2012/11/30

London Chess Classic 2012 - Arriving -


フェリヘジ空港のKUMASAN

まずは無事にロンドンに到着したことをご報告致します。フェリヘジ空港を使うのはイスタンブールに行く時以来ですが、今回はなかなか大変な旅でした... それでは、写真で昨日一日を振り返ります。


日本からの移動と比較し、ヨーロッパ間の移動でまず驚くのは、その航空券の安さです。イスタンブールへ行く便もだいぶ安いものを取りましたが、今回は格安のRYAN AIR で航空券を確保し、ブダペスト、ロンドンの往復費用は15000円くらいです。そして出発直前に経験者に聞いたとおり、通常のゲートではなく、不思議な場所へと案内され...


このようなプレハブ小屋へと案内されました!これも格安航空券ゆえですね。ちなみに荷物を預けると別料金がかかるため、小さめのトランクやキャリーバッグ一つに荷物をまとめ、機内持ち込みにしている人がたくさんいました。


航空券料金を下げるため、サービスも最低限です。噂には聞いていましたが、新聞も有料、ドリンクも有料なのには驚きました(笑)滑走から離陸も1分かからず、本当にこの飛行機大丈夫なのか?とも思いましたが、なんとか無事にロンドンヒースロー空港に到着しました。


ヒースロー空港からは、バスでロンドン市街へ向かいます。ところが、ゲートを降りてまず目についたバス会社でチケットを買ったのはやや失敗で、他にもっと安く、便利な場所に降りるバスがいくつもあったようです。ほかの会社は普通の観光バス(無料wifi付きを謳うバスもありました!)だったのに対し、私の買ったeasy bus はバンでしたし(笑) それでもなんとか、空港からベーカーストリートまで、1時間20分ほどで到着です。


私の予約したホステルはベイズウォーター付近にあり、ベーカーストリートからはロンドンの地下鉄、Tube で移動することになります。路線図とにらめっこしながら、必死にベイズウォーターの場所を確認する私。この時点で詳しい地図も路線図も載っていない今回の相棒、ことりっぷに一抹の不安を覚えます(遅い)。


ところで、ベーカーストリートと言えば、シャーロークホームズファンにはたまらない聖地ですね。私は残念ながらシリーズを一作も読んだことがありませんが、昼間に時間があれば観光に戻ってこようと思います。


ベイズウォーターまでは、何とか無事に到着。ここから5分という表記を信じ、駅員に場所まで聞いて、いざホステルまで最後の道のりを歩き始めます。この時点で私はまだ知りませんでした。まともな地図を持たずに、初めて訪れた地を夜中歩きまわる恐ろしさを...


歩けど歩けど、目的のホステルが見つかりません。そのうち、自分がどこにいるのかも分からなくなってきます。それでもなんとか、ところどころにある地図を見ながら、それらしき建物に到着しました。ところがそれは、同じ系列の別のホテルでした(笑)しかも、そのホテルがあったのはLeinster Square、私の目指すホステルがあるのは、Leinster Terrace です。紛らわしいわ!

結局、ホステルまで5分の道のりのはずが、1時間弱かかりました。きちんと地図を用意しないとダメだと反省。


ちなみにホステルの部屋はこんな感じ。3段ベッドが2つある6人部屋で、相部屋は1人だけのようです。ちなみに1泊1500円で朝食付き。高く感じるか安く感じるかは、人それぞれでしょう。ここは昨夜のみで、今日はケンジントンのまともなホテルに移ります。


ホステルに到着し、今夜はこれ以上何もないだろうと思っていました。ところが荷物を開いて、さらなる自分のミスに気が付きます。ロンドンのコンセントがブダペストと型が違うことを失念しており、パソコンの充電ができなかったのです!礼二さんに連絡して持ってきてもらうことも考えましたが、昨夜のうちに森内さんと連絡が取れなければ、翌日の合流が難しくなります。色々考えた末に、夜の街へと飛び出し、なんとかアダプターをゲットしてきました。この記事が更新できるのも、合うアダプターを置いている店があったおかげです。この日の連絡だけでなく、パソコンが使えないことはチェスプレーヤーにとって大きな痛手ですので、なんとか問題が解決できて一安心ですね。

迷ってホステルに到着できなかったことも、アダプターを忘れたことも、全て自分の準備不足が招いたことです。ブダペスト、ベオグラード、イスタンブールではこれらの問題がなかったため、少し油断気味でした。旅行には慣れていると自分で思っている方でも、海外に出る際は準備が十分か、しっかり確認してください!

そして最後にもう一つ。アダプターを買いに外に出た際に、若者による本物の喧嘩と、彼らを逮捕する警官たちに遭遇しました。喧嘩はともかく、手錠で繋がれて人が連れていかれる場面は、生まれて初めて見ました。巻き込まれずに良かったと心から思うので、海外で夜に一人で出歩く際は(極力出歩かないことが望ましいですが)、皆さんも気をつけて下さいね。

2012/11/29

From Ferihegy Airport

現在、ロンドンに向かうために、ブダペストのフェリヘジ空港に来ています。1時間半後の飛行機で、ロンドンのスタンステッド空港へ飛び、そこからロンドン市街へと向かいます。私にとって初のロンドンなので、とても楽しみです。

今日は雑記として、いくつかの話題をパラパラと書きましょう。まずは少しロンドンの続きを。Twitter でも少し話題になっていましたが、London Chess Classic のエントリーリストを見て、プロ将棋棋士の森内さんが参加することに気付いた方も、ちらほらいると思います。そもそも今回のロンドンの話は、10月に森内さんから声をかけられ、私も参加を決意しました。森内さんにとっては久々の海外トーナメントであり、私も彼と共に大会に参加するのは初めてなので、とても良い勉強ができることを期待しています。森内さんとは今日か明日、現地で合流予定です。

そして先週末には日本でJapan Open が開催されました。不可解なことに、まだ結果詳細が公開されていませんが(笑)、Alex、南條くん、暁さんの3名の順でフィニッシュという話ですね。やはり今年のオリンピアードメンバーに割って入り、上位入賞できるプレーヤーはあまりいなさそうです。

それでも、ドイツ帰りの塩見さんや、今年初の公式戦だった井上さん、イスタンブールで共に戦った石塚さんらは、好成績だったようでなによりです。こちらでレベルの高いゲームばかりをこなしていてなんですが、日本の大会結果をチェックしていると、自分も参加したくなりますね(笑)私の日本国内戦復帰は、来年の百傑か全日本でしょう。それまで、さらに腕を磨いておこうと思います。

それでは、次はロンドンからの更新となります!応援して下さっている皆さんに、良い報告ができよう頑張ります!

2012/11/27

London Chess Classic 2012 - Preparation -


明後日の便でロンドンに向かい、12月1日から始まるロンドンチェスクラシックに参加します。先月、こちらの記事で参加者の呼びかけをしたところ、関西の高橋礼二さんが参加の意思を示してくれました。彼とは2002年のジュニア選手権からの付き合いで、公私ともに(両方チェスですがw)お世話になっています。一緒に海外大会に参加するのは、昨年のカペル、タイに引き続き3回目ですね。礼二さん、今回もよろしくお願いします。

それでは前回の記事にもありましたが、大会の詳細を確認しておきましょう。スケジュールも追加しておきます。

日程: 2012年12月1日~9日

会場: Olympia Conference Centre, London, W14 8UX 

持ち時間:40手90分+30分+初手から1手30秒増加 (Olympiad、FS などと同じ。)

FIDE Open スケジュール:
12/1 (Sat) 14:30~R1
12/2 (Sun) 14:30~R2
12/3 (Mon) 14:30~R3
12/4 (Tue) 16:30~R4
12/5 (Wed) 14:30~R5
12/6 (Thu) 16:30~R6
12/7 (Fri) 14:30~R7
12/8 (Sat) 14:30~R8
12/9 (Mon) 14:30~R9

公式HP:London Chess Classic 2012


エントリーリストを見ると、FIDE Open クラスはここまでで233名がエントリー。私はリスト43です。GM、IM も多くエントリーしているので、IM ノームのチャンスも十分ありそうです。昨年のラスベガス以来となる久々のオープントーナメント、頑張ってきます!


今回の旅のお供。私には可愛すぎるとつっこまれましたが、そんなことないですよね。

2012/11/25

CAISSA 2012 November 11th round - The Latest Anti-Meran -


大会最終日、唯一会場に残ったChopra と最終戦を行います。11歳の彼にとっては、苦しんだ今大会での初白星を目指した試合でしたが、私も2000台にポイントを落とすわけにはいきません。

Kojima, S (FM, JPN, 2339) - Chopra, A (IND, 2051)
CAISSA IM November (11)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 e6 5. e3 Nbd7 6. Qc2 Bd6 7. Bd3



最終戦は、5月のWang Xinyue 戦以来の、オーソドックスなAnti-Meranで勝負です。

7... dxc4 8. Bxc4 b5 9. Bd3 Bb7 10. O-O O-O 11. Rd1 b4!?


トップレベルでは、昨年のPonomariov-Giri で実戦に現れた手。Ponomariov 自身はこの手に好手を付けています。アイディアはc6-c5 をすぐに突き、白マスビショップを早く使えるようにすることです。

12. Na4 c5 13. dxc5 Rc8 14. Qe2 Nxc5 15. Nxc5 Rxc5 16. Bd2 Qa8!?



この手をChopra がノータイムで指したことで、彼も深くオープニングの用意をしてきたことを知りました。ここからAnish Giri の試合を外れますが、この変化はPonomariov がAnnotation として、試合の中に記しています。

17. e4 Rh5 18. Re1 Rd8 19. h3 Bc5 20. Rac1 h6!?


g5 のマスを守りますが、白に次の一手を指させるチャンスを与えることになります。私は26手目のポジションをイメージしたうえで、勝負を仕掛けることにしました。

21. g4!?



h5 のルークは将来的にターゲットになると思い、どこかでこの手を仕掛けるチャンスをうかがっていました。以下、お互いがベストムーブの一本道で、不思議とバランスのとれたポジションへと変化します。

22... Rxh3 22. Rxc5 Rxd3!


黒が戦うためにはこの一手です。一時的にルークダウンになりますが、マテリアルはすぐに取り戻せます。

23. Qxd3 Nxe4 24. Rxe4 Bxe4 25. Rc8+ Qxc8 26. Qxe4



このポジションを私は白がやや指しやすいだろうと思い、21. g4!? を決断しました。コンピュータの評価はほぼイコールですが、2ピースとクイーンサイドポーンマジョリティを持つ白が、実戦的にはチャンスを作りやすいことを確信しています。また、黒は次のKg1-Kg2 からのルークトラップを防がなくてはいけません。

26... Qd8 27. Bxb4 Qd1+ 28. Ne1 h5!


私が見落としていたのはこの一手。これで黒はルークを救い、エンドゲームに持ち込むことができます。

29. g5 Qg4+ 30. Qxg4 hxg4 31. a4!?



ここから白が勝ちを目指すプランを考えます。私は試合中、なるべくaポーンを進めた後、bポーンをぶつける or ナイトで黒のaポーンを狙うぐらいでも、十分に白勝ちのチャンスがあるかと思っていましたが、実際には黒もキングによるブロックが可能です。

31... f6!?


ポーン交換を促すよりも、f7 にマスを作ってキングが上がれること主目的とした手です。白は...fxg5 とポーンを取られてもさほど問題ではないため、ここはf6 のポーンを無視して、自身のピースの位置を改善します。

32. Bc3 Kf7 33. Nc2 Kg6 34. Nd4 e5 35. Nc6 Rh8?



私も正直こう指してくると思っていたので、これが黒劣勢に陥る手だとは予想外でした。35... Kxg5! 36. Nxa7 Kf5 37. a5 Ke6! と指せば、黒キングはクイーンサイドのディフェンスに間に合い、まだ局面はアンクリアーのままです。

36. b4! a6?


この手は白の仕事を簡単にするだけです。36... Rh3 37. Be1! Kxg5 38. Nxa7+/= ならば、黒が手損をしている分、上記の変化よりも白にチャンスがありますが、まだ勝ちは確実ではありません。

37. b5 axb5 38. axb5+-



すでに白のパスポーンは止まらない状態です。キングは間に合わず、Rh8-Rh3-Rb3 に対しては、Bc3-Bb4! で後ろから蓋ができるのがポイントです。

38... Kf7 39. b6 Ke6 40. b7 Kd5 41. b8=Q Rxb8 42. Nxb8 1-0


なぜルークを捨てるところまで進めたのかは分かりませんが、何とか無事に勝利。最終戦の白星で最終戦績を3勝3敗6ドローとしました。対戦相手の平均レイティングは2268 なので、レイティングは多少落ちそうですが、ハンガリーで久々の負け越しフィニッシュを回避でき、とりあえずは一安心といったところです。ブダペストで今大会の反省を行い、4日後にロンドンに向かいます!


アンダンテに帰りついたのは20時過ぎ。この日はショウガ焼きパーティーだったらしいですが、不幸なことに私の分は残されていませんでした。そんな私を救ったのは、寿司を持って降臨した女神。(酔って頭にネクタイ巻いたサラリーマンじゃないですよ。)なんとか生き残りました。

2012/11/24

CAISSA 2012 November 9th and 10th rounds - Caro-Kann Day -

長い長い12試合のトーナメントも、いよいよ7日目。インドのChopra とアメリカのIM Battey に黒を持つ日です。試合は予想通り、両方ともCaro-Kann Defence に。お互いの研究と読みが試されます。

Chopra, A (IND, 2051) - Kojima, S (FM, JPN, 2339)
CAISSA IM November (9)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nd2 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Ng3 Bg6 6. h4 h6 7. Nf3 Nd7 8. h5 Bh7 9. Bd3 Bxd3 10. Qxd3 e6 11. Bd2 Ngf6 12. O-O-O Be7 13. Ne4 Nxe4 14. Qxe4 Nf6 15. Qd3 O-O 16. Kb1 Qb6?!



クイーンがd3 に退き、すぐにg2-g4 と仕掛けるラインは、ここ数年流行の兆しがあります。このポジションでは16... c5 が自然であることは分かっていましたが、自分のお気に入りであるこのクイーンムーブを指さずにはいられませんでした。実際には白のNg3-Ne4 がもっと遅く、g2-g4 がまだ準備できていない状態でなければ、この手はさほど働きません。

17. g4! Nxg4 18. Rdg1 f5 19. Ne5!


19. Qe2 と先にe6 をアタックする手ばかりを考えており、それを無視してナイトが入る手は考えていませんでした!白は邪魔なg4 のナイトをどかし、黒キングへのラインを開きます。

19... Nxf2?


黒はポーンを返してでも、やや不利なポジションを受け入れなければなりませんでした。19... Bf6 20. Nxg4 fxg4 21. Rxg4 Rad8 22. c3 Kh8 23. Rhg1+/=

20. Bxh6?!



クイーンを無視してビショップが跳び込む手はとても強力に見えますが、ベストではありません。ここからは大分、白の不正確な手に助けられることになります。局後のKislik の指摘は、20. Qe3! Ng4 (20... Bf6 21. Nd7 Qxd4 22. Nxf6+ Qxf6 23. Qxf2+- この3ポーンピースは、白のキングサイドアタックが両力な為、黒にチャンスはないでしょう。) 21. Nxg4 fxg4 22. Qxe6+(ここでチェックができ、g4 はルークで取れるのが、20. Qe3! のポイントです。) 22... Rf7 23. Rxg4+-

20... Bf6 21. Qg3?!


これも強力そうに見えてやや不正確です。21. Qc4! Bxe5 22. Qxe6+ Rf7 23. dxe5 Ng4 24. Bxg7! c5 25. Qc4+/- ならば、白は大きなアドバンテージをキープしています。

21... Ng4 22. Nxg4 fxg4 23. Qxg4 Bxd4



23... Qxd4 24. Qxe6+ Rf7 25. Bc1 も考えましたが、白がイニシアチブをキープしているでしょう。

24. Qxe6+?


白キングは危なそうに見えますが、24. b3! Rf7 25. Rd1+/= が白のベスト。Bh6-Bc1 からキングをサポートし、h5-h6 と仕掛ければ、やはり白にチャンスがあります。

24... Rf7 25. Rxg7+?



白がドローを逃がす最後のミス。25. Bc1! Bxg1 26. h6! gxh6 27. Qg6+!(私は試合中、この手を読み落としていました。) 27... Rg7 28. Qe6+ Rf7 29. Qg6+ こうなれば、黒はルークアップですが、パペチュアルチェックを受け入れざるをえません。

25... Kh8!!


この手はChopra にとって予想外だったでしょう。黒は一度キングをかわしておくことで、次に安全にルークを取り、勝ちに十分なマテリアルを手に入れることができます。

26. c3 Bxg7 27. Bxg7+?!


27. Qxf7 Bxh6-/+ でもピースアップなので、順当に黒が勝つと思いますが、ルークがないより勝負はできます。

27... Rxg7 28. Qh6+ Kg8 29. Qe6+ Kh7 30. Qe4+ Kh8-+



これで白のチェックが途切れ、黒の勝ちです。残りはおまけ。

31. Rf1 Qb5 32. c4 Qg5 33. h6 Re7 34. Qd4+ Qe5 35. Qd2 Qe4+ 36. Ka1 Qxc4 37. Qf2 Qe6 38. h7 Rae8 39. a3 b6 40. Qd4+ Qe5 41. Qc4 c5 42. Qg4 Qd4 0-1


勝ちはしたものの、薄氷の勝利でした。2000台相手にこのチェスは、少し危ういですね...続いて午後に行われたBattey とのゲームへ。

Battey, A (IM, USA, 2361) - Kojima, S (FM, JPN, 2339)
CAISSA IM November (10)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5!?



今まで3... c5!? ばかりでしたが、FIDE公式戦では初めて、こちらのラインを試します。

4. Nf3 e6 5. Be2 Nd7 6. O-O Bg6 7. Nbd2 Nh6


ここは様々なセットアップが考えられますが、私が勉強したのはこのようにナイトが端に跳ぶ変化です。これにより、Nf3-Nh4 からビショップが捕まることなく、ナイトをf5 まで運べます。

8. Nb3 Nf5 9. Bd2 Be7 10. c4 O-O!?



10... dxc4 11. Na5 このようにd5 のマスを空けて戦うのが一般的であることは知っていましたが、cファイルを開けさせても大きな問題はないと考え、ポーンは相手から取らせることにします。

11. cxd5 cxd5 12. g4 Nh4 13. Nxh4 Bxh4 14. f4 Be4 15. Bb4 Be7 16. Bc3 f5!?


Kislik からは、16... h6 17. Nd2 Bh7= と指してはどうかと提案されました。ビショップをパッシブに使うか、それともe4 で交換してしまうかは、判断の難しいところでしょう。

17. Nd2 Rc8 18. Nxe4 fxe4 19. f5 Qb6?!



f5 までポーンを伸ばさせたのはミスだったかと思いましたが、コンピュータはそこまで白良しの評価を出しません。19... exf5 20. Qb3 Nb6 21. gxf5 Qd7= ぐらいでイコール評価です。確かにこうして見ると、白のe5、f5 のポーンはさほど脅威的ではなく、むしろf5 が落ちないよう、白は注意しなけれないけません。

20. a4


20. Qb3! Qxb3 21. axb3 a6 22. b4+/= これも試合後、Kislik の指摘です。

20... a5 21. Kh1 Nb8!?


このナイトのマヌーバリングは、白の20. a4 を見た時点で考えていました。弱くなったb4 のマスを目指してナイトを組み替えます。

22. Qd2 Nc6 23. f6!



ところが予想外だったのが、ここからの白のアタックプランです。キングサイドはしばらく問題ないと思っていましたが、Battey は素晴らしいセンスを発揮し、ポーンサクリファイスから攻撃のチャンスをつかみます。

23... gxf6 24. Qh6 Qd8


24... fxe5 25. g5!+/- でも本譜同様、白マスビショップが攻めに参加して黒は厳しい展開となります。

25. g5! fxg5 26. Bg4 Kh8 27. Bxe6 Rc7 28. Rxf8+?



しかし、ここまで良かったはずの白がここで緩手。28. Bxd5!! Rxf1+ 29. Rxf1 Qxd5 30. e6+- ならば、即白勝ちでした。

28... Bxf8 29. Qh3 Nb4


これで多少生き延びましたが、まだ白は1ポーンを補うイニシアチブがあります。黒はずっと攻撃されている、d5 のポーンを何とかしなければいけません。

30. Rf1 Rg7 31. Qf5!



この付近数手は、正直どう改善すれば良かったのか... 白は素晴らしいプランで、再び大きなアドバンテージを獲得します。

31... Be7 32. Bxb4! Bxb4 33. Rc1 Rc7


黒は次のRc1-Rc8 を防がなければいけません。もう一つの選択肢としては、33... e3 34. Qd3 Rc7 35. Qxe3+/- があります。eポーンとgポーンのどちらを捨てるかは、黒としては悩むところですが、白としてはさほど変わらぬプランで勝ちのエンドゲームを手繰り寄せることができます。

34. Rxc7 Qxc7 35. Qxg5 Qg7 36. Qe3!+-



36. Qxg7+? Kxg7 37. Bxd5 Bd2 38. Bxe4 Bc1 であれば、黒にはドローチャンスのあるエンドゲームとなります。本譜のようにクイーンをしばらく残し、キングをセンターに運べば、異色ビショップかつ、シメトリカルなポーンストラクチャーでも、白はd5、e4 のポーンを取って勝つことが可能です。

36... Qf8 37. Kg2 Qd8 38. Qf4 b6 39. Kf1 Be7 40. Qf7 Qf8


時間の増える40手目でクイーン交換を決断。しかし、この異色ビショップエンディングが望みがないものだとはまだ気づいていませんでした。

41. Qxf8+ Bxf8 42. Bxd5 Bh6 43. Ke2!



白勝ちを確実にする重要な一手。黒のBh6-Be3 を防ぎます。43. Bxe4?! Be3 44. d5 Bd4 45. e6 Bc5 ならば、白が勝つのはずっと大変でしょう。

43... Bc1 44. b3 e3 45. Bf3 Kg7 46. h4 Kf8 47. Kd3 h6 48. Ke4 1-0


白はキングをf5 まで進めることで、パスポーンを6段目にならべることができ、そうなれば黒はお手上げです。異色ビショップのエンドゲームはハンガリーでも何回か持ちましたが、このように決着がついたのは初めてです。


ケチケメートでの最後の食事。今夜にはブダペストに戻ります。

2012/11/23

CAISSA 2012 November 7th and 8th rounds - American Masters -

昨日は再び1日2試合、アメリカのIM 2人との対戦です。ここで1.5P でも取れればレイティングが+ になるチャンスもあると思い、厳しいスケジュールながら2試合とも勝負にいくことにします。

Kojima, S (FM, JPN, 2339) - Kislik, E (IM, USA, 2413)
CAISSA IM November (7)

1. Nf3 c5 2. c4 Nc6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 e6 6. g3!?



先月のCAISSA とは手を変えてみます。このラインも何回か実戦での経験があり、定跡には詳しいと思っていたのですが、試合後に聞いた相手の研究は膨大なものでした。

6... Qb6 7. Nb3 Ne5 8. e4 Bb4 9. Qe2 d6 10. f4 Nc6 11. Be3 Bxc3+ 12. bxc3 Qc7 13. Bg2 e5!?


ここで先月のGajek Radslow戦の13... 0-0 から外れます。黒は早めにセンターを固め、白からのブレイクe4-e5 を止めておきます。

14. O-O



ここは14. c5 と突いて、ダブルポーンを解消する唯一のチャンスだと知りつつも、あえて形をこのままで戦うことにしました。このcファイルのダブルポーンは、これまでは極力避けるようにしてきましたが、最近は勉強のために受け入れることにしています。

14... b6 15. f5 h6


白が形の悪さと引き換えに手に入れるのは、将来的なキングサイドのブレイクチャンスです。黒はこの時点でそれを止め、ゆっくりとc4,e4 にプレッシャーをかけていきます。

16. Rfd1 Ba6 17. Bc1 Nd8!



このナイトのマヌーバリングは見落としていました!このナイトはd6 を守りつつ、将来的にはc5 からe4 を狙います。

18. Ba3 Nb7 19. Bf1 O-O 20. Nd2 Rfd8 21. Qe3 Rac8 22. Bb4 Nc5 23. Be2


白はギリギリc4,e4 を守りつつ、g4-g5 の準備を整えます。ポーンストラクチャーは悪いながら、決定的な突破のチャンスを与えなければ、チャンスは巡ってくると信じていました。

23... Bb7 24. Bf3 Qc6 25. g4 Rd7!



これは非常に深い手です。7段目を守ることで、白のキングサイドのブレイクに備えつつ、dファイルにルークを重ねることで、白がBxc5 と取りにくいようにします。

26. h4 Nh7 27. Kf2


白は攻めを焦ってはいけません。27. g5?! hxg5 28. hxg5 f6! から、すぐにナイトが戦場に戻ってくることになります。さらにKg8-Kf8-Ke7, Rc8-Rh8 と指せば、オープンになったhファイルを黒も抑えることが可能です。

27... f6 28. Rab1



黒はa7-a5、Qc6-Qa4 といった狙いがあり、これに対抗する方法を考えます。この手はa7-a5 の後に弱くなったb6 をアタックしておくのと、2段目にあげてb2 を守る狙いがあります。

28... Rcd8 29. Rb2 Ba6 30. Be2 Nf8 31. Rg1


センターからルークが離れることに一抹の不安はありますが、g4-g5 の狙いを多少でも見せておかなければ、ジリ貧だと考えました。

31... Bb7 32. Bf3 a5 33. g5?!



残り時間が3分を切り、ピースを捨ててアタックすることに決めました。実戦的にはこれしかないと思っていましたが、Kislik には試合後、33. Ba3 Qa4 34. Bxc5 dxc5 35. Be2! ならば、黒良しなのは明らかながら、勝てるかどうかは分からないと指摘されました。確かにdファイルを開くことを恐れすぎ、多少劣勢のポジションを受け入れることができなかったのは、私のまだ甘いところです。

33... hxg5 34. hxg5 fxg5 35. Rxg5 axb4 36. cxb4 Na4 37. Rb1 b5!?


この手を見るまで、白のチャンスは十分あると考えていました。Rb1-Rh1,Rg5-Rh5 からhファイルのコントロール、Qe3-Qb3,c4-c5 からb3-g8 ダイアゴナルのコントロールの狙いで、ピースの展開は十分だと思っていたのです。ここでのKislik のディフェンスは、見事というべきものです。まずは黒はQc6-Qb6 からクイーン交換を狙います。

38. Qb3 d5!



さらにポーンを突き捨てて、b3-g8 のダイアゴナルを閉じると同時に、クイーンをキングサイドに振れるようにします。まさに攻防一体といった手です。

39. cxd5 Qc3 では白にチャンスはないと思い、本譜を選びましたが、結局はダメでした。

39. exd5 Qh6! 40. Rbg1


残り2秒で指した手は確かにダメでしたが、試合後にしてきたナイトで守る手でも、本譜と同じアイディアで黒が勝てそうだと指摘されました。40. Ne4 bxc4 41. Qxa4 Bxd5 42. Rh1 Qb6+-+

40... Nh7 41. Ne4 Nxg5 42. Rxg5 bxc4 43. Qxa4 Bxd5 44. Rh5 Qf4 0-1



ここまで1勝2ドローのKislik でしたが、昨日は実力差を見せつけられるようなゲーム内容でした。やはり2400台のIM は強いですね。この敗戦から2時間もせずに、もう一人のアメリカのIM Battey とのゲームを迎えます。

Kojima, S (FM, JPN, 2339) - Battey, A (IM, USA, 2361)
CAISSA IM November (8)

1. Nf3 f5 2. d3 Nc6 3. g3!?



自分でもよくこう指す決断をしたと思います。Battey は私とLiu のゲームを研究して、序盤の用意してきていることは明らかだったので、これを外しにいきます。数試合見ただけの、c4 セットアップで勝負です!

3... Nf6 4. Bg2 g6 5. O-O Bg7 6. c4 e5 7. Nc3 O-O 8. Rb1


こういったEnglish では一般的な手です。黒がキングサイドでアクションを起こす前に、白はクイーンサイドのポーンを伸ばして対抗します。

8... a5 9. a3 d6 10. b4 axb4 11. axb4 h6 12. b5 Ne7 13. c5!?



13.Bb2 から、もう少しゆっくり組むプランもあったっと思いますが、ここでは早々に仕掛けてクイーンサイドの形を決めます。

13... Be6 14. b6 c6 15. Qc2 Qb8 16. cxd6 Qxd6 17. Na4


この後、白がc5 のマスを抑えてポジショナルアドバンテージを得ると考えていましたが、ここから黒の不思議な手により、ポジションはカオスと化します。

17... Nd7 18. Nd2 Qd4!?



自分の目を疑いました。このように侵入してきたクイーンが、果たして生きて帰れるのでしょうか。

19. Nc4 Nd5 20. Ba3!?


このポジションはコンピュータでも評価が目まぐるしく変わり、何がベストかは簡単に判断できません。例えば、20. e3 Qg4 21. h3 Qh5 22. Ba3 Rf7 ならば黒のクイーンは生きており、しかも黒がさほど悪いとは思えなくなります。私は本譜でとりあえずルークをアタックしてから、有効な手を考えようとしました。ところが...

20... e4!?



非常に力強いエクスチェンジサクリファイスです!20... Rfd8?! 21. e3 Qg4 22. h3 Qh5 23. Nd6+/- では、黒は面白くないでしょう。

21. h3!?


エクスチェンジをすぐに取るより、クイーントラップのチャンスを残します。21. dxe4!? Rxa4 22. Qxa4 Nc3 23. Qa7 Bxc4 24. Bxf8 Bxf8! このダブルエクスチェンジサクリファイスでも、黒は強力なダブルビショップにより、十分代償がありそうです。

試合後にKislik が指摘したのは、エクスチェンジ取りを諦め、21. Bb2! exd3 22. exd3 Qg4 23. Bxg7 Kxg7 24. f4+/= と指して、クイーンをプレーに参加させない変化です。な、なるほどぉ。

21... exd3 22. exd3 Qf6 23. Bxf8 Bxf8



白はエクスチェンジアップにこそなりましたが、黒マスが弱く、a4 のナイトは次に跳ぶマスがありません。黒は十分にエクスチェンジを補って戦うことができます。

24. Rfe1 Bf7 25. Kh2 f4 26. Re4 g5 27. Rbe1 Bb4


b4 に来るピースはナイトだと思い込んでいました。仕方なくルークをeファイルから戻します。

28. Rb1 f3 29. Bf1 h5 30. Ne3 Bd6 31. Nc4 Be7 32. Rbe1 Bb4 33. Rb1 Be7 1/2-1/2



最後は向こうからドローオファー。白からはポジションを改善する方法が思い浮かばなかったため、これを受けることにしました。

0.5/2 でしたが、両方とも勝負にいって良かったと思っています。久々にハンガリーでレイティングはマイナスになる可能性が高いですが、これも勉強料です。

そして少しフライング気味ですが、今日の試合結果を。今日は午前中のラウンドで、インドのChopra にひやひやの勝利。久々の勝ちが大変嬉しかったので、昼食は5月以来となる近所のイタリアンへ行ってきました。


スープはトマトに海鮮系のブイヨンをを合わせたもの。


メインはフライドチキン。米を食べるのは実に一週間ぶりです。


デザートはカスタードクリームにチェリー、ここまでついて400円弱とは大変お得です。

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