2015/06/13

The Highest Level Training in Japan on 12th June


ハワイ直前に行った3月のトレーニングから3か月が空き、久々に羽生さんと指す機会が訪れました。名人位を防衛されたその夜に、私にトレーニングの誘いがきたことは、素直に驚きです。午前の白のゲームは、私のひどいミスであまり内容なく負けてしまったため、午後の黒番のゲームを振り返りましょう。

Habu, Y (FM, JPN, 2398) - Kojima, S (IM, JPN, 2389)
Training (2)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. exd5 cxd5 4. c4 Nf6 5. Nc3 Nc6 6. Bg5 Ne4 7. Nxe4 dxe4 8. d5 Ne5 9. Qd4 f6 10. Be3!?



羽生さんはラピッドでは初となる、Panov Botvinnik を採用してきました。これに対して私が指した6... Ne4!? の変化を羽生さんは全く知らなかったそうですが、それでも満足に白でゲームを進めてきます。

10... e6 11. O-O-O exd5 12. cxd5 Bd6 13. Ne2 O-O


羽生さんはe4 のポーンを取るのは、将来的にBc8-Bf5, Ra8-Rc8 といったコンビネーションが危険だと判断しました。これは人間の感覚では、非常に自然だと思います。

14. Nc3 f5 15. Nb5 f4 16. Bd2 Bf5



黒はダブルビショップを諦めますが、d5 のポーンはしっかりとブロックし、白マスビショップも展開して黒キングにプレッシャーをかけているので、この時点では満足でしょう。ここからが勝負です。

17. Bc3


私は試合後に、f4 のポーンを取りにいってはどうかと指摘しました。17. Nxd6 Qxd6 18. Bxf4!? Nd3+! 19. Bxd3! (19. Qxd3? Rac8+! 20. Kb1 exd3! 21. Bxd6 d2+ 22. Bd3 Bxd3+ 23. Ka1 Rxf2-+ この変化が黒勝ちであることは、検討戦で見つけています。) 19... Qxf4+ 20. Kb1 (ここでクイーンの横利きがあり、d3 のビショップを取ることができないことは、お互いの見落としでした。) 20... Bg6 21. Bc2 Qxf2+/= このポジションはやや白が良いですが、黒も指すことはできそうです。

17... Re8


私はこの1手しかないと思っていましたが、試合後に羽生さんに指摘されたのは、Ra8-Rc8 からエクスチェンジを捨てるアイディアです。17... Rc8!? 18. Kb1 e3+ 19. Ka1 Rxc3! 20. bxc3 Ng4 (c3 のビショップさえ消してしまえば、g7 へのメイトスレットが無くなるため、ナイトを素晴らしいマスに運ぶことができます。) 21. Nxd6 Qxd6 22. fxe3 Nxe3 23. Bd3= 試合後の検討では、17... Re8 が悪手で、この変化を指すべきだったのではないかとの結論でしたが、この先も互いに見落としていた手があり、実際にはまだまだ試合は難しい展開です。

18. Nxd6 Qxd6 19. Bb5 Re7?



私はこの試合、駒損しないように自然な手を指すことを心がけていましたが、少し凝ったアイディアを指さなければ、黒があっという間に悪くなります。19... Rec8! 20. Kb1 a6! 確かにこのように白マスビショップを追い返しておけば、黒は本譜のように突き進んでくるパスポーンに悩まされることはなかったでしょう。振り返ってみて、惜しまれる判断ミスです。

20. Bb4 Rc7+ 21. Kb1 Qf6 22. d6 Rcc8 23. Bc3 Ng4 24. Qd5+ Qf7 25. d7 e3+ 26. Ka1 Rd8 27. Qxb7!?


a8 のルークを取るという嫌なスレットを作る手です。他の候補手としては、27. Bc4! Qxd5 28. Rxd5! Be6 29. Rg5!+- も挙げられ、いずれも白勝勢です。

27... h6 28. fxe3 Nxe3 29. Rd2 Rab8 30. Qc7 Nc2+ 31. Rxc2 Bxc2 32. Bc4 1-0



最後は焦ってエクスチェンジを取りにいったため、あえなくクイーンが落ちるという結末でしたが、いずれにしろ白の駒得と、d7 のポーンに対抗する方法はありません。前回のトレーニングでは私が連勝でしたが、今回は連敗。羽生さんとは今年も、良いライバル、トレーニング相手としてお付き合いが続きそうです。


お昼は最近、羽生さんが気に入っているという沖縄料理へ。これから始まる夏の国内トーナメントのことや、年末の海外トーナメントのことについて話をしました。

午後のゲームの後は、私が先月のIVL で野口さんと指したルークエンディングの分岐をいくつも検討してみたり(トップの写真です)、Caro-Kann Advanced Variation やKing's Indian Fiancetto Variation のポジションを互いに持ち寄って、アイディアを出し合ったりしていました。毎回、多忙なスケジュールをぬってチェスのトレーニングに時間を割く羽生さんには頭が下がります。羽生さんとは今月、さらにチェスをする機会がありますので、そちらでも勉強させてもらうつもりです。

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