2014/10/29

Game Analysis Move by Move - Kojima - Shiomi Vol.2 -


Kojima S - Shiomi R / 10th IVL (5)
Position After 9... 0-0

さて、このポジションから再開します。白は自らcxd5dxc5 を仕掛け、黒にd5 のIQP を残す形を決めました。ここからはIQP ポジションの特徴をよく考えたうえで、ピースのセットアップを決めていきます。

10. b3


白は4手目て閉じ込めた黒マスビショップを展開するために、フィアンケットの準備をします。a2-a3 からb2-b4 というアイディアもありそうですが、黒はすでに、a7-a6 からa7 にビショップの逃げるマスを作っているため、ポーンでビショップを追いかけるのがうまい作戦だとは思いません。(Bc5-Bb6 と退くようであれば、a2-a3, b2-b4, Nc3-Na4 という形は、c5 をコントロールして効果的。これはQGA で黒が使うアイディアと同じです。) また、b2-b4 を実現するためには、b2-b3 よりも1手多くかかるうえ、c4 のマスを弱めるという欠点もあります。そこで私は、IQP を持たせている側としては、シンプルなフィアンケットを好みます。

10... Nc6


10... Nbd7 では、d5 のポーンが落ちてしまうので、黒がナイトを展開するのはこのマスしかありえませんが、c6 のナイトは単純に d5 を落とさないような位置であるというだけでなく、d4 のマスをコントロールするという重要な役割があります。ここでIQP ポジションにおける、センターの弱いポーンと、アウトポストについて説明をしておきます。


Reference Diagram 1

分かりやすく説明するため、余計なピースを消して考えましょう。このようなIQP では、白からの方針として、d5 のポーンにプレッシャーをかけるというのは、非常にシンプルです。c3 にナイト、dファイルにクイーンとルーク、さらに白マスビショップまで、Bf1-Be2-Bf3 と組んで、d5 を攻撃できれば、ポーンを取るチャンスは十分にありそうです。しかし、d5 への利きばかりに目がいってしまい、黒からd5-d4 とポーンを突かれてしまってはどうでしょうか。

もし、黒がd5-d4 とポーンを突き、弱点だった孤立ポーンを解消したうえで、Nc6-Nxd4 もしくは、Bc5-Bxd4 と、ナイトかビショップでポーンを取り返せたらどうでしょうか。2つのどちらのピースも、d4 のマスではよく働き、黒にとって満足なポジションになるでしょう。これはIQP ポジションにおいて、IQP を持つ側の典型的なブレイクです。持つ側はこのポーン突きの可能性を作るため、一方で持たせる側はそれを防ぎ、d5 の孤立ポーンとd4 のアウトポストを保持し続けるために、お互いにd4 のマスをコントロールし続けることが重要になるのです。

このように考えると、IQP を持つ側はなるべく早くにセンターポーンのブレイクを行うのが良いように思えてしまいますが、センターポーンは5段目の2マスを抑えるという基本的な役割がありますし、相手の3段目のeポーンと早く交換しすぎてしまえば、相手のビショップの働きの悪さを解消してしまうというデメリットもあります。センターポーンのブレイクは、やるとしてもピースの展開を完了し、ポーンを後ろからルークでサポートしたうえで実行するのがベストでしょう。

11. Bb2 Re8 12. Rc1



お互いにポーンのないオープンファイルにルークを回します。白のルークはc5 のビショップをアタックしつつ、将来的にc5 のマスへのピースの侵入をサポートします。

12... Bd6?!


私はこの手は不自然だと感じました。確かにh2 への利きを持つことは、白キングへプレッシャーをかけられるために良さそうに見えます。しかし、実際には展開の劣る黒は、有効な白キングへのアタックを作ることは難しく、それならばd4 のコントロールをキープするために、12... Ba7 と退くほうが良いでしょう。この形の場合、Bc5-Bd6-Bc7 と組み直しても、c7 のビショップはルークのターゲットにもなりますしね。

13. Qd3!?


このポジションでの戦い方はいくつかありそうですが、私にとって一番自然に思えるプランは、f1 のルークをd1 に回して、d5 へのプレッシャーを強めることです。これにより、展開の遅い黒は、d5 のポーンをBc8-Be6 と守らなければいけなくなります。(a8 のルークがd8 に回る暇はありません。) e6 のビショップは、e8 のルークの利きを邪魔しますし、ポーンを守らなけばいけないということが負担になります。そこで、d1 のマスを空けつつ、d5 へのプレッシャーをキープする位置として、このクイーンの3段目が考えられるわけです。13... Nb4 14. Qb1 と進んでも、b4 のナイトはc6 に戻るしかないため、白は特に問題ないでしょう。

ちなみにこのセットアップは、Sicilian Alapin や、Caro-Kann Panov Botvinnik でも現れるものです。1. e4 c5 2. c3 d5 3. exd5 Qxd5 4. d4 Nf6 5. Nf3 e6 6. Be3 cxd4 7. cxd4 Nc6 8. Nc3 Qd6 9. Bd3 Be7 10. O-O O-O 11. a3 b6


Reference Diagram 2

例えばこのポジションは、本譜の色を入れ替えた形に似ています。しかし、本譜の白は、このAlapin の黒よりもピースの展開が圧倒的に早く、指しやすいと考えられるでしょう。ピースの展開に差が出るのは、本譜で黒はBf8-Be7-Bxc5-Bd6 と3回もビショップを動かしており、一方で白はクイーンを一度しか動かしていないためです。

13... Bc7 14. Rfd1 Be6



白はひとまず満足な位置にピースを運び、d5 へのプレッシャーと、d4 のコントロールを十分に強めています。対する黒は、Qd8-Qd6 からh2 を狙い、Ra8-Rd8, Be6-Bg4 とつなげたいところです。このようなポジションから、さらに白がどのように手を作っていくかは、次のVol.3 で見ていくとしましょう。Vol.2 ではここまで、d5 の孤立ポーンへのプレッシャーと、d4 のアウトポストのコントロールに焦点を当てて、解説を行いました。

Vol.3 へ続く

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