2013/03/31

第二回電王戦 第二局 - from nicofarre -


今日は六本木のニコファーレで開催された、電王戦の第二局目を見学してきました。ご存じない方のために説明しますと、電王戦は現在開催中の、将棋プログラムとプロ棋士五名によるマッチで、先週から毎週土曜日に一戦ずつ行われています。チェスファンの一部もニコ生で見たであろうイベント会場は、生で見るとまた大迫力でした。写真を多めにレポートさせていただきます。


入口はこんな感じ。ニコファーレは六本木駅から徒歩数分で、大変交通の便の良い会場です。


地下に降りると、今日の対戦者紹介です。先手がponanza、後手が佐藤慎一四段という、二戦目の組み合わせでした。


こちらのサインは、亡くなった米長前会長の物のようですね。


ホールでは対局をしている将棋会館から中継を受け、大盤解説が行われています。解説は野月七段、聞き手は山口女流初段でした。お二人は会場とニコ生の視聴者を飽きさせぬよう、多くのゲストを交えながら、愉快なトークを繰り広げます。私がゲストの中でも一番喜んだのは、ハチワンダイバー(ヤングジャンプで連載中の将棋漫画)作者の、柴田ヨクサルさんと鈴木八段のコンビです。


先手のponanzaサイド。映っているのは、開発者の山本氏です。


後手の佐藤四段サイド。和服で対局に臨んでいます。

写真を見ても分かる通り、このイベントは従来の大盤解説会場とは違い(私は将棋の大盤解説に足を運ぶのは初めてですが)、360度スクリーンによる演出で、こだわった雰囲気作りをしています。今後の将棋界が目指す、新時代のイベント形式の一つとなるでしょうか。

このイベントに今日、足を運んだのは、会場の作りや大盤解説のやり方、番組の流れやトークの仕方を、次回の私たちのイベントの参考にするためです。自身の楽しみのためもあったので、半分仕事、半分遊びですかね。そして感想は、言うまでもなく素晴らしいイベントでした!色々と刺激を受けましたので、私たちもまた、魅力的なチェスイベントを企画していきたいと思います。

そして18時前に会場を去った私は結果をチェックできませんでしたが、どうやら今日の対局はponanza が勝利を収めたようですね。私は将棋初心者ですが、60手目付近で佐藤四段がかなり盛り返していたように見えただけに、残念です。それでも、序盤から熱い対局でした。

ニュースの記事を見ると、現役のプロ棋士が公式の場でコンピュータに敗れるのは初めてとあり、今後、将棋界も慌ただしくなりそうです。来週からの残り3戦も、どのような結果になるか楽しみにしています!

2013/03/28

Saturday Lecture on 4.13


2週間後の土曜日に、久々にチェスセンターでレクチャーを開催します。日本に帰国してからは、初めての公式レクチャーですね。4月からは毎月一度のサタデートーナメントの日に、午前中の時間を使ってレクチャーをやらせてもらう予定です。復帰第一回の内容は、こんな感じにするつもりです。

【日時】 2013年4月13日(土) AM 10:00~12:00
【会場】 チェスセンター(最寄駅:池上駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答
【テーマ】 Tricky Moves
【テーマ詳細】

チェスの試合では、良いか悪いかはさておき、ときに思いがけないような手が跳び出すことがあります。4月最初のレクチャーでは、私のハンガリーでのゲームを紹介しつつ、どういったポジションでそのような手が指され、どのように対処すべきかということを解説しようと思います。皆さんも頭を柔軟にし、相手をあっと言わすような手を指せるようにしましょう。

【参加費】 午後のサタデートーナメント参加者は500円、レクチャーのみは1000円
【参加資格】なし
【対象】 レイティング2000未満

以前、私のレクチャーに参加して下さった皆さんも、初めての方も、多くのご参加をお待ちしています。それでは再来週、チェスセンターでお会いしましょう。

2013/03/27

ハンゲームチェス


磁気絆創膏というのが私のIDです。

実際に人と対峙して指す、いわゆるOTB がやりづらい日本では、ネットでチェスの対戦ができるサイトは重宝されます。現在であれば、ICC、Play Chess、Chess.com あたりが主流だと思いますが、まだ英語も苦手だった10年前、一番お世話になっていたのはYahoo Chess とハンゲームという2つのサイトでした。特にハンゲームのチェスコーナーに入り浸るようになったのは、14歳頃でしょうか。学校の部活でチェスを散々指して帰宅した後は、ハンゲームにログインしてチェスを指すのが日課でした。

そのハンゲームからチェスが消えるという噂を聞きつけ、昨日かなり久々にログインしてみました。いつもは閑散としているチェスコーナーも、この日ばかりは私同様に閉鎖を聞いて駆けつけた古参のメンバーで、多少の賑わいを見せていました。

ハンゲームは私が始めたばかりの頃に比べ、随分とシステムが変わりました。課金によるアイテムや聞いた事のないマイナーなゲームが増え(それでもチェスより人気があるのですが)、それに伴ってチェス人口は徐々に減っていったように思えます。私もだんだんと足が遠のいていき、大学生になる頃にはネットでの対戦自体、ほとんどやらなくなりました。

ハンゲームのチェスには、色が選べない、フィッシャーモードがない、棋譜が記録できないなどなど、本当にチェスのオンライン対戦サイトなのかと疑いたくなる欠点がいくつもありましたが、それでも中学生だった私には色々と楽しい場所でした。同級生の桑田くんや汐口くんともたくさん試合をして腕を磨きましたし、その頃知り合った友人たちと、オフラインでの付き合いも多くあります。

そんなハンゲームのチェスがなくなるというの、やはり寂しいものです。現在の過疎具合から考えれば、仕方のないことだとは思いますが...今後、日本でチェスがより普及し、このような日本語で楽しめるオンラインチェスサイトが、再び誕生することを願っています。もちろん、そのために自分ができることを少しずつこなしていきたいですね。

2013/03/26

The Sicilian Labyrinth


The Sicilian Labyrinth 表紙が素敵なデザインです。

私がこれまで読んできたSicilian Defence の本と言えば、Sveshnikov、Dragon、Anti-Sicilian のラインを扱う、いわゆる定跡書がほとんどでした。そして、その本はいずれも2000年以降に出版された比較的新しい本で、古い本にはこれまでほとんど見向きもしてきませんでした。

そんな私ですが、先日このThe Sicilian Labyrinth なる本を手に入れ、ぱらぱらと読み始めています。(私の手元にあるのは、Vol.2 ですが)出版は1991年で、著者はソ連のマスター、Lyev Polugayevsky、自身の名前をSicilian Defence の中に残す程、Sicilian の研究者として有名な名プレーヤーです。

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 a6 6. Bg5 e6 7. f4 b5!?



Sicilian Najdorf Polugaevsky Variation

The Sicilian Labyrinth Vol.2 では、Sicilian の一般的な白黒の戦略を各章で細かく分けながら、ゲームを交えて解説しており、どんなラインを指すプレーヤーでも勉強できるように書かれています。最近、Najdorf Variation を黒で指そうと考え、どんな本があるかと探していた私にとって、最新のラインを解説した本よりも、こうしたSicilian の基礎から勉強し直せる本が合っているような気がします。特にScheveningen 型などは、古くから多くのマスターが研究し、現在にそれが息づいているわけですしね。

前半の章で扱っているテーマを載せておきますので、興味がある方は是非チェックを。直接中身をご覧になりたい方は、私に声をかけていただければ、大会会場などにお持ちします。そして、Vol.1 をお持ちの方は、是非私に貸して下さい!よろしくおねがいします。

1 Dynamics of the Pawn Structure

2 The Battle for the Central Squares

3 Open Lines

4 Piece Values

5 Strategic Sacrifices

2013/03/24

Memories of Hungary Vol.2 - 初挑戦 -


試合開始を待つ3年前の私 Behind the Scene より

レコとクラムニクのマッチから6年の歳月が流れ、2010年になってようやく、私にもハンガリーに渡る機会が訪れました。そのきっかけは、大学院卒業を間近に控えた馬場さんが、卒業旅行トーナメントとして、フランスのCappelle la Grandeと、ハンガリーのFirst Saturday を選んだことです。それまでも行こうと思えばハンガリーに行くことはできましたが、なかなか一人で行く踏ん切りがつかず、結局はこの時になって、馬場さんに引っ張られる形でハンガリー初挑戦となりました。当時、私は大学3年生、前年にFM のタイトルを獲得したばかりでした。

今思えば、この時はレイティング2300に到達していながら、まだまだ未熟なプレーが多かったですね。(もちろん今でもですが)
そして、公式戦でのラウンドロビンも、IM トーナメントも初めてだった私たち2人にとって、この時のFS は厳しい戦いとなりました。慣れないシステムと土地の上、さらにはチェス界では有名(?)な偽警官事件や、空き巣事件に巻き込まれ、よく10日以上を戦いきったと思います。そんな中で指せた以下のゲームは、2010年の私の公式戦の中でも、文句なくベストゲームに挙げられるはずです。

Kojima,S (FM, JPN, 2312) - Farago, S (IM, HUN, 2256)
First Saturday 2010 March (9)

1. e4 c5 2. c3 Nf6 3. e5 Nd5 4. d4 cxd4 5. Nf3 e6 6. cxd4 Nc6 7. Bc4 d6 8. O-O dxe5 9. dxe5 Be7 10. Qe2 a6 11. Nc3 b5 12. Bd3 Ncb4 13. Nxd5 Nxd5 14. a4 $1 b4 15. Rd1 Bb7 16. Qe4 h5 17. h4 $1 Qb6 18. a5 Qa7 19. Qe2 Bc5 20. Ng5 Ne7 21. Bf4 Bd5 22. Rac1 Nc6 23. Be4! Nd4 24. Qd3 Rd8 25. Rxc5 Qxc5 26. Qxd4 Qxa5



27. Nxe6!+- fxe6


27... Bxe6 28. Bc6+ Ke7 29. Bg5+ f6 30. exf6+ Kf7 31. Qa7+ Kg6 32. Be4+ Bf5 33. Qxg7#

28. Bg6+ Kd7 29. Qa7+ Kc6 30. Rc1+ 1-0


このゲームで7R~9R まで3連勝となり、意気揚々とホテルに帰った私を、パソコンと携帯が消えているという、空き巣事件が待ち構えていたのでした(笑)

この時のFirst Saturday では、私の戦績は5勝4敗2ドローで、レイティングも少し下げてしまいました。それでも、憧れの地ハンガリーで初めてプレーすることができ、IM トーナメントの仕組みも何となく理解できたので、遠く東欧の地まで足を運んだ甲斐は間違いなくありました。事件に巻き込まれたことから、「もう二度とハンガリーには来ない!」と宣言した馬場さんとは違い、私はまた必ず、この地に戻ってくることを誓ったのです。

ちなみにブダペストの日本人宿、アンダンテを知ったのもこの頃です。次回はアンダンテとそこで出会った人たちについて、もう少し詳しくお伝えしようと思います。

Vol.3 に続く

2013/03/21

朝霞チェス大会 - Endgame Challenge -


会場に現れたチェスチョコ!参加者の手作りです。

昨日、3/20 は朝霞チェスクラブ主催の大会に久々に参加してきました。朝霞は近年足が遠のいており、例会に顔を出す機会は時々ありましたが、大会に参加するのは高校生以来かもしれません。前日に日付が変わるまで飲んでいたので、頭の切れと全体の結果はイマイチでしたが、3R、4R で面白いエンドゲームが現れたため、今日はそちらをご紹介しようと思います。

Nanjo, R - Kojima, S
Asaka 2013 (3)

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 a6 6. Be3 Ng4 7. Bc1 Nf6 8. Be3 Ng4 9. Bc1 Nc6 10. Be2 Qb6 11. Bxg4 Qxd4 12. Be3 Qxd1+ 13. Bxd1 Be6 14. Be2 g6 15. O-O-O Bg7 16. Nd5 Rc8 17. Kb1 O-O 18. Rhe1 Rfe8 19. f4 b5 20. Bf3 Kf8 21. g4 Na5 22. Nb6 Rc7 23. f5 Bd7 24. e5 $5 Bxe5 25. Bh6+ Bg7 26. Nxd7+ Rxd7 27. Bxg7+ Kxg7 28. b4 Nc4 29. Bc6 Red8 30. Bxd7 Rxd7



南條くんはエクスチェンジを取ってきましたが、その代わりにキングの周りとc4 のマスを弱めています。黒は強力なナイトと将来的にセンターにパスポーンを作れるチャンスを持っているため、駒損していても十分に指せると確信していました。

31. Rd5 Rc7 32. Re4 Kf6! 33. h4 e6 34. g5+ Ke7 35. f6+ Kd7 36. Rd3 e5!


このようにe6 にマスを作ってキングが上がるプランを、南條くんは見落としていたそうです。パスポーンの進め会いが勝負の鍵を握るこのようなエンドゲームでは、当然キングも積極的にプレーに参加しますよ!

37. h5 Ke6 38. hxg6 hxg6 39. Rh4 d5?!



エクスチェンジアップしている白は、基本通りにオープンファイルを作り、ルークをアクティブに使います。それに対してポーンを突き進めるのが正しい反撃だと思っていましたが、先にキングを活用すべきでした。39... Kf5! からキングサイドのポーンを狙えば、白はルークでのプレーが制限されることになります。

40. Rh8 Nd6 41. Ra8 e4 42. Ra3 Rc4?


a6 が守れなくなることを読み落としており、動揺からミスが出てしまいました。b4 のポーンにはさして価値はなく、ルークを悪い場所に手数をかけて運ぶ結果になってしまいます。42... Ke5 43. R3xa6 e3! やはりキングをアクティブにしたうえで、肝心のパスポーンを進めれば、勝負はまだまだ分かりませんでした。

43. R3xa6 Rxb4+ 44. Kc1 Ke5 45. R8a7!+-



なるほど、うまい手です。黒はd6 にナイトをキープすることができず、fファイルに生まれた白のパスポーンは、早々に勝負を決めるファクターとなります。

45... Nc4 46. Rxf7 Kd4 47. Re7 Kc3 48. f7 Rb2 49. f8=Q Rxc2+ 50. Kd1 e3 51. Ra3+ 1-0


エクスチェンジを切る判断は間違っていませんでしたが、ルークを最大限に活用した白と、キングをここ一番でアクティブに使えなかった黒との差で、勝負が分かれました。負けは悔しいですが、とても勉強させてもらったゲームです。続いて、三阪さんとの試合に移りましょう。


Kojima, S - Misaka, S
Asaka 2013 (4)
Position After 53. Bb5


同色ビショップエンディングで、ポーンストラクチャーは白のほうが良いと言えます。私がビショップをぶつけたこのポジションで、黒はどのように指すべきでしょうか。

53... Bxb5!?


ここはポーンエンディングにしても黒はドローにできるのですが、難解な変化から、ただ一つだけ正解のラインを選ばなくてはいけなくなります。もしビショップ交換を拒否してビショップを動かし続ければ、白は決定的なブレイクの機会を得ることはできず、ドローは間違いなかったでしょう。

54. axb5 Kc7 55. Kc4 Kb6 56. h5 f4!



一見、黒がツークツワンクに陥り、白勝ちのポーンエンディングに見えますが、このポーンサクリファイスがまだ残っています!

57. exf4 f5 58. g4!


お返しとばかりに白もポーンを突き捨てます。この手以外では、b5 のポーンを失うだけなので、白が負けることは明らかです。

58... fxg4?



試合中、お互いに時間切迫でミスが出るのは仕方がありません。58... e3! 59. fxe3 fxg4 60. f5! (60. Kd3? g3 61. Ke2 c4 62. bxc4 a4 63. f5 g2 64. Kf2 a3 65. f6 a2-+) 60... g3 61. f6 g2 62. f7 g1=Q 63. f8=Q Qc1+= こうしてクイーンを作り合い、パペチュアルチェックに持ち込むのが、黒のオンリードローチャンスでした。これを短時間で見つけるのは、至難の業でしょう。

59. f5! e3 60. Kd3!


この手で勝てるイメージが掴めたので、58. g4! を指すことができました。(当然それ以外の手がダメなことはすぐ分かるのですが)白の2つのパスポーンが描く正方形は、すでに8段目に到達しているので、白のポーンはプロモーションできることが確定しています。

60... c4+ 61. bxc4?!



この手でも勝てますが、61. Kxe3! からキングをクイーンサイドに戻してパスポーンを止めるほうが、白に一方的にクイーンができる分かりやすい勝ちでした。

61... exf2 62. Ke2 a4 63. f6 f1=Q+ 64. Kxf1 a3 65. f7 a2 66. f8=Q a1=Q+


共にポーン突き捨てからパスポーンを作り、クイーンを作ることに成功しました。しかし、黒はクイーンサイドでもポーンを捨てなくてはいけなかったため、それによってできたb、cファイルのコネクテッドパスポーンが、白の優勢を明らかなものにしています。

67. Kg2 Qb2+? 68. Qf2+ 1-0



ビショップを交換した時点で、私は白勝ち、三阪さんは黒勝ちだと思っていました。しかし、実際にはお互いが最善を尽くせば、ドローになるポジションでした。私たちでも時間がなければ形勢判断を誤りますし、指し手にもミスが出ます。やはりチェスというものは、まだまだ分からないものです。


2013/03/18

全日本百傑戦 2013 Game Analysis


Photo by Chen

今年の百傑のベストゲームはと聞かかれれば、4R の塩見さんとのゲームか6R の中村尚広くんとのゲームのどちらかでしょう。ブログではどちらの解説を書くか迷いましたが、塩見さんとの試合はチェス通信に回すとし(依頼が来るかは分かりませんが)、今夜は中村くんとのゲームを紹介します。

Kojima,S (FM, 2395) - Nakamura, N (2077)
Hyakketsu 2013 (6)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. g3 Bg7 4. Bg2 O-O 5. O-O d6 6. d4 c6



Fianchetto King's Indian は昨年の夏にMisha と用意して以来、ハンガリーで多くの試合をこなしてきており、自信のあるオープニングの一つです。

7. Nc3 Qa5 8. e4 e5 9. h3 Nbd7 10. Re1 exd4 11. Nxd4 Ne5 12. Bf1


このようにビショップが退く手を指すのは初めてですが、クイーンが早めにa5 に出るこのラインでは、c4 の守りがある程度必要です。

12... Re8 13. Nb3!?



この手はおそらくベストではないだろうなと思いつつ、他の手がうまく評価できずに指してしまいました。13. Be3 Qb4?! 14. a3! Qxb2?? 15. Na4+- に気付かず、c4 の守りを気にしすぎたのは不覚でした。

13... Qc7 14. f4 Ned7 15. Bg2 a5 16. Be3 a4 17. Nd4 Qa5 18. Rb1!?


こういった地味な手は、ハンガリーに行く以前の私であれば指せなかったかもしれません。a4-a3 に対してb2-b4 を返せるようにし、b2-b3 を突いた際にもb3 のポーンを守っているようにします。

18... Nb6 19. Qd3 Qb4 20. b3 Nfd7!?



20... axb3 21. axb3 ( 中村くんが気にしていたという 21. Rxb3? Qxc4 22. Qd2 Qa6 は特に白に何も得るものがありません。) 21... Nfd7 22. Kh2 Nc5 23. Qc2= というポジションは、イコールに近いと試合中考えていました。しかし白で持って、まだまだ勝負にいける形です。

21. a3!?


ここが勝負所だと考え、時間使ってこの手を決断しました。このポーンを取れるか取れないかを読み切るのは、大変に困難です。

21... Qa5?!


ポーンを取るのが正解ですが、このクイーン退きは仕方がありません。21... Nc5! 22. Qd2 Qxa3 (22... Nxb3 23. Rxb3!+- はもちろんダメ。) 23. Nc2 Nxc4! 24. Qe2 Nxe3 25. Qxe3 Qxb3 26. Rxb3 axb3 27. Nd4 これでクイーンvs3ポーン+ルークにすれば、まだ優劣不明というのがコンピュータの評価です。私もクイーンを捨てるパターンがいくつか考えましたが、これがベストのラインで、さらには黒が十分に戦えるとは読めませんでした。

22. b4 Qh5?



私は中村くんには今後も期待しているので、ここは敢えて厳しく言いますが、この手がこの試合で最もダメな手です。私は彼が21... Qa5 と指した時点で、黒のクイーンサイドでのイニシアチブが消えたと思い、意気消沈していることが分かりました。確かに、白のb4-c4 に並んだポーンの形は理想的で、黒のナイトを完全に抑え込んでいます。しかし、それでも22... Qa6 から丁寧に指せば、まだ勝負は分からないはずです。多少悪くなったポジションでもしっかり集中力を保ち、ポイントを取るためにベストの手を探し続けることは、さらに強いプレーヤーになるために必須だと私は考えています。

それはさておき、次の白のベストムーブが分かるでしょうか。これはどこかのレクチャーで出題しても良い程、面白いポジションだと思います。

23. Nf3!!


22... Qh5? がこの試合、黒の最もダメな手だとするならば、23. Nf3!! が白の最も良い手です。h4 のマスを奪ってg3-g4 からのクイーントラップを見せると同時に、黒マスビショップのダイアゴナルを開くことでb6 のナイトをアタックし、d7 のナイトを動けないようにします。

23... f5 24. Ng5!



さらにこの手もポイント。クイーンを盤の端に閉じ込めて、完全にOut of Play にしたうえで、守りを弱めた黒キングを直接狙いにいきます。

24... fxe4 25. Ncxe4 d5 26. Nd6 Rf8 27. cxd5 cxd5


最後は時間切迫もあるので細かいミスには突っ込みませんが、これではメイトコースに一直線です。

28. Bxd5+ Nxd5 29. Qxd5+ Kh8 30. Ndf7+ Rxf7 31. Nxf7+ 1-0



中村くんも勝てば優勝の目がありえただけに、悔しい黒星だと思います。そういった思いを積み重ねて、もっと上のレベルにステップアップしてきてください。

棋譜解説は、パリのホステルでカペルの最終ラウンドを書いて以来2週間ぶりですが、もうずっと書いてなかったような気がします。それだけ毎日試合漬けの日々でしたからね(笑)またあの生活に早く戻りたいと思います。

全日本百傑戦 2013 Day2


今日も遅くなってしまいましたが、百傑の結果報告です。2日目は塩見さんに勝ち、Alex とドロー、中村くんに勝ちで、計5勝1ドロー。Alex とともに同時優勝となりました。タイブレークで優勝の盾こそ手に入れそびれましたが、賞金と全日本の半額優待をゲットしたので、日本での復帰戦としては満足の結果です。各ラウンドの相手と結果は以下の通り。

R1 内田 - 小島 Sicilian Najdorf 0-1
R2 小島 - 馬屋原 English 1-0
R3 佐々木 - 小島 English 0-1
R4 小島 - 塩見 Queen's Gambit Tarrasch 1-0
R5 Alex - 小島 Caro-Kann Side Line 1/2-1/2
R6 小島 - 中村 King's Indian Fianchetto 1-0

棋譜後日、解説を付けて一部を公開するつもりです。


オープンクラス入賞者

1位 Alex Averbukh 5.5/6
2位 小島慎也 5.5/6
3位 南條遼介 5/6
4位 中村尚広 4.5/6
5位 小林厚彦 4.5/6


参加者の皆さん、お疲れさまでした。久々に皆さんとプレーができ、楽しいひと時でした。次は5月の全日本選手権でお会いしましょう。

2013/03/17

全日本百傑戦 2013 Day1

日付が変わってしまいましたが、百傑初日の報告です。私を含め、リスト上位5名が順当3連勝となり、2日目で直接対決を迎えます。4R の上位ボードは以下のペアリング。

小島 - 塩見
Alex - 南條
野口 - 中村

私は内容がさほど良くなかったと自分では感じていましたが、コンピュータの評価はそこそこでした。公式戦で初めてNajdorf を指せたのも良かったです。

しかし、今日は試合自体より、試合後にアダルト軍団に連れ回されたほうが疲れました(笑)大会期間中にこんなに飲んだのも、終電を逃したのも初めてです。今夜はしっかり休んで、明日の試合も頑張ります!

2013/03/14

Memories of Hungary Vol.1 - 憧憬 -


Vladimir Kramnik に挑むPeter Leko, The Chess Drum's News Briefs より

日本に帰国したら書き始めようと思っていたのが、このハンガリーを振り返るシリーズです。ハンガリーで過ごした時間というのは私にとってまさに夢のようで、これまでの自分の人生で全くしてこなかった経験を、語りきれないほど多く積むことができました。シリーズの始めとなる第一回~第二回にかけては、私が中高生の頃からハンガリーに抱いてきた憧れと、旅立ちまでをまとめようと思います。

これまであまり語ったことはありませんでしたが、私は15歳頃から、いつかハンガリーに行ってチェスをしてみたいと思っていました。高校1年生の頃に突如、ハンガリー語のテキストを購入し、あまりの難しさにすぐ投げ出したのも、若気の至りというものでしょう(笑) 中学2年生頃から始めたGM の棋譜並べで、Leko やPolgar がハンガリーのGM だと知ったのがいつの頃であったか、記憶は定かではありませんが、チェスを始めた割と早い段階でハンガリーという国が、世界でもトップクラスのチェスの強豪国であるという認識は持っていました。

そして、私がハンガリーへの憧れを強める出来事が2004年、高校1年生の頃に起こりました。ハンガリーのトップGM であるPeter Leko が、当時の世界チャンピオンであったVladmir Kramnik に挑み、世界チャンピオンの座を狙ったのです。マッチの最中、私は毎日ライブにかじりついてゲームを鑑賞し、翌日は部室で検討戦を行いました。

その思い出深いマッチは、Leko が1Pリードしたまま最終14R を迎えましたが、最後の最後でKramnik が勝利を収め、7-7 のスコアでチャンピオン防衛となりました。もし最終戦でLeko がドロー以上を取るようなことがあれば、ハンガリーのチェスの歴史は大きく変わっていたでしょう。そして当然、Leko を応援していた私は落胆したのでした。


Leko の活躍を示すマッチのスコア, Carolus Chess より

しかし考えてみれば、私がなぜLeko を応援していたのかはよく思い出せません(笑) Kramnik のチェスも、Leko のチェスも、私はどちらも好きです。そのため、プレースタイルで応援するプレーヤーを決めたわけではないでしょう。歴史的に圧倒的な力でチェスの世界を牛耳ってきた、ソ連、ロシアという大国出身のチャンピオンに、ハンガリーという小国の戦士が勇敢に立ち向かっていったことに、胸を打たれたのかもしれません。(そういった点では、Fischer がSpassky を破ったマッチをリアルタイムで見ていた世代の感動は、私の予想を遥かに上回る物なのかもしれませんね。)最終的に敗れこそしましたが、マッチでは無敵と呼ばれたチャンピオンを、ロープ際まで追い詰めたハンガリー人の活躍は、私の記憶に強く焼きつくことになったのでした。

そうした出来事があり、Peter Leko、そして史上最強の女子プレーヤー、Judit Polgar を育てたハンガリーという国は、いったいどんな所だろうと考えるようになりました。翌年、高校2年生で当時の最年少記録を破って全日本優勝を果たし、海外大会にも足を運ぶようになった私ですが、憧れの地ハンガリーに向かうのは、さらに5年も先のこととなります。

Vol.2 に続く

Kramnik - Leko の結果や棋譜はこちらで確認できます。

2013/03/12

大学チェスサークル合同合宿 at 伊東


先週末の土曜から今週の月曜にかけて、静岡県の伊東で複数大学のチェスサークル合同のチェス合宿が行われました。私はカペルで小林くんから声をかけられ、急遽この合宿に日曜だけ顔を出すことに。関東では最近、学生チェスサークルの活動が活発であることは知っていましたが、慶應、東大、上智、東北、筑波の5大学をメインに、現役、OB 合わせて40名近くの参加者がいたことには、ただただ驚くばかりです。

この合宿のメインはラピッド6R の大会であり、中高時代の麻布オープンを懐かしく思い出します。私は吉村先輩と6R だけの飛び込みで参加しましたが、南條くんにあえなく負けたので、この話はさらりと流します(笑)彼との決着は、百傑と全日本で!

大会後はレクチャーの予定だとホワイトボードに記してあったので、誰がやるのだろうと思っていましたが、案の定、私にお鉢が回ってきました。久々に大人数を相手にしたエンドゲームレクチャーは良い経験になりましたが、私に任せるつもりなら企画者はその旨を事前に伝えておいてください(笑)また、今回は仕事ではなく遊びのつもりで顔を出したので、レクチャーは無料で行いましたが、毎回こういう訳にはいきませんよ!

参加自体が急に決まったうえ、日帰りでの強行日程でしたが、半年ぶりに後輩たちや他大学の学生たちの元気そうな顔を見ることができ、伊東まで足を運んだ甲斐がありました。今回の合宿に参加したメンバーのうち、今週末の百傑に参加するのは、1/2~1/3 といったところでしょうか。百傑戦は春休み中最大のイベントですので、これから先輩となるであろう1年生にも積極的に参加して、レイティングを獲得してもらいたいですね。

この合宿やレクチャーについては、東大チェスサークルのブログに早くも様子がアップされていますので、よろしければ、こちらもご覧ください。

春休み中の活動 ②合同合宿 Ⅰ




吉村先輩、急な誘いにもかかわらず、お付き合いありがとうございました!

2013/03/09

帰国報告 2013.03


我が家の鳥ちゃん。中国のGM と同じ名前です。

Facebook やTwitter では知らせていましたが、こちらでは報告が遅くなりました。長い長い遠征を終え、4日前に日本に到着しています。今後、しばらくは日本でのチェス生活に戻りますので、日本の皆さん、よろしくお願い致します。帰国後、ずいぶんとブログをさぼっていましたので、再開の今日はいくつかのお知らせからにしようと思います。

・百傑戦への参加


来週末は百傑戦ですね。こちらが私の日本チェス界復帰戦となります。チェスプレーヤーの皆さんとは、まずはこちらの会場で顔を合わせることになりそうです。昨年は羽生さんに不覚を取って優勝を逃しましたので、今年こそ数年ぶりの優勝を目指すつもりです。全日本の権利獲得を狙う方々も、頑張って下さい。

・全日本選手権への参加


ゴールデンウィークに開催されるこちらにも、当然参加します。カペルで「小島さん、権利あるんですか?」と聞かれましたが(笑)、ちゃんと条件は満たしています。それに前年の入賞者ですしね。

そして、4月から京都大学に留学する池田惇多くんも、推薦枠での全日本参加が決まっています。今年は2300以上が複数というハイレベルな大会になりますので、3年ぶりのタイトル奪還に向け、エンジンをかけていこうと思います。

・京都大学でのチェスサークル立ち上げについて


池田くんつながりでもう一つ。今、京都大学の学生の一人が、チェスサークルを立ち上げようと動いているそうです。私からはすでに池田くんを紹介しており、他にもメンバーが集まれば、きちんと始動できるのではないかと考えています。このブログをご覧の方で、興味のある方、近くにお住まいの方、そしてピンポイントですが京都大学の方は、是非私までご連絡ください。私もなるべくお手伝いしたいと思っています。

近年は関東を中心に大学チェスサークルの活動が盛んで、この週末には伊豆で3大学をメインとした合同合宿が開催されています。(明日は、こっそり私も顔を出します。)かつてのように、関西にもきちんと活動する大学チェスサークルが誕生し、関東とも交流ができると良いですね。

・日本でのレクチャーについて


しばらく日本で滞在するに当たり、またレクチャーを再開しようと思います。一番現実的なのは、まずはチェスセンターですかね。他にも地方、大学を問わず、私のレクチャーを希望するサークル、クラブがあればお気軽にご相談ください。もちろん個人でもOK です。分かりやすいよう、レクチャーページを後日作成するつもりです。

2013/03/04

Cappelle la Grande 2013 9th round - Final Results -


優勝はロシアのGM Sjugirov!

今年もようやく、カペル大会が終了しました。最終戦の結果は私と小林くんが勝ち、石塚さんと橋本さんが負け、三村くんがドローでのフィニッシュです。招待選手4人は全員がレイティングプラスとなり、レイティングを持たない橋本さんも、悪くないパフォーマンスを残しました。去年に比べれば多少落ちはしましたが、私が前回参加した2年間よりも、全体的に好成績だったと言えるでしょう。それでは、最後の棋譜とレポートです。

Kojima,S (FM, JPN, 2368) - Faure, S (FRA, 2069)
Cappelle la Grande 2013 (9)

1. Nf3 Nf6 2. c4 d6 3. d4 g6 4. g3 Bg7 5. Bg2 O-O 6. O-O Na6 7. Nc3 c5 8. h3 Bf5 9. Nh4 cxd4?!



この駒交換は人間的な視点からは、やはり不自然に見えます。

10. Nxf5 gxf5 11. Nb5 Ne4 12. Nxd4 e6 13. Be3 Rc8 14. Rc1 Nac5 15. b4 Nd7 16. Nb5!


これで白はダブルビショップに引き続き、マテリアルアドバンテージを得て、明らかに優位に試合を進めることになります。

16... d5 17. cxd5 Rxc1 18. Bxc1 Nxg3 19. fxg3 Qb6+ 20. Kh2 Qxb5 21. dxe6!



シンプルですが、強い一手。黒はこのポーンを取り返そうとすると、a2-a4! からd7 のナイトが落ちてしまいます。

21... Nf6 22. exf7+ Kxf7 23. Qb3+ Kg6 24. Qc2?! Re8 25. Rf2?


しかし、ここでの連続悪手によって黒のカウンタープレーを許し、まさかの長い長いエンドゲームに突入します。

25... Ne4! 26. Bxe4 Rxe4 27. Qd2 h6 28. a3 Rd4



こうなると、黒はアクティブなピースで1ポーン分の代償を多少伴い、プレーすることが可能です。それでも、じっくり待っていれば再びチャンスは訪れることを信じ、ミスをしないようにここから丁寧に指し続けます。

29. Qc2 Qd5 30. Be3 Rc4 31. Qb3 Be5 32. Bf4 b5 33. Qd3 Rd4 34. Qe3 Re4 35. Qf3 Rd4


ここで相手からクイーンの交換+ドローのオファー。1ポーンアップしている白が受けるはずもなく、長くなることを覚悟のうえでルークエンディングで勝負です!

36. Bxe5 Qxe5 37. Qa8 Re4 38. Qg8+ Qg7 39. Qxg7+ Kxg7 40. Kg2 Kg6 41. Kf1+/=



白は1ポーンを保ったまま、キングの位置を改善します。この時点では、2100を切るプレーヤーであればエンドゲームのテクニックも大したことがないと思っていましたが、なかなかここからの彼の指し回しはあっぱれです。

41... h5 42. Rf4 Re3 43. Rf3 Re4 44. h4 a5!


なるほど、と感心した一手。クイーンサイドのポーンを多少捌いておいたほうが、ディフェンス側の黒としては、負担が少なく済みます。

45. bxa5 Ra4 46. Kf2 Rxa5 47. Rc3 Ra4 48. Rb3!?



ここはクイーンサイドのポーンを捌かないほうが勝ちのチャンスがあると思い、b5-b4 を防いでおくことにしましたが、これに対しては黒はキングサイドのポーンを解消し、ドローのチャンスを拡大します。

48... f4! 49. Rxb5 fxg3+ 50. Kxg3 Rg4+ 51. Kf3


51. Kh3 Re4 52. Rg5+ Kh6 53. Ra5 Rxe2 ならば、ドローは堅いでしょう。

51... Rxh4 52. Ra5 Rc4 53. Ra8 h4 54. a4 Kf5 55. a5 Rf4+ 56. Kg2 Re4 57. a6 Rxe2+ 58. Kh3 Re7!



指されてみれば当然の一手ですが、2000台のプレーヤーにしてはエンドゲームの指し回しが正確で、その勉強量に驚かされます。すでにキングはg7 に戻れないため、後ろからではなく、7段目からパスポーンにアタックをかけるのが、黒の正しいディフェンスです。

59. Kxh4 Ke5?!


ここは黒は簡単なドロー手順を逃がしています。59... Kf4! 60. Kh5 Kf5 61. Kh6 Rf7 ならば、白は早々にa7 を突くしかなく、あとは黒キングを白キングに見合わせ続ければ、白には勝つ方法がありません。

60. Kg5 Rg7+ 61. Kh6 Re7 62. Kg6 Ke6 63. Kg5 Ke5 64. Kg4 Ke4 65. Kg3 Ke3 66. Kg2 Ke2 67. a7


このa6-a7 はいつでも突けるので、ここまでキープしたうえで実行に移りました。ここからキングをキングサイドに上げれば勝ちだと思いましたが、私の考えていないディフェンスが黒には隠されていました。

67... Ke3 68. Kg3 Ke4 69. Kf2 Rf7+ 70. Ke2 Re7?



これがドローを逃がすブランダー。確かに黒のルークは7段目をキープしつつ、白の8段目のチェックを防ぐ(キングとルークが同じファイルにいる)しかありませんが、ルークのベスト位置はeファイルではなく、fファイルでした。70... Kf5!(黒キングがfファイルに戻る手が正解で、これならば黒は将来的にパスポーンのサポートに上がった白キングに対して、パペチュアルチェックをかけることができます。) 71. Kd3 Rd7+ 72. Kc4 Rc7+ 73. Kb5 Rf7 74. Kb6 Rf6+ 75. Kc5 Rf7 76. Kb5 Kf4! 77. Kc6 Kf5 78. Kd6 Kf6!(次にKd6-Ke7Kd6-Ke6 も防いでおかなければいけないので、これが唯一のディフェンスのアイディアです。) 79. Kd5 Kf5= ルークがパスポーンの後ろに回れない場合、ルークの横利きでパペチュアルチェックをかけてドローにするのは、Vancura Position の応用アイディアです。試合後にはこれを、Dvoretsky のEndgame Manual で確認しています。このルークエンディングは勉強していない方には難しいので、どこかのレクチャーでまた詳しく解説をしようと思います。

71. Kd2!+- Rd7+ 72. Kc3 Kd5 73. Kb4 Kd6 74. Kb5 1-0


黒はルークとキングがfファイルからキングサイドに寄ってしまったため、6段目を利用したパペチュアルチェックをかけることができず、白のKb6 到達と、ルークのa8 脱出からプロモーションを許してしまいます。そのため、黒にはドローチャンスはなく、ここでリザイン。ミドルゲームでひどいミスが出ましたが、結果としてこのルークエンディングを実際に指して学べたことは、大きな収穫でした。

Kojima, S (FM, 2368) 5.5/9 RP 2366 102位
Kobayashi, A (1997) 5/9 Rp 2103 197位
Mimura, K (1770) 4/9 RP 1936 342位
Ishizuka, M (1790) 4/9 Rp 1823 359位
Hashimoto, A (UR) 4/9 Rp 1692 382位


最終戦績により、小林くんと橋本さんがカテゴリープライズの賞金をゲット。次回参加する際は、さらに上のクラスに組みこまれますが、それでも入賞できるよう、頑張ってほしいですね!来年は30周年記念大会ということで、日本からの招待枠は6つに拡大すると、オーガナイザーから報告を受けています。私も次は2499-2400のセクションで参加できるようレイティングと実力を上げ、再びこのフランスの地に戻ってくるつもりです!


とある朝の一コマ。


夜のダンケルク。


三村くんは、優勝したSjugirov 親子と、卓球大会にて交流を深めたそうです。


ポルトガルの女子マスターと石塚さん。今回彼女は、日本の女子プレーヤーとして2回、日報に取り上げられました。


小林くんと対戦したGajek Radslaw は、GM に3勝1敗の好成績で、初のIM ノームを獲得です!


閉会式後のパーティーでは、ポーランドのMaria、Anna と記念撮影。秋以降、妙にポーランドジュニアと縁があります。

石塚さん、三村くん、多くの写真提供をありがとうございます。それでは皆さん、次は日本でお会いしましょう。私も明日の昼には、半年ぶりに日本の地に降り立ちます。

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