2015/02/13

The Highest Level Training in Japan on 29th January 2015 Vol.3


Habu, Y (FM, JPN, 2415) - Kojima, S (FM, JPN, 2397)
White to move

そろそろ、1月のこのゲームも後半の解説を始めましょう。2ピースルークながら、白にはfファイルに刺さりそうなパスポーンがあり、正確な形勢判断は、非常に難しいポジションです。ここからはお互い、悪手が続きます。

34. f7+?


もっとも自然に見えるこのチェックは、実は白が勝ちを逃がす悪手となります。34. Ng5!! (チェックの前にこの手を入れておくのが正解で、黒はg6 のポーンを取ることができません。) 34... Qxf6 (34... Qxe3 35. f7+ Kf8 (35... Kh8 36. Rf1! Rf8 37. Qxe3 Rxe3 38. Nh7+-) 36. Nh7+ Ke7 37. Qe1!+- この変化は本譜と同じなので、後ほど解説します。) 35. Nf7 Qxg6 (35... R8d7 36. Bd4!+- このバックランクメイトも見えづらい!) 36. Nxd8 Rxd8 37. Rg1+- このマテリアルであれば、白は問題なく勝てるでしょう。

34... Kf8 35. Ng5! Qxe3??



ここは私も時間がなく、ビショップを取って良いのか悩みました。結論としては、取れるのではないかと判断したのですが、これが大失敗。大人しく、g6 のポーンを取っておけばキングも安全になり、黒はやや優勢だったでしょう。35... Qxg6 36. Re1 R3d7=/+

36. Nh7+ Ke7 37. Qxe3+?


本譜の代わりに、37. Qe1! が正解です。クイーン交換を避けてバックランクは大丈夫なのかと疑問に思えますが、ぎりぎりで何とかなっています! e1 に下がった白のクイーンは取られる心配がなく、次にQe1-Qh4 の決定的なスレットを作っています。

37... Rxe3 38. a3



クイーンを交換して一息つきたいところですが、時間の無い状況では、まだ形勢がどうなっているのか判断できません。検討戦では、私が羽生さんに38. Rf1 を指摘し、これで黒に受けがないかと思われましたが38... Rf3! 39. Re1+ Kd7 40. Rd1+ Kc7 41. Re1 Re3 42. Rf1 Rf3 43. Re1= これでドローでした。白はf7 にパスポーンを刺し、プロモーションの準備も整っていますが、バックランクが弱いためにすぐに決定的なスレットを作れません。そこで本譜では、a2 にマスを作って、今度こそRh1-Rf1 を狙いにします。

38... Re6! 39. Rf1! Rf8 40. Rd1 Rxg6?


次の白のスレットが分からず、ポーンを取れると勘違いしてしまいました。ここは単純に私の力不足で、言い訳ができません。落ち着いて考えれば、正しくドローにする手順も見えるはずです。40... Rc8! 41. Rf1 Rf8 42. Rd1 Rc8= こうすれば、白にはポジションを改善する方法がありません。当然、g6 を落とすわけないもいかないので、ドローで満足するしかないでしょう。

41. Rd7+!



Oops! この美しい手によって、黒の2つのルークは盤上から姿を消します。

41... Kxd7 42. Nxf8+ Ke7 43. Nxg6+ Kxf7 44. Ne5+ Ke6 45. Nxc6 Kd5


ここまではお互いにオンリームーヴでしょう。ピースダウンの黒は、クイーンサイドでプロモーションを防ぎつつ、キングサイドの2コネクテッドパスポーンを押し進めるしか、負けを防ぐ方法はありません。

46. Nxa7!


検討戦で、46. Nd4 から、すぐにg7 のポーンを取ってはどうかという意見も出ました。早めに黒のパスポーンを消しておくのは安全そうですが、ナイトがキングサイドに行ってしまえば、黒もポーン交換からのディフェンスが容易になるでしょう。46... Kxc5 47. Ne6+ Kc4 48. Nxg7 Kb3 49. Kb1 b4 50. axb4 Kxb4= こうしてポーンを1つ交換してしまえば、白に勝つ方法はありません。

46... Kxc5 47. Kb1?



私も試合中、おやっ?と思いましたし、羽生さんも後で振り返って、なぜこの手を自分で指したのか、不思議そうでした。ここは難しいですが、唯一勝ちになる筋が以下の手順です。47. b4+! Kc4 48. Kb2 h5 49. Nc6 g5 50. Ne5+ Kd5 51. Nf3 g4 52. Nh4 Kc4 53. Kc2+-


Analysis Diagram

なるほど... 2コネクテッドパスポーンは、意外とナイトで止められるんですね。これはとても勉強になりました。しかし、試合中にこの形を正確にイメージするのは、簡単ではないでしょう。

47... h5 48. b4+!


今度は1手遅く、黒にポーンを進める余裕を与えてしまいましたが、それでもこの手がベストです。

48... Kc4 49. Kc2?



今度はキングを寄るのでは遅すぎます! ここは白は勝ちを諦め、ドローを目指すしかありません。49. Nc8! Kb3! (黒としても、白のポーンをすべて消して、シンプルにドローを目指すのが良いでしょう。) 50. Nd6 Kxa3 51. Nxb5+ Kxb4 52. Nd6 Kc3 53. Kc1 Kd3 54. Kd1= これは白も黒のパスポーンを容易に止めることができるので、ドローで終わることは疑いようがありません。

49... h4!-+


今度は黒のパスポーンが早く、黒のプロモーションが止まりません。しかし、ここまできておきながら、最後の最後で...

50. Nc6 h3??



完全にナイトの力を侮った緩手でした。黒のナイトはe5 を経由してパスポーンをブロックしなければいけないため、ポーンを進める前にそのマスを抑えてしまえば勝ちでした。50... Kd5! 51. Ne7+ Ke4-+

51. Ne5+ Kd4 52. Ng4


私はこのポジションで、Ng4-Nf2+ があるため、黒のキングはこれ以上、キングサイドに寄ることができないことに気づきました。それ自体は間違いではないのですが、少し後だと話は変わってきます。

52... Kc4 53. Kb2 g5 54. Kc2 Kd4 55. Kb3?



これで黒のパスポーンをブロックしつつ、白もパスポーンを作ることができ、白の勝勢になったと... そう2人とも考えました。ところがこれは、黒に最後のドローチャンスを与えてしまいます。55. a4! bxa4 56. Kb2 Kc4 57. Ka3 Kb5 58. Nh2!+- が正解で、ツークツワンクで白の勝ちとなります。

55... Kd5??


55... Ke4! 56. Nf2+ Ke3 57. Nxh3 g4 58. Ng1 Kf2 59. a4 bxa4+ 60. Kxa4 Kxg1 61. b5 g3 62. b6 g2 63. b7 Kh1= 今度はgポーンが伸びているので、hポーンを取らせてしまっても、ドローに持ち込めました。最後の最後まで、ミスが出ますね。

56. a4 bxa4+ 57. Kxa4 Kc6 58. Ka5 Kb7 59. b5 Ka7 60. b6+ Kb7 61. Kb5 Kb8 62. Kc6 1-0



私と羽生さんのこれまでのトレーニングの中でも、最もミスの多いシーソーゲームでした。ナイトでポーンを止めにいくエンドゲームは、理論で勉強していてもなかなか実戦では正確に指すのが難しいですね。そうしたことを学べたことも、良い経験です。

今回の解説は長かったです。この3回分の記事を無理に1つにまとめなくて、本当に良かったと思っています(笑) 羽生さんとの次のトレーニングスケジュールは未定ですが、次回もお互いに勉強になるようなゲームをしてきたいですね。

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