanabe, Akira 2278 0 - 1
75.4 Kigari, Daniel 0 - CM Iwasaki, Yudai 2137 - - +

一方で女子は、モルドバから大分格が落ちるマレーシアとの対戦ですが、結果は厳しいものでした。

Japan - Malaysia 0 : 4


43.1 Ishizuka, Mirai 1839 - WFM Azman Hisham, Nur Najiha 1882 0 - 1
43.2 WCM Nakagawa, Emiko 1798 - WCM Azman Hisham, Nur Nabila 1910 0 - 1
43.3 Hasegawa, Emi 0 - WCM Mi Yen, Fong 1885 0 - 1
43.4 Hoshino, Karen 1640 - Johari, Camilia 1778 0 - 1

カレンちゃんのみうまい指し回しを見せましたが、結果がついてこなかったのは残念です。次のラウンドに期待します。


南條くんは途中決め手をいくつか逃したものの、終わってみれば完勝でした。


暁さんの相手は完全に問題外のレベルでした...


トップボードのIvanchuk は終始押していましたが、まさかのブランダーで負け。チームは勝ったものの、すっきりしないでしょう。


個人的に面白いと思ったのは、デンマーク対カザフスタン。結果は2.5-1.5 でカザフスタンの勝利。


インド代表はやはり貫録があります。トルコの若いメンバーを寄せ付けませんでした。

そして次の3R ですが、男子はまた強豪国、北欧のフィンランドを引きました。私はおそらく、4年前に北京で敗れたGM Tomi Nyback との再戦になるでしょう。彼以外もIM ばかりで厳しい当たりですが、上から4人のベストメンバーで、何とかポイントを取ってきたいところです。

そして女子はバルバドスとの対戦。初勝利を誰が挙げるか、楽しみにしています。

2012/08/29

Istanbul Chess Olympiad 1st round - Japan vs. Cuba -


いよいよ、40回目の記念すべきオリンピアードが、トルコのイスタンブールで始まりました!日本の初戦の相手は男子がキューバ、女子がモルドバです。チームと各プレーヤーの結果は以下の通り。

Japan - Cuba 0 : 4



13.1 FM Kojima, Shinya 2282 - GM Dominguez Perez, Leinier 2725 0 - 1
13.2 CM Nanjo, Ryosuke 2316 - GM Bruzon Batista, Lazaro 2711 0 - 1
13.3 Averbukh, Alexander 2211 - GM Quesada Perez, Yuniesky 2626 0 - 1
13.4 CM Iwasaki, Yudai 2137 - IM Bacallao Alonso, Yusnel 2583 0 - 1

Japan - Moldova 0 : 4



39.1 Ishizuka, Mirai 1839 - IM Petrenko, Svetlana 2199 0 - 1
39.2 WCM Nakagawa, Emiko 1798 - WFM Baciu, Diana 2186 0 - 1
39.3 Hasegawa, Emi 0 - WGM Smokina, Karolina 2156 0 - 1
39.4 Kikuchi, Arisa 0 - WGM Partac, Elena 2102 0 - 1

初戦は男女ともにかなり格上との対戦で、全員負けという悲しい結果です。特に私の相手は、アメリカ大陸でも最強クラスのGM Dominguez、世界ランクも24位のプレーヤーでした。12年のチェス人生で、2700台のプレーヤーと公式戦で対戦するのは初めてです。そしてなぜかは分かりませんが、公式HP でもChessBomb でも私のゲームだけ正しく中継されなかったので、こちらのブログで初めて公開します。皆さん騙されないでください、あのTarrasch のゲームは偽物ですよ(笑)

Kojima, S (FM, JPN, 2282) - Dominguez, L (GM, CUB, 2725)
40th Chess Olympiad (1)

1. Nf3 c5 2. c4 Nc6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. g3 e5 6. Nb5 Bb4+ 7. N1c3 d6 8. Bg2!?



今月のFS で唯一負けたWu,C とのゲームでは、8. a3 から1ポーンを捨ててみましたが、お世辞にもオープニングが成功したとは言えませんでした。そこで、Kramnik が昨年指したラインを試してみます。

8... a6 9. Na3 Bxc3+ 10. bxc3 O-O 11. O-O Qc7N


私はGirschuk のチョイスである11...h6 よりも、こちらがロジカルであると感じます。d8-h4 のダイアゴナルを離れることで、ナイトがピンにされるのを避け、b7 を守りながらc4 へプレッシャーを掛けます。

12. Nc2



もしかすると、この一見自然に見えるマヌーバリングが悪かったのかもしれません。12. Bg5!? Ne8 13. Qd2 ならば形勢不明とコンピュータは評価します。

12... Be6 13. Ne3 e4!?


非常に興味深い一手です。g2-b7 のダイアゴナルを止めることで、b7 へのあアタックを消し、安全にc4 を取れるようにします。

14. Ba3 Rfd8 15. Qc2 Ne5 16. Bxe4 Nxe4 17. Qxe4 Nxc4 18. Nxc4 Bxc4=/+



予定通り、異色ビショップにはしてみたものの、黒のほうがほんの少しだけ良いのは否めません。ポーンストラクチャーとビショップの働きに優劣の差があります。

19. Rfd1 d5 20. Qc2 Re8 21. e3


本音を言えば、このマスに黒マスビショップを組み替えたかったので、ここにポーンは進めたくありませんでした。しかし、黒はRe8-Re6、Ra8-Re8 と本譜のように簡単にルークを重ねられるので、このポーンはいずれ突かなければいけません。

21... Re6 22. Rd2 Rae8 23. Rad1 Rh6


黒はルークをeファイルに重ねた後は、一つをキングサイドに振ります。Qc7-Qd7-Qh3 が鬱陶しいので、何とかこれを止めようとしますが、黒はじわじわとポジションを改善し、白が対応に困るようにしていきます。


24. Qf5 Rf6 25. Qc2 Qc8 26. Rd4 Rh6 27. e4?


残り時間1分で指したこの手がダメでした。

27... Rhe6! 28. f3



28. exd5 Re1+ 29. Rxe1 Rxe1+ 30. Kg2 Bf1+ 31. Kf3 Qh3-+ 黒の駒全てに侵入されては、白キングは成す術がありません。もちろん本譜のようにセンターポーンを守ろうとしても、すぐに落ちる運命であることは明らかです。

28... h6 29. Bc1


29. Rxd5 Bxd5 30. Rxd5 Rc6-/+ が生き残るためにはベターでしたが、このポーンストラクチャーではいずれにしろ厳しいでしょう。

29... dxe4 30. fxe4 Qc6 31. Bf4 Rxe4 32. Rxe4 Rxe4 33. Rd8+ Re8 34. Qd2 Qb6+ 0-1



わずかなアドバンテージから、じわじわとポジションを良くしていくレベルの高いチェスを経験させてもらいました。チェスはやはりマテリアルではなく、駒の働きで勝負が決まりますね。


プレーイングゾーンを追い出される前に、最終局面をこっそり撮影


こちらは言わずと知れたハンガリー代表たち!


ロシア対ドミニカはロシアの完封勝利。一昨年私と対戦したMunos もGrischuk に敗れました。


中国代表は3.5-0.5 でのスタートです。


会場内にはチェスショップや、巨大チェスセット、伝統工芸チェスセットなどの展示もありました。

そして二日目の今日は、男子がブルンジ、女子がマレーシアとの対戦です。男子はほとんど四勝しなくてはいけない相手ですし(さらに言えば、昨日の初戦は1番ボード、4番ボードが不戦敗になっています...)、女子も十分にポイントを取るチャンスがあります。初日の鬱憤を吹き飛ばせるような一日にしたいと思います。


2012/08/28

Istanbul Chess Olympiad - Arriving and Opening Ceremony -

二年に一度のチェスオリンピアードに参加するため、初めてのトルコへ。イスタンブールへと、無事に到着しました。まずは慣れ親しんだブダペストを離れ、イスタンブールに到着するまでと、オープニングセレモニーの様子を写真で。


8/27は、6時半に起床して身支度を整え、8時のタクシーでフェリヘジ空港へと向かいます。チェックイン後に空港でホットサンドの朝ごはん。1400フォリントという市内と桁違いの値段に驚きますが、日本円で400円強なので、冷静に考えればそこまで高額という訳ではありませんね。


朝食後、時間があるので空港内をうろうろ。ショップで試食したはちみつは大変美味でした。4カ月いてあまり意識していませんでしたが、実はハンガリーでははちみつも名産なんですね。

この後、出国審査を済ませてゲートに進むと、なんとハンガリー代表のZoltan Almasi、Judit Polgar らの姿が!脳内で会話のシュミレーション(笑)を完了した後、思い切って話しかけてみました。そして、日本代表のメンバーであることや、ハンガリーでチェスの勉強中であることなどを伝えます。ハンガリー代表の2人については、昨年、8月の記事や、9月の記事をご参考下さい。


イスタンブールのアタテュルク空港までは、2時間ほどのフライト。到着後はすぐにオリンピアード専用デスクとスタッフを発見することができ、スムーズに滞在先のホテルまで車で送り届けてもらいました。オリンピアードには150を超える国から1000人を超えるプレーヤー、コーチの選手団が来るため、一つのホテルでは足りるはずがありません。私の滞在先は、ハンガリーチームとは別だったため、ここでAlmasi らとはお別れです。

ホテルに到着すると両親と兄の姿が。2日ほど前からイスタンブールに遊びに来ているそうです。Misha に頼み込み、ちゃっかりオープニングセレモニーに潜り込む許可までもらっていました。


もちろん他の日本代表メンバーとも、久々に顔を合わせます。しかし、あまり感動の再会とはならず、割と皆さん、淡々としていました(笑)女子メンバーたちに軽くレクチャーをした後は、ホテルのレストランで夕飯をいただき、オープニングセレモニーの会場行きのバスが来る時間を待ちます。写真はサラダだけですが、ちゃんとこの後、肉料理も食べています(笑)


オープニングセレモニーの会場は、ホテルに付随した巨大な宴会場のような部屋でした。前回のKhanty-Mansisk Olympiad では、スケート会場でのセレモニーだったため、国によって様々な形式があることを感じます。前方の巨大スクリーンの映像を見つつ、しばし開会を待ちます。


そしていよいよ、オープニングセレモニーの開始です。トルコのお偉いさんやFIDE会長のスピーチなどはさておき、最も長く盛り上がりがあったのは、トルコ国内の自然や遺跡がスクリーンに映し出される中行われた、トルコの伝統舞踊や寸劇です。出演者や衣装を変えて、30分以上やっていたのではないでしょうか。






この後はオリンピアード参加国の国旗入場、スポーツマンシップの宣誓、開会の宣言などがあり、2時間ほどで解散となりました。帰りのバスを待つ間は、各国の知り合いに声を掛けます。オーストラリアのIM Ly Moulthun、ブラジルのGM Mekhitarian、アイルランドのIM Sam Collins など、これまでの海外トーナメントで知り合った各国トップの顔が、オリンピアードでは一同に揃います。この半年で大分痩せたので、私だとすぐに分からなかった人もいたようです(笑)

そして一夜明け、初戦の日本チームの相手はキューバと発表されました!キューバと言えば、元世界チャンピオンCapablanca の祖国で、現在も南米の超強豪国です。私はGM Dominguez (2725) と白で対戦で、過去最強の対戦相手です。日本チームは暁さんが抜け、私、南條くん、Alex、岩崎さんという面子で初戦に臨みます。厳しい戦いになると思いますが、応援よろしくお願いします!

オリンピアードの情報、ペアリング、ゲーム観戦などは以下のリンクからどうぞ。1R の開始まで、あと3時間半です!

Official HP / Chess Results / Chessbomb

2012/08/26

III. Sárkány - Aranytíz 8th and 9th rounds - Satisfied Finish -

この4カ月、ハンガリーでも最も厳しかったトーナメントが終わりました。8、9R の結果とゲームをまとめてお伝えします。


8R の相手は1勝5敗2ドローと沈んでいるハンガリー人が相手です。途中楽に勝てそうなポジションになりましたが、まさかのハンガリー最長ゲームになりました...

Teglas, B (HUN, 2245) - Kojima, S (FM, JPN, 2282)
Ⅲ. Sarkany - Aranytiz International Master Tournament IM (8)

1. d4 d5 2. Bf4 Nf6 3. e3 c5 4. c3 Nc6 5. Nd2 cxd4 6. exd4 Bg4 7. Qb3 Qc8 8. Ngf3 e6



軽くイメージしていた通りのポジションになりました。9.Bd3 ならばCaro-Kann Exchange のメインラインになります。

9. Ne5 Nxe5 10. dxe5 Nd7 11. c4 d4!


11.c4 を指されて少し焦りましたが、冷静に対処できたと思います。d4 のポーンはパスポーンとしての強さが発揮されるか、単独で進み過ぎたポーンとしての弱さが出るか、まだはっきりとは分かりません。しかし、白の白マスビショップが展開されたり、cファイルを開かれてはたまらないので、黒としてはここはポーンを突き越す一手です。

12. Bd3 Nc5 13. Qb5+?!



私は13. Qc2 をメインに考えていました。c8 のクイーンを改善でき、クイーン交換に持ち込めるのは黒にとって、願ったりかなったりです。

13... Qc6 14. Be2 Qxb5 15. cxb5 Bxe2 16. Kxe2 O-O-O


白はc4 のマスを空けましたが、代わりにd5 のコントロールを失います。Rd8-Rd5 からのe5、b5 のアタックには目を向けておく必要があるでしょう。

17. Rac1 Kb8 18. Rhd1 Be7 19. Nc4?!



19. Nf3 d3+ 20. Ke3 ならばイコールか、e5、b5 を突きすぎているために少し黒が指しやすいと思っていました。

19... Rd5!


おそらく彼はこのアイディアを見落としていたか、過小評価していたのでしょう。先に5段目にルークが上がれば、Nd4-Nd6 からd4 のポーンが脅かされることもありません。

20. b6 a6 21. Kf3 g5!


私はこういったポーン突きがあまり得意ではありませんが、ここは自信を持って指せました。f2-f4 を抑えることでe5 のポーンを弱め、さらには上がってきたキングを牽制します。

22. Bd2?!



正直、彼が何を思ってこう指したのか、さっぱり分かりません。22. Bg3 h5 23. h3 が自然な流れでしょう。

22... Nd3 23. Rc2 Rc8!?


大人しくe5 のポーンを貰っておいても良かったのですが、少しアイディアをひねりました。ただ、23... Nxe5+ 24. Nxe5 Rxe5-/+ のほうがシンプルだったと、後に考えることになります。

24. Bxg5 Rxc4!


もちろんこれが、23...Rc8 の狙いです。

25. Rxc4 Nxe5+ 26. Ke2 Nxc4 27. Bxe7 Nxb2 28. Rc1 Na4



これで2ポーンアップになり、パスポーンもあるので楽に勝てるだろうと思っていました。ここまでを読んでの、23...Rc8 (23...Nxe5 を切り捨ててという意味で)でしたが、思いがけずd4 のポーンをアタックされ、ここからおかしな展開にしてしまいます。

29. Kd3 e5?


これでが非常に妙な手で、黒はもっとシンプルにことを進めるべきでした。29... Nxb6! 30. Rc5! (この手が嫌で、29...Nxb6 以外を模索しました。) 30... Rd7 31. Bf6 Nd5! 32. Be5+ Ka7 33. Bxd4 b6 34. Rc4 Nf4+!-/+ これでg2 のポーンが落ち、再び2ポーンアップになるところまでは読めませんでした。

30. f4?!


30. Ke4! Nxb6 31. Bf6+/= ならば、白がやや優勢という恐ろしい評価をコンピュータは降します!確かにe5、d4 がポロポロと落ち、キングの位置も白がベターです...

30... exf4 31. Bf6 Nxb6 32. Bxd4 Nd7 33. Ke4 Ra5



ここから勝つための奮闘が始まります。黒は2ポーンアップとは言え、ダブルポーンが一組あり、キングの位置も悪いので勝つのは容易ではありません。(油断して白キングに侵入されれば、劣勢になる危険性すらあります。)

34. Rc2 Ra4 35. Rd2 Nc5+ 36. Kf5 Ne6 37. Be5+ Kc8 38. Kf6 Re4 39. Bd6 Rc4 40. h4


40. Kxf7 Ng5+ 41. Ke7 Ne4 42. Rb2 Nxd6 43. Kxd6 b5=/+ ならば言うまでもなく、黒にのみチャンスがある展開です。

40... Nc5!?



持ち時間の増える40手目、残り時間1分まで考えてこの手を指し、席を離れました。上記のように、ナイトがe4 へ行くルートはg5だけではありません。これで厄介なビショップを交換し、わずかにチャンスのあるルークエンディングへと突入します。

41. Bxc5 Rxc5 42. Rd4?!


42. Rf2 b5 43. Kxf7 a5 44. Rxf4 のほうが、白がドローにするチャンスが大きいのは明らかです。

42... Rc2 43. a4 Rxg2 44. Rxf4 h5!?



私はこれが勝つための重要な一手だと思ったのですが、コンピュータの評価は違いました。44... Kc7! 45. h5 b5 46. axb5 axb5 47. Kxf7 Rg5-+ で黒勝ちです。よく分かりません(笑)

45. Kxf7


45. Rf5 Rg4 46. Rxh5 Rxa4 47. Rh8+ Kc7 48. h5 Rh4 49. h6 b5 50. Kg7 b4 51. Re8 a5 52. Ra8 Kb6 53. h7 Kb5-+ 2コネクテッドパスポーン対ルークの形勢判断は非常に難しいですが、これならば黒が勝てそうです。私のエンジンも最初はイコールですが、途中で黒勝ちに傾きます。

45... Kc7 46. Rc4+ Kb6 47. Ke6 Rg4!



44...h5 の狙いは、もちろんこのルーク交換です。先にクイーンができ、aポーンが取れるクイーンエンディングは、間違いなく黒に勝ちのチャンスがあります。(45...Kc7 と上がったのは、クイーンを作られた際のチェックを外すため。)

48. Rxg4 hxg4 49. h5 g3 50. h6 g2 51. h7 g1=Q 52. h8=Q Qg4+ 53. Kd6 Qxa4?



ところが、クイーンができて楽に勝てるかと思い、少し白のカウンターを軽視してしまいました。53... Qb4+ 54. Kd5 Qxa4-+ ならば、黒の勝ちは揺るぎありません。試合中、白キングにa1目指して下がられるほうが、パスポーンを進める際に厄介だと思っていましたが、それはパスポーンが1つの場合の話です。a、bファイルにコネクテッドパスポーンがあるクイーンエンディングでは、相手にキングに寄られてもなにも問題ありません。

54. Qb2+! Ka5 55. Qe5+ b5 56. Kc6!


私が予想していたのと逆の方向に白キングが進み始めました!確かにこのように潜りこむほうが、白キングは脅かされにくく、黒もパペチュアルチェックを防ぎながら、パスポーンを進めるのが簡単ではなくなります。

56... Qc4+ 57. Kb7 Qf7+ 58. Kc6 Qg6+ 59. Kb7 Qb6+ 60. Kc8 Qc6+ 61. Kd8?



キングがセンターに戻ってくれるのは、黒にとって好都合です。初志貫徹、61. Kb8 とさらに潜り込むべきでしょう。これで黒が勝てるのか、よく分からなくなってきます。

61... Kb6!


キングがb7 まで戻れば、白からのチェックをうまくかわしながら、パスポーンを進めることができます。後は手数は掛かりますが、単調な作業です。

62. Qd4+ Kb7 63. Qb4 a5 64. Qe7+ Ka6 65. Qe5 b4 66. Ke7 Kb7 67. Qb2 Qc5+ 68. Kd7 Qd5+ 69. Ke7 b3 70. Ke8 a4 71. Ke7 Kb6 72. Qf6+ Ka5 73. Qc3+ Kb5 74. Qh8 Kb4 75. Qb8+ Ka3 76. Qg3 Qe4+ 77. Kd6 Ka2 78. Qf2+ b2 79. Qd2 Kb3 80. Qd1+ Ka3 0-1



3時間ぐらいで終わると思ったゲームが、結局6時間オーバーでした。やはり勝勢の時こそ、丁寧に勝ちの筋を考えなければいけません。続いて最終ラウンド。


帰りが遅くなったことで、久々に夜景を見られたことだけがラッキーでした。

Kojima, S (FM, JPN, 2282) - Berszes, C (IM, HUN, 2378)
Ⅲ. Sarkany - Aranytiz International Master Tournament IM (9)

1. Nf3 d6 2. d4 Nd7 3. e4 e5 4. Bc4 c6 5. O-O Be7 6. dxe5 dxe5 7. Ng5 1/2-1/2



初日にジンジャエールをぶっかけたBerszes とは、開始40分で早々にドロー。IM クラスは最終ラウンド、5試合中4試合が短手数ドローでした。Galyas がLyell にドローにしたのは、個人的に少し驚きです。

最終的な今大会の戦績は4勝2敗3ドロー。Feher Adam に負けたことでノームを逃しましたが(ちなみに、彼は無事にノームを獲得しました。おめでとう!)、それでもレイティングは+20近くで、2300台に復帰することが確定しています。平均レイティング2300台という厳しい当たりのラウンドロビントーナメントで、2つ勝ち越すことができたことは(しかも黒が多くて!)、今後IM ノームを目指すうえでも、オリンピアードに臨むうえでも、多少の自信になりそうです。こう書いておいて、すぐに2200台に転落するのは情けないので、オリンピアードもその後のトーナメントでも、また好調を維持しレイティングを伸ばし続けられたらと思います。

とりあえずは、オリンピアード前のハンガリーでのIM トーナメント8つは、これですべて終了です。目標のIM ノームには到達していませんが、あと何か一つきっかけが掴めれば、という感覚はあります。明後日から始まるイスタンブールオリンピアードも含め、引き続き温かい目で見守っていただければ幸いです。それでは日本代表の皆さん(他の国の友人たちも!)明日の夕方、イスタンブールでお会いしましょう!

2012/08/25

III. Sárkány - Aranytíz 7th round - Fight For A Norm -


7Rは互いにIM ノームがかかった重要な試合でしたが、イコール局面でまさかのブランダーが...

Feher, A (HUN, 2346) - Kojima, S (FM, JPN, 2282)
Ⅲ. Sarkany - Aranytiz International Master Tournament IM (7)

1. e4 e6 2. d4 d5 3. Nc3 Nf6 4. e5 Nfd7 5. f4 c5 6. Nf3 Nc6 7. Be3 Be7 8. Qd2 O-O 9. Be2 b6 10. O-O f5 11. exf6 Nxf6 12. Kh1 Qc7 13. Bb5!?



面白いアイディアだと思います。白は早々にダブルビショップを放棄することで、e5 のアウトポストの支配を強めます。

13... a6 14. Bxc6 Qxc6 15. Rae1 Bd6!


白マスビショップはe6 の守りのため、どちらに出すか保留しておき、先にアウトポストをサポートしておきます。もちろん、f4 にプレッシャーをかける狙いもあります。

16. Bg1 c4!



クイーンサイドを固め、白の黒マスビショップの働きを抑え込みます。黒からはBd6-Bb4、Nf6-Ne4 という狙いが生まれます。

17. a3 Bd7 18. Ne5 Qc7


ひとまず、ここまでは満足な展開です。あとは白のf4-f5 に気をつけつつ、白マスビショップをどうにかして働かせたいところです。

19. Bf2!?



試合中、なるほどと思いました。抑え込んだはずの黒マスビショップが、戦場に戻ってきます。

19... Rae8 20. Bh4 b5 21. Re3 a5 22. Bxf6


この交換により、ダブルナイト対ダブルビショップの構図になります。白マスビショップが働くかどうかが、今後の形勢を左右するでしょう。

22... Rxf6 23. Qe1 Ref8



Nxd7-Nxd5! のタクティクスを避けます。

24. Ne2 Be8 25. g3 Qb6 26. Qd2 b4 27. axb4 Bxb4!?


白マスビショップをいつc2-g6 のダイアゴナルで使えるか探りつつ、クイーンサイドでも手を作るチャンスを欲します。黒はbファイルを開けることで、b2 への将来的なアタックチャンスを作ります。

28. c3 Bd6 29. g4!?



実に積極的な手です。これに対して、かなり時間を使って応手を考えたのですが、最終的にとんでもない手を指してしまいました。指した直後にひどい手だと気付くレベルです。

29... Bg6?


g6 を取られたらどうするか、g5 を突かれたらどうするかばかりをメインに考えており、単純なナイトフォークを見落としていました。これはひどい...

試合後の検討では黒のうまい手が見つからなかったのですが、コンピュータの回答は実にシンプルなものでした。29... Qc7!(b2 にプレッシャーをかけることばかりを考えていたので、このクイーンが戻る手を全く考えていませんでした。) 30. Ref3 Bg6! 31. Ng3 h6=

30. Nd7 Qc7?



動揺してまたおかしな手を指しました。エクスチェンジダウンでも粘るならば、より正確な手が必要です。30... Qb7 31. Nxf6+ Rxf6 32. f5 exf5 33. g5 Rf8 34. Nf4 Bf7 35. Qg2+/=

31. Nxf8 Kxf8 32. g5 Rf7 33. Rxe6 Bf5 34. Re3 Be4+ 35. Kg1 1-0


f4 を取るとクイーン強制交換であることに気づき、潔くリザイン。重要な試合でナーバスになりすぎ、さほど深刻でないポジションで、単純なミスが出るという未熟な内容でした。反省します。

この試合だけでは分かりづらいですが、対戦相手のFeher Adam は非常に強いプレーヤーだと思います。これで4勝3ドローの5.5P でトップタイ、あと2試合をこなしてIM ノームを獲得するでしょう。是非、頑張ってもらいたいと思います。

私はと言えば、このラウンドの負けでIM ノームのチャンスを失ってしまいましたが、ここまで3勝2敗2ドローで単独4位という戦績は、決して悪くない数字のはずです。残り2試合、気力を振り絞って戦い、イスタンブールに向かおうと思います。


昨日は試合前、ハンガリーの保険に加入するために、メトロとトラムを乗り継いで遠出しました。途中駅のチケット売り場には、でかチケットの目印が(笑)


地上までのエスカレーターが長い!ハンガリーのメトロは地下深くを走っています。ドナウ川の地下を走るものもあるので、当然と言えば当然でしょう。


会場は3番メトロ、Arany-Janos の付近です。駅と通りの名前が同じなので、非常に覚えやすいです。

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