2016/06/10

The Highest Level Training in Japan on 8th June 2016


一昨日の水曜日、羽生さんと久々にチェスのトレーニングをしてきました。持ち時間は25分+1手30秒で、通常のラピッドよりも長めのゲームを白黒1局ずつ指します。今回は午前中に指した、黒番のゲームをご紹介します。

Habu, Y (FM, JPN, 2399) - Kojima, S (IM, JPN, 2394)
Training (1)

1. Nf3 Nf6 2. c4 c6 3. g3 d5 4. Bg2 dxc4 5. O-O Nbd7 6. Qc2 Nb6 7. Na3 Qd5!?



2009年に参加したベトナムのゾーン選手権で指して以来、久々にこの変化を使ってみました。クイーンを早々に何度も動かす手は普段あまり指しませんが、このポジションではc4 を簡単に取り返させてしまうと、白はセンターポーンの厚みで優勢になるため、黒は何らかの工夫が必要です。ちなみにこの数年で、7... Be67... b5 も指しています。

8. Ne1


English Opening のエキスパートであるGM Mihail Marin であれば、ポーンのギャンビットを推奨するでしょう。8. b3!? cxb3 9. axb3 と進んだ場合、白はポーンを捨てていますが、センターポーンの厚みとクイーンサイドへのプレッシャーで代償を取れそうです。

8... Qd4 9. e3 Qg4 10. f4 Qf5! 11. e4 Qc5+ 12. Kh1 e5!



序盤、このように進んで黒は満足です。黒マスビショップのダイアゴナルを開きつつ、白のセンターを崩しにいきます。

13. fxe5 Ng4 14. d4 cxd3!?


検討戦では、d4 を取るのは危なく、人間的な判断ではないだろうとの結論になっています。しかし、14... Qxd4 15. Nf3 Qd3 16. h3 h5!? このようになれば黒良しだとコンピュータは指摘します。私としては、欲張って駒得を広げようとするよりも、g4 のナイトをプレーに戻すことや、ピースの展開の遅れを取り戻したいところです。

15. Nxd3 Qxc2 16. Nxc2 Be6 17. b3 O-O-O 18. Nce1?!



この手は私にとって意外でした。18. Nf4 からe6 のビショップを狙い、Bg2-Bh3 も含めてポーンを取り返すアイディアのほうが良いと思います。

18... Nd7 19. Bf4 h6 20. h3 g5


ここから局面は大きく特徴を変えます。ピース交換を進め、黒が満足なエンドゲームに突入します。

21. hxg4 gxf4 22. gxf4 Bxg4 23. Bf3 Bxf3+ 24. Nxf3 Nc5 25. Nf2 Nd3 26. Nxd3 Rxd3 27. e6?!



このポーンサクリファイスは予想していなかったわけではなかったですが、それでも成立するか自信はなく、あまり深く読んではいませんでした。これ以外の選択肢であれば、ルークを交換するアイディアを考えますが、27. Rad1 Rxd1 28. Rxd1 Rg8 29. Rg1 Rxg1+ 30. Kxg1 b5 となった場合、クイーンサイドポーンマジョリティとビショップを持つ黒にとって、楽な展開であることは間違いないでしょう。

27... fxe6 28. Ne5 Rg3 29. Rg1 Rh3+ 30. Kg2 Rc3 31. Kh2 Bd6 32. Ng6 Rd8 33. Rg2 Re3


ここは細かい差ですが、33... Rf3! のほうが後々相手キングをfファイルでカットオフしている分、本譜よりも良かったかもしれません。

34. e5 Ba3 35. Rag1 Rdd3 36. Rg3 b5!?



27手目の時点では、クイーンサイドポーンマジョリティとビショップを持っているならば、ルークを2つ交換して勝ちのチャンスがあるエンドゲームだと考えていました。しかし、ここでは白がキングの位置を改善していることもあり、勝てるという自信が揺らぎました。そこでルーク交換は1つにしておき、bポーンを進めておいて様子を見ることにします。

37. Rxe3 Rxe3 38. Rg2 Kb7 39. Rd2 Kb6 40. Kg2 Bb4 41. Rf2 c5?


この試合で初めて、黒に悪手らしい悪手が出ました。41... Bc5 からf2 を抑え、ゆっくりとクイーンサイドを進めておくのが良かったでしょう。時間がなかったこともあり、白の次の手は指されるまで全く気付きませんでした。白はe6 のポーンを奪い、2コネクテッドパスポーンを作って反撃します。

42. Nf8! c4 43. Nxe6 Be1?



お互いに検討戦でも気づいていませんでしたが、この2つ目の悪手で形勢は逆転しています。ビショップはもぐり込んでいたほうが、パスポーンのサポートをしやすいと思ったのが完全に勘違いでした。43... c3 44. Rc2 Bc5-/+ としておけば、まだまだ黒が優勢です。

44. Rf3 Rxf3 45. Kxf3 c3 46. Nd4 Kc5 47. Nc2?


しかし、羽生さんもここでは時間がなく、不正確な手が出てしまいます。47. Ke4! Bf2 48. e6! (48. f5? Bxd4 49. f6 Bxe5 50. Kxe5 c2 51. f7 c1=Q 52. f8=Q+ Kb6-/+ では黒優勢です。) 48... Kd6 49. Nxb5+ Kxe6 50. Nxc3+/- なんと白は黒のポーンを2つ奪えてしまいます。検討戦では、47. Ke4 のほうがベターであることは気づいていましたが、fポーンではなくeポーンから進めるべきであることを、お互いに見落としていました。

47... Bh4?



ここはミスの応酬が続きます。2コネクテッドパスポーンを止めるためには、h4-d8 のダイアゴナルを抑えるべきだと判断しましたが、虎の子のc3 を落としてしまっては、再び白優勢に転じてしまいます。47... Bd2! 48. Kg4 Kd5 49. Kf5 Kc5 50. Ke4 h5 51. Kf5 h4 52. e6! (52. Kg4? Kd5 53. Nb4+ Ke6 54. Nc2 h3 55. Kxh3 Bxf4 56. Kg4 Kxe5-+) 52... h3 53. e7 h2 54. e8=Q h1=Q= このようにクイーンを作り合ってイコールであるというのは、なかなか読めない難しい変化です。

48. Kg4?


試合の結果を決める最後の悪手は、白を持つ羽生さんから飛び出しました。hポーンではなく、cポーンを狙いにいけば白の勝勢です。48. Ke4! Kc6 49. f5 Kd7 50. Kd3+-

48... Bd8-/+ 49. Kh5 Kd5 50. Kxh6 Ke4 51. Kg6 Kxf4 52. e6 Ke4



お互いにポーンを取り合いますが、ナイトでパスポーンをブロックしている白のほうが厳しい状況です。ここからはもう少しスムーズに勝てると思いましたが、時間がなくなかなか正確な手をすぐには見つけられませんでした。

53. Kf7 Kd3 54. Nb4+ Kd2 55. Nc6 Bh4 56. Nd4 c2


ビショップを取られても、先にクイーンを作れば勝つチャンスはあるでしょう。もちろん、確実に黒だけがプロモーションできるアイディアを見つけられれば良かったのですが、ナイトとキングに追い立てられたビショップに逃げ場は無く、黒の選択肢はポーンを進める以外にありません。

57. Nf3+ Kd3 58. Nxh4 c1=Q 59. e7 Qf4+



試合中はまだ結果が読めず、チェックを続けながら勝つ方法を模索します。黒はキングがクイーンサイドに近いため、ナイトを取ってからクイーンを交換し、勝ちのポーンエンディングに持ち込めるチャンスがあるはずだと信じます。

60. Kg7 Qe5+ 61. Kf7 Qf4+ 62. Kg7 Qe5+ 63. Kf7 Qd5+ 64. Kf8 Qd6 65. Kf7 Qd7 66. Kf8 Qd6 67. Kf7 Qd5+ 68. Kg7 Qd4+!


62手目でもできた、このチェックで勝てることを読み切りました。

69. Kf7 Qxh4 70. e8=Q Qh5+



これでポーンエンディングに持ち込みます。白キングの動きは2通り考えられますが、どちらも黒が勝てるでしょう。

71. Ke7 Qxe8+ 72. Kxe8 b4 73. Kd7 Kc3 74. Kc6 Kb2 75. Kc5


75. Kb5 Ka3 76. Ka5 a6!-+ 白キングの寄るマスがすぐにb5 ならば、これでツークツワンクとなり、黒の勝ちです。

75... a5 0-1



最後はこの手以外は白の勝ちとなります。改めてエンドゲームの難しさを体験しました。今月はもう1回、羽生さんとトレーニングをする機会があるかもしれませんので、そちらも良いゲームができるように頑張ってこようと思います。



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