2016/01/28

GM Arkadij Naiditsch Simultaneous Event


バーゼルでプレー中のNaiditsch photo from Chess News

突然ですが、同時対局イベントの告知です。来月頭、アゼルバイジャンのトップグランドマスター、Arkadij Naiditsch が来日します。Naiditsch と言えば、今月のスイス、バーゼルのトーナメントで、羽生さんと対局したことを覚えているチェスファン、将棋ファンも多いのではないかと思います。その縁で今回、急な来日が決まり、羽生さんと私の協力の元、同時対局イベントを開く流れとなりました。Naiditsch は、世界チャンピオンのCarlsen に公式戦で連勝中の、世界でも数少ないプレーヤーです。是非この機会に、世界トップクラスのGM との対局をお楽しみください。

【日時】 2016年2月11日(祝) 13時開場、13時半対局スタート
【会場】 東京大学駒場キャンパス 21 KOMCEE WEST 地下ホール(最寄駅:駒場東大前駅)
【形式】 30面同時対局
【申し込み】 前日までに、shinya.kojima.chessplayer(a)gmail.com((a)を@ に変えて)宛てにメールでお申し込みください。
【参加費】 一般5000円、学生3000円
【備考】 先着の30名を超えた場合、参加できない可能性があることをご了承ください。
盤駒はご持参ください。盤駒をお持ちでない方は、その旨、申し込みの際にメールでお知らせください。

【ゲスト経歴】 1985年、ラトビアの首都、リガ生まれ。
1995年、European under-10 championship で優勝。
2005年、世界トップクラスのプレーヤーが集まるDortmund Sparkassenで優勝。
ベストレイティングは2737。
2005年からドイツ、2015年からアゼルバイジャンのプレーヤーとして活躍している。

2016/01/26

Weekly Chess Puzzle Vol.19


Tanzawa, Y - Kojima, S
ACC Rapid 2004 Winter
Black to move

10年以上前のゲームからの出題です。私のレッスンを受けている生徒にとっては、見慣れているポジションかもしれませんね。私はこの手の作り方を、白黒逆ですが、Steinitz のEvans Gambit を勉強中に覚えました。答えが分かった方は、お気軽にコメント欄へどうぞ。

2016/01/22

Tata Steel 2016


Van Wely との試合に臨むCarlsen, Chess News より

London Chess Classic が始まると、1年ももう終わりかなと思いますが(今はQatar Masters かな?)、それに対して、1年の始まりを感じるのはTata Steel でしょう。今年もオランダのWijk aan Zee に世界のトッププレーヤーが集まり、伝統のトーナメントが行われています。今年も、オランダから送られてくる熱戦の様子をチェックしています。

今年の上位クラス、Tata Steel Masters のメンバーをチェックしていて驚いたのは、中国からトップGM のDig Liren、女子世界チャンピオンのHou Yifan、そして16歳のWei Yi の3人が参加していることです。Wei Yi は昨年、下位クラスのChallengers で優勝しているので、今年はMasters に入る権利があります。それでも、中国から3人のプレーヤーがTata Steel(かつてのWijk aan Zee)に参加するようになったとは、時代の変化を感じざるを得ません。中国は現在、男子も女子も名実ともに、世界トップクラスと言えるでしょう。

昨晩までで5R を消化したMasters は、アメリカのCaruana と中国のDing Liren が3.5P、それにCarlsen らが3P で続いています。これまで大人しいプレーを続けていたCarlsen は、昨日はVan Wely を相手に彼らしいプレーを見せてくれました。

Loek van Wely (GM, NED, 2640) - Magnus Carlsen (GM, NOR, 2844)
Tata Steel Masters 2016(5)

1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 d5 4. Bf4 Bg7 5. e3 O-O 6. Rc1 Be6 7. cxd5 Nxd5 8. Nxd5 Bxd5 9. Bxc7 Qd7 10. Bg3 Bxa2 11. Ne2 Bd5 12. Nc3 Bc6 13. h4 Rd8 14. Qb3 Qf5 15. h5 e6 16. hxg6 hxg6 17. Qd1 Nd7 18. Bd3 Qa5 19. Kf1 Nf6 20. Be5 Rac8 21. Qd2 Ng4 22. Bxg7 Kxg7 23. f3 Qg5 24. fxg4 Rxd4 25. Ke1 Qe5 26. Ne2 Rxg4 27. e4 Rxg2 28. Qh6+ Kf6 29. Rc3 Rd8 30. Qh3 Qg5 31. Rf1+ Kg7 32. Qf3 Rd7 33. Rf2 Rg4 34. Nf4 Qh4 35. Be2 Rg1+ 36. Bf1 Kg8 37. Ne2??


37... Rxf1+! 38. Kxf1 Rd1+ 39. Kg2 Bxe4 0-1


Tata Steel は全13R ですので、まだ半分も終わっていません。また今夜もライブを見ながら、トーナメントの経過を見守っていこうと思います。。Adams が今回、悲しいことにすでに3敗で最下位に沈んでいるので、私はEljanov を応援するつもりです。

Tata Steel Masters Live

2016/01/19

20th IVL Tournament Report


Photo by Hasegawa

一昨日の日曜日、今年最初のIVL が開催されました。今回は10名の参加者でしたが、上位勢は私、羽生さん、Antonさん、青嶋くん、馬場さんというレイティングの高いメンバーが揃いました。5R を戦い、上位の順位は以下のようになっています。

1st Place Baba Masahiro (CM, JPN, 2305) 4.5/5
2nd Place Habu Yoshiharu (FM, JPN, 2418) 4/5
3rd Place Shiomi Ryo (JPN, 2174) 3/5


私は11月以来、2大会ぶりの優勝を目指しましたが、4R で馬場さんに敗れて、2位タイの3P止まり。通算6回目の優勝はお預けです。このIVL では、珍しくメイトまで指したゲームが2つあったので、それらをご紹介しようと思います。


Kojima, S (IM, JPN, 2463) - Yamada, K (JPN, 2223)
20th IVL (1)
Position After 17... Rfc8

19. Be5! Nd5 20. Rg4!


これで一気に黒キングを攻めたてれば勝負ありです。黒には満足なディフェンスがありません。

20... g6


本譜は白のアタックが決定的ですが、20... g5 21. h4!+- こちらも時間の問題でしょう。

21. Rxg6+! fxg6 22. Qxg6+ Kf8 23. Rxd5! exd5 24. Qg7+ Ke8 25. Qg8+ Ke7 26. Nxd5# 1-0



最後はルークとエクスチェンジをサクリファイスし、残ったピースでぴったりメイトとなります。もう1つは馬場さんに敗れたゲームから。


Kojima, S (CM, JPN, 2463) - Baba, M (CM, JPN, 2308)
20th IVL (4)
Position After 24. Rd1

24... Qh2+ 25. Kf1 Nxe3+!


頭にありながらも、私はこの手を軽視していました。白キングのディフェンスを崩し、黒がアドバンテージを得る好手です。

26. Qxe3?


26. fxe3 Bh3 27. Rg7+ Kh8 28. Rd5 Qxg2+ 29. Ke1 Bg4 30. Qc2 Qxg3+ 31. Kd2=/+ このようにキングが逃げられるようにすれば、白は劣勢ながらも、体勢を立て直すチャンスを得られます。本譜のメイトスレットに気づかなかったのは不覚でした...

26... Bh3 27. Rg7+ Kh8 28. Rd5 Qh1# 0-1



直前でこのメイトに気づくも、防ぐ方法はありません。この黒星で優勝の目は消え、馬場さんの独走を許してしまいました。白での負けは悔しいですが、Grunfeld の対策として、自分が本当に指したいポジションがどういったものか、少し掴めたような気がします。


2R で羽生さんと対戦中の馬場さん

20回目となる今回のIVL では、現日本チャンピオンの馬場さんが、4.5/5 という戦績で優勝です。2R で羽生さん、4R で私をともに黒で破り、他の試合でも安定した指しまわしを見せてくれました。昨年は全日本選手権とチーム選手権で優勝を果たし、国内レイティングを2300台に乗せています。今年も全日本選手権に参加するのであれば、強力なライバルとして立ちはだかることは間違いないでしょう。

今回、急な呼びかけにもかかわらず10名のプレーヤーに集まっていただけたこと、とても感謝しています。また今年もコンスタントにIVL を開催していきたいと思いますので、よろしくお願い致します!

2016/01/14

Weekly Chess Puzzle Vol.18


Sano, T (JPN, 2156) - Kojima, S (FM, JPN, 2369)
Japan Open 2011(3)
Black to move

今日はタクティクス1題だけの出題にしておきます。ハンガリーに行く前に、佐野さんと指したゲームから。私のFrench Defence のゲームの中で、最も綺麗に決まったものの一つです。答えはコメント欄にどうぞ。

2016/01/11

New Year Open Tournament Report


今年の新年チェス大会入賞者 Photo by Yumiko Hiebert

昨日は今年初の公式戦、新年チェス大会に参加してきました。事前の申し込みからさらに増え、50人を超える参加者が集まって、会場は大いに盛り上がっていました。私は初戦で前田さん勝ち、2,3R は仕事でbye をとり、4R で同じ日本代表の三ツ矢さんと対戦です。久々にExchange Variation ではない、Slav のメインラインになりました。


Mitsuya, N (JPN, 2140) - Kojima, S (IM, JPN, 2463)
New Year Open 2016 (4)
Position After 32... Bb8


33. g3?


時間の無い中、ここで白がb8-h2 のダイアゴナルを止める安全策を取りたくなる気持ちは分かります。しかし、ここは白から攻撃に行って勝勢です。私も三ツ矢さんも、検討戦で見落としていた手がありました。33. Bc4! Qf4 (33... Red7 34. Rxa6+- ) 34. g3 Qxd4 35. Rxd5 Rxd5 36. Bc3! 私たちが見つけられなかったのはこの手です。こうしてa1 のルークを守りつつ、クイーンに反撃を仕掛ければ白の勝ちです。(36. Bxd5? Qxa1 37. Qxb8+ Kg7-+) 36... Qa7 37. Rxa6+- これで白の駒得で、黒からは反撃もありません。

33... Ba7! 34. h4 Qf5 35. Bd3?!



私から検討で指摘した、35. Bh3? Qf6! 36. Rxd5 Rxd5 37. Qxd5 Bxd4 38. Ra2 (38. Rd1 Rxe1+! 39. Rxe1 Qxf2+-+) 38... Rxe1+ 39. Kg2 Kg7-+ という筋は、黒良しでした。代わりに、35. Rd1!? という手は非常に面白いです。35... Bxc5 36. dxc5 と進んだ場合、d5 のナイトが負担となり、黒はエクスチェンジアップながら苦しい状況です。

35... Qe6 36. Rca5?


これでd4 が取れるようになり、完全に黒に形勢が傾いたことを確信しました。36. Ba5! Bxc5 37. Bxd8 Bxd4 38. Bxe7 Bxa1 39. Bc5= とすれば、この後でa6 を落とし、形勢は互角でしょう。

36... Bxd4 37. Rd1 Qg4



37... Qf6! 38. Rxd5 Rxe1+!-+ ももう一つの勝ち筋です。f2 へのアタックを中心にクイーンの位置を決めるこちらの変化に対し、私はg3 をメインのターゲットにします。

38. Bc4 Nb6 39. Bd3


本譜はg3 が落ちて厳しいことが明らかですが、39. Rg5 Bxf2+ 40. Kxf2 Qxd1 41. Qxd1 Rxd1 42. Rxg6+ Kf8 43. Rxb6 Rexe1 44. Bxa6 Re6-+ この駒割りでも、黒は勝つことができるでしょう。

39... Qxg3+ 40. Kf1 Qh3+ 41. Kg1 Rde8 42. Qb4 Qg3+ 43. Kf1 Rxe1+ 0-1



40... Rxe1 は逃しましたが、最終的にはe1 のビショップを消してメイトです。45分指し切りは久々で緊張し、悪い手も指しましたが、最終的には勝ち切れて良かったです。

Aクラスは優勝はGaryくん、岸くんに勝ち、4連勝を果たした入江さんでした。会場に戻った直後、3R のGary とのゲームがクライマックスでしたが、有利なルークエンディングから、残り2秒でメイトにする大熱戦でした。かつて海外大会でチームメイトとして一緒に戦ったメンバーが、こうして再び活躍してくれるのは、とても嬉しいことです。他の入賞者、参加者の皆さんもお疲れ様でした! あらためて今年の公式戦も、よろしくお願い致します。

2016/01/08

Saturday Lecture on January 23rd 2016


White to move

【日時】 2016年1月23日(土) 12:30~14:30
【会場】 チェスセンター(最寄駅:池上駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答
【テーマ】 Tactical and Position Ideas In Openings
【テーマ詳細】

チェスのオープニングは数えきれないほどありますが、その中には面白いタクティクスや、ポジショナルプレーを学べるものがあります。単純にも見える序盤でも、豊富なアイディアが隠れており、それを勉強することは多くのプレーヤーにとって、レベルアップにつながるでしょう。今回はそんな序盤から学べる面白いアイディアをご紹介したいと思います。

【参加費】 レクチャー代1200円+飲み物代200円
【参加資格】なし
【対象】 レイティング2000未満

2016年最初のレクチャーとなります。今回、いつもとは30分違い、12時半スタートとなります。ご注意ください。

2016/01/06

Zurich and Basel Tournament Report


チューリッヒでプレーする羽生さん Photo from Chess News

先程、羽生さんが参加していたBasel Chess Festival の最終戦が終わりました。これで年末年始の、スイスでの14連戦は全て終了です。前半のチューリッヒでは4勝1敗2ドローと健闘し、レイティングも伸ばしましたが、後半のバーゼルでは最終戦で痛い黒星。3勝2敗2ドローとなりました。最終戦の棋譜をアップしておきます。

Pijpers, A (IM, NED, 2463) - Habu, Y (FM, JPN, 2398)
Basel Chess Festival 2016 (7)

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 a6 4. Ba4 Nf6 5. O-O Be7 6. Re1 b5 7. Bb3 d6 8. c3 O-O 9. h3 Bb7!?



2012年のCheck Mate Lounge から、羽生さんが1... e5 をレパートリーに取り入れていることは知っていましたが、9... Nb8 のBreyer Variation を指すものとばかり思っていました。Ruy Lopez の中でも激しい変化になりがちなZaitsev を選択するとは、勝負に行く気満々です。

10. d4 Re8 11. Nbd2 Bf8 12. a4 h6 13. Bc2 exd4 14. cxd4 Nb4 15. Bb1 c5 16. d5 Nd7 17. Ra3 c4 18. Ree3!?


18. Nd4 もしくは、14. axb5 を指すことが多いので、この手は少し驚きました。Ra1-Ra3-Rg3 のマヌーバリングはよく知られていますが、この試合では別のルークがgファイルに向かい、黒キングへのアタックに使われます。

18... Nc5 19. b3!


e3 にルークを上げる手は、黒のナイトがd3 に侵入してきた際にあらかじめ避けておくだけでなく、この手のサポートになります。

19... cxb3 20. Nxb3 Nxa4 21. Nfd4 Rc8 22. Bd2 Nxd5!?



1ポーンを取った黒ですが、白のピースは好位置におり、黒キングにダイレクトアタックを仕掛けるチャンスもあります。そこで羽生さんは、ポジションを怪しくするためにナイトをサクリファイスします。

23. exd5 Bxd5 24. Rg3 Be4?!


ここでh6 を捨ててしまうと、白にとって楽な展開になってしまいます。苦しい状況は続きますが、24... g6 から、Bf8-Bg7 の機会をうかがうほうが良かったかもしれません。

25. Bxe4 Rxe4 26. Bxh6 Nc3 27. Qa1!



私がこの試合で最もしびれる手が何かと聞かれれば、このクイーンの1手だと答えるでしょう。Qd1-Qh5 のダイアゴナルで使うのだと思っていましたが、Pijpers はクイーンを端のマスへと移動させました。これによりa6 を狙うだけでなく、Qa1-Qg7 を長期的ににらんでいます。

27... Qe8 28. Bd2 b4 29. Rxa6 Qe5 30. Re3 d5 31. Ra8 Rc4 32. Qa7 1-0


羽生さんはここでリザインしました。私が読んでいたのは、32... Rcxd4 33. Nxd4 Qxd4 34. Qxd4 Rxd4 35. Bxc3 bxc3 36. Rxc3+- という変化で、白は多少駒を返しても、安全に駒を捌いて勝ちのエンドゲームに持ち込むことができます。

オランダのIM Pijpers は、リスト1のNaiditsch にも勝っており、GM クラスの実力があるマスターだと思います。1994年生まれの21歳と若く、オランダで言えば、Anish Giri、Van Kampen、Bok Benjamin らと同じ世代です。これからオランダ代表クラスまで伸びてくる可能性もあると思いますので、羽生さんにとってこうした有望なプレーヤーとの対戦は、海外に足を運んだ甲斐となるでしょう。羽生さん、スイス遠征での14戦、お疲れ様でした。

さて、羽生さんは14戦を終え、レイティングは+1 となります。チューリッヒで稼いだレイティングを、バーゼルで放出してしまったのは残念でしたが、レイティング以上に、日本では得られない経験を積むことができたでしょう。また帰国後のトレーニングで、スイス遠征の感想を伺ってこようと思います。羽生さん、無事に帰国されることを願っています。2週間、一緒に観戦していた皆さんも、お疲れ様でした!

2016/01/04

Endgame Analysis - A Hidden Breakthrough -


Kojima, S (FM, JPN, 2312) - Ashwin, J (IM, IND, 2446)
Thailand Open Chess Championship 2010 (6)
White to move

2週間ほど前から用意していた記事ですが、後半を書くのに手間取ってしまい、公開が遅くなりました。先月、エンドゲームの問題として出したこの局面、よくよく解析をしてみると、私の予想と違う答えが出てきました。それが非常に面白かったため、その解析をご紹介しようと思います。

実を言えばこのポジション、私は試合中、なんとかドローに持ち込むアイディアを見つけ、実際にそれを指してゲームはドローになりました。試合後の検討と解析でも、このポーンエンディングは問題なくドローにできるという結論になり、白がドローに持ち込む問題として出題をしました。しかし、あらためてこのポジションを解析してみると、結果はなんと白勝ちでした!

49. d5!


この手自体を見つけることは、そこまで困難ではないと思います。白のd4 のポーンはどうやっても黒キングに取られてしまうため、自ら突き捨て、白に有利な形で取らせてしまうのが白が負けを回避する唯一の方法です。

49... exd5


これで黒はパスポーンを得ましたが、白もeファイルよりキングサイド寄りが4ポーンと、黒の3ポーンよりも1つポーンが多くなりました。これで、f2-f4-f5, e5-e6 でパスポーンを作り、反撃するチャンスを得ます。しかし、このアイディアしか見えなければ、白はドローに持ち込むしかありません。勝つために必要なのは、隠されたブレイクスルーをみつけることです。

50. f4!



私は試合中、キングが寄ればドローになることを読み切り、実際にそう指しました。 50. Kb2?! Kc4 51. Kc2 Kd4 52. f4 Ke4 53. g3 d4 54. Kd2 d3 55. Kd1 Kf5 56. Kd2 Ke4 57. Kd1 1/2-1/2 こうなれば、白キングはdポーンの前進を、黒キングはf4-f5, e5-e6 のブレイクを止めてないといけないため、互いにポジションを改善できずにドローです。

50... d4 51. f5!


私はコンピュータがこの手を示した際、何かの間違いかと思いました。それは黒キングが単純に寄った際に、e5 のポーンが落ちてしまうためです。それでも白が大丈夫だと判断するためには、大胆な発想力と正確に先まで読む力が要求されるでしょう。

51... Kc5 52. g4! Kd5 53. g5! Kxe5 54. f6! gxf6 55. gxh6+-



黒キングはf6 のポーンが邪魔でスクエアに入れず、白の勝ちが決まります。5年前、試合後の検討でも解析でも見つからなかった変化が、こうしてふと顔をのぞかせるということは、チェスは私が思う以上にまだまだ奥深いということでしょう。今年も、こうしたチェスの面白さ、難しさに少しずつ触れていければと思います。


2016/01/03

謹賀新年 2016


逗子から望む富士と江の島

皆さん、あけましておめでとうございます。2日遅くなりましたが、2016年初めての更新です。去年はたくさんの人にお世話になりながら、IM タイトルを取得し、公私ともに大きく前進できた1年だったと思っています。今年も1年間、自身のプレーも生徒へのコーチングも頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願い致します。

さて、今年の目標を色々と考えていましたが、プレーの面では羽生さんの持つ日本人のベストFIDE レイティング、2415 を更新することを掲げたいと思います。今年はアゼルバイジャンの首都、バクーでオリンピアードも開催されますので、全日本、ジャパンリーグ、オリンピアードは確定として、他にも海外大会へと足を伸ばして、FIDE 公式戦をこなしたいですね。羽生さんが現在プレーしている、スイス、バーゼルの大会の結果次第では、私の目標も変更されるかもしれませんので、残り数試合も目を離さずにチェックしていきたいですね。

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