2015/07/27

Japan Junior Champions 2015


今年の小学生選手権は、Open とAクラスの合計が、50人を超えました!

一週間ぶりの更新です。前回の週末は、IVL とサマーオープンでしたが、この週末はジュニア選手権、小学生選手権、シニア選手権が開催され、私は金曜日から日曜日まで会場に足を運んできました。子供たちは今年も白熱した好ゲームを見せてくれました。一つ面白かったゲームをご紹介しましょう。


Otawa, Y - Kashihara, T
Japan Junior Championship 2015(5)

土曜日のジュニア選手権二日目、トップボードは4連勝の大多和くんと、3.5P の柏原くんの大阪対決となりました。柏原くんのうまい指しまわしで、白のアドバンテージはあまりない序盤だと思っていましたが、私がポジションを見に戻るとこうした中盤戦に。ここで優勝を決めたい大多和くんは、勝負を仕掛けます。

1. e6!?


私がこの局面で考えていたのは、1. f5! と突く手で、こちらのほうがh7 への攻撃が通りやすく、白の勝ちが明白です。1. f5! Qxe5 (1... gxf5 2. Bxf5 Qxe5 3. Bxh7++- こうなれば、fファイルに追い出された黒キングは、白のルークたちの餌食となり、ゲームオーバーです。 2. f6!+- こうしてg6 を取るのではなく、ポーンを突いて勝負ありです。次にBe4-Bxg6 で黒キングの守りは崩壊します。

1... Qxf4 2. Bxg6 Qc1+


私は恥ずかしながら、この当たり前の1手が見えておらず、1. e6 でも勝ちになるかと思っていました。黒陣に刺さったg5 のポーンを掠め取り、黒は抵抗を続けます。

3. Kg2 Qxg5+ 4. Rg3 Qxg3+ 5. Kxg3 Rxg6+



黒はクイーンを捨てましたが、ポーンとルークとビショップを取って、自らのキングを生かしました。ちなみに柏原くんが指したビショップを取る手が正解で、h2 のルークを取る手はだめです。5... Bd6+ 6. Kh3! 私はこの手が見えておらず、ルークを取りにいく手が良いと勘違いしていました。(6. Kf2? Bxh2 7. Bf7+ Kf8 8. Qf5=) 6... Rxg6 (6... Bxh2? 7. Bf7++-) 7. Rg2! こうしてすぐにルークが交換できる展開は、白にとってありがたいものです。

6. Kf2 Rf6+?


時間切迫で、柏原くんはミスを犯しました。難しいポジションですが、6... Bg7 と出しておけば、黒はキングの守りを厚くしながら、d4 のポーンを守れたため、白は本譜のように簡単に勝つことはできなかったでしょう。

7. Kg1 h6 8. Rg2+ Kh8 9. Qg3 1-0



先程とマテリアルは変わっていませんが、素早くgファイルにヘビーピースを重ねた白が、メイトスレットを作って勝利を収めました。このラウンド、Gary は長瀬くんとドローだったため、これで大多和くんは5R 終了時点で2位に1P 差をつけ、最低でも同時優勝を決めました。


ジュニア選手権の最終戦は、Gary が直接対決で大多和くんを破り、4P の小柴 - 星野(華)戦は逆転で小柴くんが勝利を収め、大多和くん、Gary、小柴くんの3名が、6R の全ラウンドを終えて5P で並びました。全日本でも活躍した大多和くんとGary にとっては順当な結果だとして、今年の頭から400近くレイティングを伸ばしてきた小柴くんは、完全にダークホースでしたね。タイブレークでトロフィーは、Gary、大多和くん、小柴くんの順に1位-3位と贈られていますが、3人ともジュニアチャンピオンと呼んで差支えないでしょう。3人とも、おめでとう!


小学生選手権の入賞者たち

日曜日に開催された小学生選手権は、昨年に引き続き、アメリカから来た泉くんが4戦全勝での優勝を決めました。2位、3位を分けたのは、同じくアメリカから来たGlshausser 翔くんと、逢阪くんの2人です。翔くんは、私が3月に対戦したアメリカのGM Gareev から、泉くんもソ連でコーチをしていたプレーヤーから指導を受けているそうで、アメリカのチェスのレベルの高さが伺えました。この3人のプレーの質や、試合に臨む姿勢は、とても小学生のものとは思えません。

小学3年生以下のAクラスでも、初めて会う子供たちと交流ができましたし、私の生徒たちも良い試合を見せてくれました。子供たちの大会はここ最近、非常に盛り上がりを見せていますので、彼らの中から将来、マスターになるプレーヤーが育ってくれればと期待しています。

最後に、今回引率として会場にいらっしゃった保護者やチェスクラブの皆さん、お疲れ様でした。子供たちには、こうしたジュニア、小学生だけの大会だけでなく、一般の大会にもチャレンジしてもらえたらと思います。また別の大会で、お会いできることを楽しみにしています!

2015/07/22

Talk Event and Summer Open Tournament Report


IVL のレポートで止まっていましたが、先週末の3連休は日曜、祝日も各所に顔を出してきました。日曜日は告知していた通り、池袋のコミュニティカレッジでのトークイベントです。月刊少年マガジンで連載中のチェスコミック、盤上のポラリスの世界を通し、チェスの魅力を紹介するという今回の企画は、6月に講談社へと持ち込まれたものでした。まさか、私がメインのスピーカーを引き受けることになるとは思っていませんでしたが、皆さんの前で1時間半、チェスについて語った時間は、私にとって非常に良い経験になったと思います。主催のコミュニティカレッジ担当者の新井さん、聞き役を務めてくださった小田さん、そして会場にお越しくださった皆さんに、あらためてお礼を申し上げます。


Levitsky - Marshall, Breslau 1912
Black to move

イベント内では、トークだけでは子供たちが退屈してしまうので、プロジェクターでこうした局面を見せ、手を考えてもらいました。子供たちは私の予想よりもずっと、積極的に手を挙げて答えてくれましたね。3年前にブダペストで参加した、Polgar Chess Festival で、Judit を相手に、子供たちが我先にと手を挙げていたことを思い出しました。


来場者には、こうしたオリジナルイラストが配布されました。原作と作画のお二人のサイン入りということで、ファンには嬉しいサービスですね。さらにサイン入りチェスセットや色紙は、これから抽選で当選者が決まる予定ですので、こちらも楽しみにお待ちいただければと思います。回収したアンケートも、次回のイベントをさらに魅力的にするために、活用させていただきます。


一夜明けた月曜日は、蒲田で開催されていたサマーオープンに顔を出しにいきました。4連勝の後でLin くんに敗れた弘平くんは、崩れずに最終戦をしっかり勝って、5勝1敗での優勝を決めました。IVL でのリベンジとなる、青嶋くんとの再戦がなかったのは少し寂しかったですが、何はともあれ弘平くん、久々の優勝おめでとう!


弘平くんと同様に、IVL に続いて試合に参加した青嶋くんは、初戦で逢阪くんに負けた後、3勝2ドローと星がそこまで伸びず、3位に終わっています。今年の全日本選手権で5位に入賞した、現在日本で最も強い(かもしれない)ジュニアプレーヤー、Lin くんとの最終戦は見ごたえがありました。こうした若いプレーヤーたちの台頭も、これから期待したいと思います。

私自身もサマーオープンに2bye で参加しようかとも考えていましたが、さすがにスケジュールがきつくて断念しました。試合をしなかった分、月曜日は皆さんのゲームにゆっくり目を通し、面白いポジションもいくつかチェックすることができましたし、生徒たちのプレーも見ることができました。今週金曜から開催される、全日本ジュニア選手権、シニア選手権、小学生選手権の3大会にも、私の生徒が参加しますので、3日間、私も蒲田の会場にいるつもりです。参加者と、会場に来る予定の皆さんは、今週もよろしくお願い致します。

2015/07/18

16th IVL Tournament Report


注目のプロ棋士対決、羽生さんと青嶋くんの試合は、羽生さんの勝ちでした。 Photo by Hasegawa

予告していた通り、16回目となるIVL を表参道で開催しました。前回に引き続きの参加となる羽生さん、さらにはプロ棋士の青嶋未来くん、スウェーデンのFM Anton Frisk さんたちが集まり、豪華なメンバーとなりました。10人での5R スイスの結果は以下の通りです。

1st Place Habu Yoshiharu (FM, JPN, 2415) 5/5
2nd-5th Place Yamada Kohei (CM, JPN, 2220) 3/5
Kockum Anton Frisk (FM, SWE, FIDE 2358) 3/5
Aoshima Mirai (JPN, 2407) 3/5
Kojima Shinya (IM, JPN, 2449) 3/5



驚くべきことに、前回に続いて羽生さんの全勝優勝です! 4人のマスターと、実力はマスタークラスの青嶋くんの5人全員を相手に、全て勝つというのは、並大抵ことではありません。もともと高い実力はありましたが、今の羽生さんにはそれ以上の勢いがあり、劣勢のポジションでもひっくり返して、逆転勝ちしてしまいます。3R での、私とのゲームを公開しておきます。

Kojima, S (IM, JPN, 2449) - Habu, Y (FM, JPN, 2415)
16th IVL (3)

1. e4 e6 2. d4 d5 3. Nd2 Be7 4. c3 c5 5. dxc5 Bxc5 6. exd5 exd5



こうしたFrench Tarrasch のIQP ポジションを持つのは久しぶりです。白はd4 のアウトポストをしっかりと抑えたうえで、ゆっくりとd5 にプレッシャーをかけていけば、長期的なアドバンテージがあるはずです。

7. Ngf3 Nf6 8. Bb5+ Nc6 9. O-O O-O 10. Nb3 Bd6 11. Bg5 Bg4 12. Be2!


白は、ひとまずチェックでb5 に展開していたビショップを退き、ピンを外しておきます。IQP を持たせている白にとって、白マスビショップを始めとするピースの交換は望むところです。

12... Re8 13. Re1 Bc7 14. Nfd4



羽生さんにとって一つ予想外だったのは、この手が成立することでした。

14... Bxe2 15. Rxe2 Qd6


15... Bxh2+? 16. Kxh2 Ng4+ 17. Kg3 Qxg5 18. Rxe8+ Rxe8 19. Qxg4 は当然、黒ダメです。

16. g3 Ne4 17. Nb5 Qd7 18. Rxe4!



どうすれば白が良くなるか考えていた私は、面白いアイディアを思いつきました。こうして一時的にエクスチェンジを捨てることにより...

18... Rxe4 19. Nc5 Qc8


c7 のビショップが狙われている以上、クイーンが下がるのはこのマスしかありません。

20. Nxe4 dxe4 21. Qd5!+/-



ここで重要なことは、ビショップナイトを交換しておくことよりも、e4 の進みすぎたポーンをアタックし、1ポーンアップすることです。これにより駒得が確実となり、是非とも勝ちたいゲーム展開になってきました。

21... Bb6 22. Nd6!?


試合後の検討で、22. Re1! と指したらどうかと羽生さんに指摘されました。これならば、本譜のように黒がポーンを突き捨て、白キングを弱体化させるアイディアは使えません。確かに、ここは少し勇み足でした。

22... Qd7 23. Rd1 e3!?



実戦的には非常に良いアイディアです。黒はどうせ落ちてしまうポーンを自ら相手に差し出し、白のポーンをfファイルからeファイルにずらしておきます。シンプルなアイディアでありながら、試合中あまり警戒していませんでした。

24. Bxe3 Bxe3 25. fxe3 Rd8 26. e4 Qe7 27. Nf5


ここはピンにされたナイトをどう組みかえようかと、工夫を凝らします。

27... Qf6 28. Qb3 g6 29. Rxd8+ Qxd8 30. Ne3 Qd2 31. Ng4?



指した直後に、これはまずい手だと分かりましたが、羽生さんに指摘されるまではなにが正解なのか気づいていませんでした。白の正着は、31. Nf1! とナイトを下げる手で、攻めよりも守りを重視するべきでした。f1 のナイトはアタックされる心配がなく、e3 のマスも守り続けているために黒クイーンのチェックも防いでいます。そうして守りをきちんとした後で、b7 を取りにいくなり、クイーン交換を持ちかけるなり、仕掛け方を考えるべきでした。

31... Qe1+! 32. Kg2 Qxe4+


e4-e3 によって弱められたポーンを奪い返され、さらにキングが危ない状況へと追い込まれます。

33. Kh3 Kg7 34. Qxb7 h5 35. Nf2 Qf3 36. b4 g5 37. b5 Qxf2 38. Qxc6 Qf1+ 0-1



はっきりとした駒得から負けるというのは、やはり悔しいものです。この後のラウンドでも、羽生さんはAnton さんと馬場さんを破り、5連勝での優勝を決めたのでした。


前回は負け越しだった弘平くんも、羽生さんと青嶋くんに負けた以外、3試合を勝って2位グループに入っています。タイブレークのブリッツを制したのは良かったですが、3/4 でリードしながら迎えた最終戦、白で青嶋くんに負けてしまったのは勿体なかったですね。羽生さんに敗れた初戦も、内容は良かったと聞いています。


IVL 初参戦の青嶋くんも、見事に勝ち越しです。2R で早速注目の羽生さんとの試合があり、敗れはしたものの、かなり良い勝負だったと思います。明日以降、棋譜をチェックできることも楽しみにしています。チェス界注目のニューフェイスは、今後も活躍を続けることでしょう。


日本に来て3か月というAnton Frisk さんは、本来の実力を出し切ってはいないと思いますが、それでも地力があることが分かる結果と内容でした。今後、東京での公式戦にも是非参加してもらい、日本のプレーヤーとの交流を広げていってほしいと思います。


私も今回は、なんとか勝ち越しを果たしましたが、まだまだ満足のいく結果ではありません。来月のジャパンリーグに向け、もっと調子と実力を上げていこうと思います。

今回も急なスケジュールの中で、10名のプレーヤーに参加していただいたこと、運営責任者として深く感謝します。また次回のIVL 開催の際も、よろしくお願い致します。

2015/07/17

蒲田温泉に行ってみた


今日は、明後日のトークイベントの打ち合わせのために池袋を訪れた後、品川でのレッスンまで時間があったため、蒲田の温泉に足を運んでみました。現在、自宅の風呂が工事中で使えないためです。ハンガリーでは、ルカーチ、セーチェニ、ルダシュ、ゲッレールトなどの有名な温泉に足を運んできましたが、蒲田の温泉は西口のなごみぐらいしか行ったことがありませんでした。チェスプレーヤーにとって、試合が毎月開催されることでなじみの深い蒲田ですが、天然温泉が湧いていることでも、実は有名なのです。

蒲田温泉はJR 蒲田駅から徒歩15分ほど、蒲田本町二丁目にあります。一見すると古い普通の銭湯ですが、名の通り天然温泉です。料金を払って浴場に進むと、温泉の湯は真っ黒で、浸かった体の部分は全く見えません。水質は少しぬめっていて、古い角質を溶かして肌をすべすべにする効能があるそうです。これが黒湯と呼ばれる天然温泉の特徴ですね。蒲田温泉には、42度と44度の黒湯風呂が2種、他にジャグジー風呂、電気風呂、サウナ、水風呂などが揃っています。


私があえて蒲田駅から少し離れた蒲田温泉を選んだのは、値段と設備のバランスを考えてのことです。西口駅前にある温泉施設、なごみは設備が大変充実しており、その点は文句のつけようがありませんが、入浴料が2300円とやや高額です。それに対して蒲田温泉は、タオルなどの貸し出し無しの基本入浴料が460円という安さです。浴室にはシャンプーとボディーソープもあり、サウナも基本入浴料に含まれています。(シャンプーが浴場になかったり、サウナだけ別料金の銭湯はざらにあります。)

蒲田温泉は、平日の夕方でも年配のお客さんで賑わっていますし、料金と設備を考えれば、非常に満足でした。これから暑いシーズン、皆さんも蒲田で試合をこなした後に、温泉でリフレッシュしてみてはいかがでしょうか。

蒲田温泉

2015/07/14

16th IVL Tournament Information


15th IVL より Photo by Hasegawa

今週末はIVL、サマーオープンと大会が続きます。IVL は今回初めて、羽生さんからのリクエストで日程が決まり、開催する運びとなりました。初参加の豪華なゲストも含め、ハイレベルな戦いとなりそうです。以下、参加予定者のリストです。

小島慎也 (IM, JPN, 2449)
羽生善治 (FM, JPN, 2415)
青嶋未来 (JPN, 2407)
Kockum Anton Frisk (FM, SWE, FIDE 2358)
塩見亮 (JPN, 2221)
山田弘平 (CM, JPN, 2220)
汐口達也 (JPN, 2029)
吉村謙治 (JPN, 1907)


今回のリストは、日本のレイティングで決めることにしてあります。まだ参加予定者は確定ではなく、もう少し増える可能性もあります。


今年の新潟国際親善チェス大会で、GM Zhou と対戦する羽生さん

先週末は新潟で、GM Zhou Jianchao を始めとるする、中国のマスターたちと試合をこなしてきた羽生さんは、非常に勢いがあると思います。前回のIVL も全勝優勝で、私もここのところトレーニングで歯が立ちません。今回のIVL では、私がリストトップにこそなっていますが、誰が羽生さんにストップをかけるかが最注目なのではないかと思います。


5月にメインゲストとしてニコ生に参加した青嶋くん

IVL 初参戦となるプロ棋士の青嶋くんも、チェス界が注目するニューフェイスです。6月の快速選手権では、日本の上位勢を抑えて7勝1敗という戦績で優勝を果たし、日本のチェスプレーヤーたちに衝撃を与えました。IVL も快速選手権と同じ持ち時間ですので、得意の早指しで、タイトルホルダーとどのような試合をするのか、個人的にはとても楽しみにしています。


今年の新潟国際親善チェス大会Aクラスで優勝し、表彰されるAnton さん(左)

そして更なるゲストは、スウェーデンのFM Kockum Anton Frisk さんです。IM ノームを4つ持ち、ベストレイティングは2375 であるAnton さんは、間違いなくIM に近い実力があるでしょう。トロムソオリンピアードで日本が敗れた北欧の強豪国、スウェーデンのマスターは、どのようなチェスを見せてくれるでしょうか。今回、急な誘いにもかかわらず、参加を決めてくれたことに、とても感謝しています。

今回は、GM Pablo Lafuente が参加した、昨年6月のIVL に負けず劣らず、豪華なメンバーが揃いました。優勝の行方は、今のところ全く予想ができません。私も前回のIVL で負け越した雪辱を晴らすべく、ここで奮起して、しっかりとしたプレーをしてきたいと思います。大会後のレポートも、お楽しみに! 運営責任者として、台風が来ないことも願っています(笑)

2015/07/10

Chinese Veteran Masters


イスタンブールオリンピアードの中国代表チーム

私が最初に中国トップのプレーヤーたちを意識したのは、2006年に参加したアジア大会でのことです。その時はBu Xiangzhi とWang Yue が男子代表、Zhao Xue が女子代表でした。翌年にマカオで開催されたアジアインドアゲームズでは、さらにNi Hua が加わり、80年代生まれのプレーヤーを中心としたチームでした。

それが、2013年のアジアインドア & マーシャルアーツゲームズでは、若い世代のDing Liren とYu Yangyi が男子代表となり、女性代表も当然ながら、世界チャンピオンのHou Yifan でした。中国では代表争いが非常に熾烈で、2700クラスで非常に実績のあるプレーヤーでも、若い世代に追いやられて代表の座を退くことがあります。昨年のトロムソオリンピアードで、中国がWang Hao, Bu Xiangzh、Li Chao 抜きのメンバーで優勝したことは、私の中でとても印象深く残っています。

しかし、中国のベテラン勢も負けていません。現在、中国のダン州市では、中国のGM 8人+海外のGM 2人による、ラウンドロビントーナメントが開催されています。ここまで7R を終え、87年生まれのWang Yue が6/7 でリードし、それに83年生まれのNi Hua が、5/7 で続いています。Bruzon を相手に素晴らしいゲームをした、16歳のWei Yi の活躍などもこれから楽しみではありますが、私と同じ80年代生まれのWang Yue らが、まだまだ中国のトップとして、若い世代の前に壁として立ちふさがってほしいと個人的には思っています。

Bruzon, L (GM, CUB, 2669) - Wan Yue (GM, CHN, 2716)
6th Hainan Dangzhou GM 2015 (6)

1. e4 e5 2. Nf3 Nf6 3. Nxe5 d6 4. Nf3 Nxe4 5. d4 d5 6. Bd3 Nc6 7. O-O Be7 8. Re1 Bg4 9. c4 Nf6 10. Nc3 Nxd4 11. cxd5 Bxf3 12. gxf3 c5 13. d6 Qxd6 14. Nb5 Nxb5 15. Bxb5+ Kf8 16. Qe2 Qc7 17. Bf4 Bd6 18. Bxd6+ Qxd6 19. Rad1 Qc7 20. Qe3 a6 21. Ba4 h5 22. Rd5 Rc8 23. Re5 b5 24. Re7 Qb8 25. Bb3 c4 26. Bc2 Rh6 27. Ra7 Nd5 28. Qd4 Rd8 29. Qh4 Kg8 30. Rb7 Qd6 31. Rd1 Qf8 32. Kh1 Rhd6 33. Rg1 Nf6 34. a4 bxa4 35. Bxa4 Kh8 36. Qxc4 Rd4 37. Qb3 Nd5 38. Bc6 Kg8 39. Bxd5 R4xd5 40. Qc4 Qd6 41. Qc3 g6 42. Qb3 Qf4 43. Rb6 a5 44. Rg3 Kh7 45. Qc3 Rf5 46. Rc6 Qd2 47. Rgxg6 Qxc3 48. Rh6+ Kg7 49. bxc3



49... f6! 0-1


少し珍しい形ですが、黒はこれでh6 のルークをトラップし、勝負ありです。イスタンブールオリンピアードでは、南條くんを相手に素晴らしい指し回しをしたキューバ代表のBruzon も、中国でのトーナメントでは非常に苦しい戦いを強いられています。

今年に入っても、中国のGM たちは各地で好成績を残しており、まだまだトップ争いは激しく続きそうです。明日は新潟で、羽生さんや南條くんを揃えた日本代表勢と、中国のGM たちが対戦するイベントがありますので、そちらの結果とゲームも、楽しみに待っていようと思います。

2015/07/08

Nagoya Open 2015 Tournament Information


2014年の名古屋オープン、入賞者たち

今年も名古屋でのビッグイベント、名古屋オープンの開催時期が近づいてきました。名古屋チェスクラブのHP では、すでに日程や詳細を確認することができます。今年は8月最終週の土日、8月29日、30日の開催ですね。

【日時】 2015年8月29日(土)、30日(日)
【会場】 青少年文化センター(アートピア) 9F第3研修室(最寄駅:矢場町駅、栄駅)
【形式】 スイス式6回戦 60分+1手30秒
【参加費】 10000円 (18歳未満8000円)
【賞金】 優勝 100000円、準優勝 50000円、3位 25000円、Aクラス優勝 25000円

昨年はオリンピアード直後、3年ぶりに名古屋を訪れました。中部快速ではなんとか優勝できたものの、名古屋オープンでは、ベトナムのPhan さんに負けて2位に終わった悔しい思い出があります。それを払拭するためにも、今年も名古屋オープンに参加することを決めました。少し早いですが、すでにエントリーも済ませています。

7月は来週のIVL 以外に参加する大会はありませんが、8月は半ばのJapan League と、末の名古屋オープンと試合が続きます。名古屋オープンの前後は、合宿の引率で忙しくなりそうですが、今年こそしっかち勝ってきたいですね。他にも関東から参加を検討しているメンバーや、久々にお会いする名古屋のメンバーは、よろしくお願い致します。大会の詳細は、名古屋チェスクラブのHP でも、チェックしてみてください。

名古屋オープン 2015

2015/07/03

Dortmund 2015


久々に海外大会の話題です。この時期恒例のドイツ、ドルトムントでのトーナメントは、今年も無事に開催され、ここまで4R までが消化されています。今年の地元枠は、ドイツNo.1 プレーヤーのNaiditsch、すっかりドイツ代表が板についたGeorg Meier(ドレスデンオリンピアードでは、まだドイツ2軍のメンバーでした。)、そしてルーマニアの元No.1 で、ドイツに移籍したNisipeanu です。このドイツの3人に、海外勢の5名を加え、計8名でのラウンドロビンが行われています。

4R を終わってトップに立っているのは、連勝連続ドローのNisipeanuと、初戦痛い負けながら、3連勝で上がってきたKramnik です。今夜を含め、残り3戦でどのようなスコアになるかは分かりませんので、焦らず見守るつもりです。注目の2人の直接対決は明日の夜で、Kramnik が白を持ちます!

Nisipeanu, L (GM, GER, 2654) - So, W (GM, USA, 2778)
Dortmund 2015 (1)

1. e4 c5 2. Nc3 d6 3. f4 g6 4. Nf3 Bg7 5. Bb5+ Bd7 6. Bxd7+ Qxd7 7. O-O Nc6 8. d3 e6 9. f5 Nge7 10. fxe6 fxe6 11. Ng5! Ne5 12. Nb5!


12... Qxb5 13. Nxe6 Kd7 14. Nxg7 h5 15. a4 Qb6 16. a5 Qb5 17. c4 Qc6 18. b4 Rh7 19. bxc5 Rxg7 20. Rf6 Nc8 21. d4 Ng4 22. Rf3 Qxe4 23. h3 dxc5 24. dxc5+ Ke8 25. hxg4 Ne7 26. Qf1 Rg8 27. Bb2 hxg4 28. Re1 1-0


Nisipeanu は初戦、アメリカに移籍したばかりのSo Wesley を大胆なナイトの連続跳びこみで下しました。もちろん、その後の指しまわしも丁寧で勉強になります。私は2008年にNisipeanu と直接対決、2012年にKramnik と食事をしており、どちらもちょっとした縁のあるプレーヤーです。明日どちらを応援するかは、今夜の試合を見ながら決めることにしましょう。今夜のライブゲームは、以下からチェックしてみてください。

Nisipeanu - Meier
Kramnik - Caruana

Copyright © 2011 Shinya Kojima All rights reserved.