2017/04/11

24th IVL Tournament Report


9日の日曜日、表参道で久々にIVL が開催されました。今回はTuさんを除き、現在日本で集まれる最高峰のメンバーが揃ったと言っても過言ではありません。タイトルホルダーが半数、平均レイティング2246 というハイレベルな大会となりました。

3R を終えた時点でのトップは、私とAnton に勝って単独3連勝となった南條くんと、羽生さんを破って上がってきた青嶋くんの争いになりました。青嶋くんからは3R の棋譜をもらっているので簡単にご紹介します。


Aoshima, M - Habu, Y
24th IVL (3)
Position After 34... Qg1

白はb4 とd6、黒はa2 とh3 にターゲットを持ち、どちらが有利なのか非常に判断の付きにくい形になりました。ここからお互いに細かいミスも出て、形勢がひっくり返り続けるシーソーゲームとなります。

35. Qc8+ Nf8 36. Qc4 Qb1


羽生さんはa2 を狙いに行きますが、ここはポーンを捨ててもナイトをアクティブにして反撃をするアイディアがありました。36... Qh2+ 37. Nf2 g5! 38. Qxb4 Ng6! 39. Qxd6 Nf4+ 40. Ke3 Qg1 41. Qb8+ Kg7 42. Qxe5+ Kf8 43. Qd6+ Kg7= こうなれば白は駒得でも、パペチュアルチェックにするしかないというのがコンピュータの判断です。実際には持ち時間の短い中、黒がd6 を捨てる決断をするのは簡単ではないでしょう。

37. Nxb4 Kg7 38. Qc2 Qh1 39. Nd3 Qxh3 40. Qc7 Qh2+ 41. Nf2 h5 42. gxh5 gxh5 43. Qxd6 Ng6



本譜でも遅ればせながら、ナイトがg6 に上がってアクティブに使えるようになりました。これでf4 にナイトが侵入すれば、白キングのポジションはやや危険になります。

44. Kf1 Qf4 45. Qc5? Qxf3?


これでも白キングは危険そうに見えますが、最も正確なのは45... Qd2! でa2 のポーンを狙いつつ、7段目を抑える手でした。これで白はパスポーンになるa3 と、キングへのメイティングアタック両方に対処しなければならず、厳しいポジションとなります。白も代わりに45. Qxa3 とポーンを先に取っておけば、多少安全でした。

46. d6 Nf4 47. Qxe5+ f6 48. Qb5?



青嶋くんは7段目にクイーンを侵入させてのパペチュアルチェックを嫌い、あくまで勝ちを目指しますがこれは危険な方針でした。

48... Kh6?


ここは羽生さんが勝つ最後のチャンスだったかもしれません。48... Qc3! 49. Kg1 Qa1+ 50. Kh2 Qxa2 (a3 をパスポーンにしつつ、f2 のナイトを取ってチェックのスレットになっていることもポイント) 51. Qd7+ Kh6 52. Qa7 Qd2-+ お互いにキングが不安定ですが、ナイトがターゲットになっているかどうかに大きな差があります。

49. d7 Nh3?


この連続ブランダーで形勢は一点、ドローから白勝ちへと結果が変わることになります。49... Qg2+ 50. Ke1 Qg1+ 51. Qf1 Ng2+ 52. Ke2 Nf4+ 53. Ke1 ならばドローにするしかありません。

50. Qe2 Qg3 51. Qd2+ Kh7 52. Nxh3?



しかし青嶋くんも勝ちを目前に焦ったでしょうか。ここは単にプロモーションすれば、ナイトを取られても簡単に勝ちになるところでしたが、ナイトを交換したことでパペチュアルチェックのチャンスを与えてしまいます。52. d8=Q+-

52... Qxh3+ 53. Ke2 Qh2+ 54. Kd1 1-0


最後はここで黒の時間が落ちてしまいましたが、54... Qg1+ 55. Kc2 Qc5+ 56. Qc3 Qf2+ 57. Kd3 Qg3+ ならば、チェックを切ることが難しくドローになってしまいました。互いに時間切迫からミスはありましたが、面白いファイティングゲームだったと思います。続く4R でも青嶋くんは南條くんを破り、0.5P リードで優勝に王手をかけました。


しかし、最終戦でスウェーデンのFM Anton が青嶋くんに立ちはだかります。青嶋くんにとっては3回目、Anton にとっては初めての優勝をかけた戦いとなります。


Kockum, A - Aoshima, M
24th IVL (5)
Position After 17... a5

18. Nc1!


白がアクションを起こすとすれば、どこかのタイミングでf2-f4 とするでしょう。Anton はその準備として、丁寧にナイトのポジションを切り替えます。

18... a4 19. Nd3 Rcb8 20. Qc1 Qe7 21. Re2 Rf8 22. Ng2 Kh7 23. f4 f6?



ポーンを交換する手は将来的にe4-e5 のブレイクを許す危険があるため多少不安ではありますが、それでもビショップの利きを開かなければ黒にチャンスはありませんでした。23... exf4 24. gxf4 Rfe8 と進み、e4 のポーンに反撃をしつつe5 のマスを抑えるのが黒のベストです。本譜のように黒マスビショップをさらに閉じ込めてしまえば、理想的なアウトポストに潜り込んでくるナイトに対抗できません。

24. h4! Rf7 25. h5 g5 26. Ne3!


黒のポーンを乱してすぐ、白のナイトはf5 へと向かいます。安定した5段目のアウトポストのグッドナイトvs. 自分のポーンに利きを遮られてしまったバッドビショップという構図は、古くから多くのゲームで見ることができます。

26... Nb6 27. Nf5 Qd7 28. Ref2 Raf8 29. Ne1 Nc8 30. Ng2 Ne7 31. Nge3 Nxf5 32. Nxf5 Bh8 33. Kg2 Bg7 34. Qd1 Rg8 35. Kh2 Bf8 36. fxe5 dxe5



白にパスポーンを作らせないように36... fxe5 と取りかえすのが自然に見えますが、いずれにせよ白はナイトの力で大きなポジショナルアドバンテージを持つでしょう。

37. d6 g4 38. Kg2 Rg5 39. Rh1 Qe8 40. Qd5 Rd7 41. Qxc5 Rxh5


駒数で言えば単にポーンの交換ですが、2コネクテッドパスポーンを止める方法がない以上、黒は負けを避けられません。

42. Rxh5 Qxh5 43. Kg1 b3 44. a3 Qe8 45. Qd5 1-0



実際の試合はもう少し続いていますが、棋譜はここまでです。羽生さんと南條くんを破り、この勢いで青嶋くんが今回は優勝かと思いましたが、勝負は最後まで分からないものですね。


Anton はこの後、南條くんとのブリッツのタイブレークも2-0 で制し、優勝を決めました。スウェーデンから2年前に来日して以来、こまめにIVL に参加してそのポテンシャルの高さを見せてきたAnton ですが、IVL での優勝は初めてです。おめでとうございます!


そして今回はハワイからゲストとして、ポール飯沼さんが参加してくれました。飯沼さんは2009年に日本に留学中、初めて参加した全日本選手権で4位に入賞し、日本のレイティングも2200近い強豪プレーヤーです。今回も初戦で羽生さんを破り、2R で青嶋くんをドローと上位からポイントを取っていきます。3R で馬場さんに敗れたことで優勝争いからは後退してしまいましたが、負けはこの1つだけで高いパフォーマンスを残しています。

ちなみに私は午前中の2試合のみの参加で、汐口くんに勝ち、南條くんに負けという冴えない結果でした... 次回のIVL では予定が合えば、5戦フル出場をして優勝を目指したいですね。次回の日程は未定ですが、また近いうちに開きたいと思いますので、メンバーの皆さんはよろしくお願いします。

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